化け物に一発殴られるのは貴重な体験だと思ってほしい
待て待て待て待て。状況をもう一度理解しよう。えっとえっと…土砂降りが起きてクレーターの中心には女の子が尻餅をついている。
やっべぇ、わけわかんない。これ、なんてラノベ?
辺りの砂埃がやっと晴れ、僕はまじまじと女の子の顔を見る。年は一個下くらいか。身長は正確には分からないけど、僕より低いだろう。灰色の髪にセミロングの女の子。顔は整っているし、美少女に分類されるタイプの少女だ。
ただよく見ると身体中が傷だらけ。服もよく見ると小さな切り傷がたくさん付いている。僕の回復力だったらこの怪我は十秒だな。うん。いや、確約はできないけど。
…とりあえず、何したらいいのか分からないから、安否確認することにした。
「あ、あの君ぃ…怪我とかない?」
僕が声をかけると、女の子はすごい驚いた表情をする。え、なに?キモオタが話しかけるなってこと?傷つくんだけど。
「え?な、なんでここにいるの!?」
「書店帰りで寄っただけなんだけど…立ち入り禁止だったの?」
…………沈黙が続く。
「って、そんなことじゃなくて!早くここから逃げて!」
「逃げる?な、なんでさ?」
彼女が、それは…と続けようとした時。背後に大きな羽ばたきのような音が響いた。
ゆっくりと後ろを振り向いて、僕は目を見開く。
体長は僕よりもかなり大きい。腕があるべき場所には腕が無く、肩甲骨辺りからは大きな大きな翼が生えていた。体は毛深く全身に茶色い毛が生えている。
そんな化け物はドスンッ…と音を立てて大地に降り立つ。これはオカルト板で見たことがあるし、今朝のニュースでやってたな。こいつは確か…
「モスマぶふぉおおっ!!?」
翼で殴られた。殴られたといってもこれはビンタだ。ビンタの要領で殴られた。それも勢いよく。突然の出来事に対処出来ず、僕はそのままスーパーボールのように何度もバウンドし、広場から外れたとこにある茂みに突っ込む。
「痛ってぇ…」
手術してから回復力と筋力が上がったからって言っても痛いものは痛いんだぞ。痛覚あるんだぞ。
とにかく立ち上がろうと足を動かすが、思った以上に動かない。頭だけを動かして足を見ると。
「あぁああああ折れてるぅううえええ?!!」
両足は曲がってはいけない方向に曲がってました☆