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異世界転生に失敗したけど世界は充分に非日常だった模様です  作者: 棘棘
序章 人生そんなにうまくいかない
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転生を夢見る哀れな青年は異世界転生に失敗した

ここから日浦 依視点です。

誤字脱字等、指摘してくれると嬉しいです。

「はぁ…」



 僕は今日十六回目のため息を吐き、天井を見上げる。





 見覚えのない、白い天井。それが僕が目を覚まして最初に見た景色。

 結論から言うと、僕は異世界転生はおろか死ぬ事はなかった。



 トラックに轢かれたことによる傷の内訳は全身による打撲と擦り傷。そして内臓破裂。



 僕はあの時気を失ったけど、その後救急車がやってきて僕を乗せた後に病院で緊急の手術を受け、その手術も無事に終了。



 医師によると、あれほどまでに強い衝撃を受けると下手すれば死んでいたのに、この程度の怪我で済んだことは奇跡に近いらしい。



 だが、僕の胸の真ん中には内臓破裂による緊急手術により、大きな手術痕が出来てしまった。








 あ、そうそう。あの幼女は擦り傷だけで済んだらしく、僕が目が覚めたと知ると両親と共に感謝の挨拶にやってきた。両親は泣いて感謝していて、僕も頭を下げて気にしないでください。としか言いようがなかった。



 そして僕を轢いた運転手は仕事をクビになったらしい。でも僕は生きてるし、殺人者のレッテルが貼られなくて良かったことだろうけど、あの運転手には悪いことをしたよね。多分…。








 窓の外を眺めて、外の景色を見る。五月下旬の割に外は暑いようで、チラホラと半袖の人間が歩いているのが見える。



「はぁ…」



 そしてそして。本日十七回目のため息を吐いた。



 僕が轢かれてからそろそろ一ヶ月が経つ。未だに僕は退院していなかった。そろそろ退院して月一の検査とかやってもいいんだけどなぁ。とにかくアニメ見たい。録画の要領平気かな…?








 そんなことを考えていると、コンコン。と部屋のドアをノックする音が鳴る。それに対して僕が軽く返事をすると扉が開いた。



「や、日浦くん。元気?」

「あー鷹丸先生。どもです」



 扉を開けて入ってきたのは、白髪が混じった黒髪のおじさん。その体躯は中々屈強のせいで白衣やスーツがパッツンパツン。僕の担当医である、鷹丸(たかまる)・エドワード・成也(なるや)先生だ。



 医者なのに筋トレ大好き。ちょくちょく僕にもう使わないお古の筋トレ道具を、どうせ捨てるなら君が使えば…って気持ちでお裾分けしてくる良い先生。



「お疲れさん。どう調子は?」

 鷹丸先生は、どっこいしょ。と言いながら面会用に用意された椅子に座る。その仕草は完全におっさんのソレである。








「バリバリ元気です。今季アニメを四話も見逃すなんて、考えられないですよ」

「あっはっは!そりゃ残念だな。そんな依くんに朗報」

「朗報?……って、まさか」

「そのまさか!二日後に退院が決まった!」



鷹丸先生のその言葉を聞いて、笑みがこぼれる。ずっとずっと聞きたかったんだ…!その言葉!



「まぁ、とりあえずしばらくは安静にな?折角退院が決まったのに、傷が開いたりしたら大変だろ?…んでお楽しみ、今日のプレゼント」



 バンッとベットの上に何かが投げられる。それは握力計。赤い成型色の握力計はどこをどう見ても新品同様だった。







「先生、これって新品なんじゃ…」

「ここ一ヶ月、俺の筋トレ道具をプレゼントして、随分鍛えられたろ?試してみなよ」

「なんだか…すいません、わざわざありがとうございます」



 僕が頭を下げると、鷹丸先生は頭を撫でる。髪がぐしゃぐしゃになるくらいの力だ。



「ま、早めの退院祝い的なやつだと思ってくれや。…よし、それじゃあ俺は他の子の調子を見に行くけど、まだ首のチョーカー外すんじゃないぞ?脈拍測ってるんだから、外したら死亡扱いだぞ?」








 よっこらせ。と言いながら立ち上がり、自分の肩をトントンと叩きながら、鷹丸先生はチョーカーのことを忠告する。



 いつも同じ忠告をされるので、僕は手をひらひらと振って簡単に応答しながら握力計を手に取る。








 そんな僕を笑顔で見た鷹丸先生は、ガハハと笑いながら病室を後にした。



 僕は鷹丸先生が行った後、首につけられた鉄製のチョーカー…いや首輪を触る。



 これには最新の医療機能が搭載されているらしく、ワイヤレスで常に僕の脈拍を測っているらしく、計っている脈拍は逐一、先生に知られているだとか。



 実際、オンオフのボタンのようなものも付いているので、知らず知らずのうちにオフにしたら確かに心肺停止だと思われるかもね。









「それはさておき…握力計か」



 握力計を見ると、どこにでもありそうな普通の握力計。かなり乱暴に使っても壊れなそうだ。



「…測ってみるかな」

 僕は握力計を握り、軽く力を加える。





 ギギッ、パンッ!!





 力を加えた瞬間に握力計は色々なネジを飛ばし、測定不能と言わんばかりに針は振り切った。



「…壊れちった」



 あーそうそう、言い忘れていたっていうか、忘れていた…。



 確かに僕は異世界転生もしてないし、そもそも死んでない。だけどあることが変わった。







 それは力。手術が終わって目が覚めてからの僕は自分の力が増幅されているのに気づいた。そりゃあもう軽く力を加えただけで握力計を破壊するくらい。



 それになんだかよく分からないけど、傷の回復力も上がっていて、もう既に内臓破裂は完全に治っている。というか、怪我関係はすぐに治ってしまうくらいの自然治癒能力。






 一度死にかけたからなのか。理由は分からないけど…僕は異世界転生もしていないのにラノベで言うチートみたいな身体能力と自然治癒能力を手に入れてしまった。

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