お決まりのアレ。
ひよっこの拙い文章ですが、よろしくお願いします
ジリリリと目覚まし時計の音が部屋に響く。
「うぅ、ううう…」
無視しようと布団を被るが、音は無慈悲にも鳴り響いている。
仕方なくモゾモゾと布団から手を出し、手探りで目覚まし時計を見つけると、バシンッと叩く。
暫くの沈黙が続いた中、彼。日浦 依はゆっくりと上体を起こした。
「…ふ、ふわぁ…朝か」
大きなあくびをしながらベッドから降り、部屋のカーテンを開ける。
依は天候に恵まれているのか、窓の外の空は雲一つない晴天だった。季節は四月だが、なんだか暑くなりそうなそんな予感がした。
軽く布団を整えた後、部屋を出て一階に向かうため階段を降りる。
ダイニングキッチンに到着すると、依はテーブルの上に置かれたメモに気づき、それを手に取る。
「姉ちゃんは…もう仕事行ってるのか。早いなぁほんと」
メモは依の姉である日浦 睦からで、朝ご飯が冷蔵庫に入っているのと、戸締りをお願いする内容だった。
テーブルの上にメモを置き、リモコンでテレビをつけ、いつも見ているニュースにチャンネルを合わせるとキッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。
冷蔵庫の中に目玉焼きと焼かれた数枚のベーコンが乗っかった皿が中央に鎮座しているのを見つけ、それをテーブルに置き、今度は食パンをトースターで焼く。
焼きあがるのを待つ間、依はスマホを取り出し、SNSを開くとアニメやゲームなどの情報を仕入れ始めた。
フォロワーがアプリで激レアのモンスターをガチャで手に入れたのなら、いいねを押し。気になる情報は共有し。
いつもと変わらない日常を過ごしている。
パンが焼きあがったのを教える音が鳴ると、一旦スマートフォンをポケットにしまうと、パンを取り出してそのまま齧り付いた。
(…あっつ)
そして冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、自分の席に着く。
一人だからか、特に喋ったりすることなくボーッとニュースを眺めながら、食事を進めていく。
ニュースは最近、この辺りでモスマンと呼ばれるUMAが出没している。というなんとも平和なニュースだった。
「…平和だなぁ」
パンを一口齧り、ニュースの感想を呟く。ふと、テレビの左上に表示されてる時計を見る。
「……やっべ、遅刻する!」
残っていた朝食を無理やり口に入れ、皿は水につける。そして着替えるために依は部屋に戻る。
***
気づくと既に太陽は傾き、空を赤色に染めていた。色々な建物の影が長くなっている中、スマホを片手に歩いていた。
(…あっ、このアニメ二期やるんだ)
なんとか遅刻せずに大学に向かった依は、二限から四限と授業を受けた後、いつものように帰ることにする。
そして大学帰りのこの時間、決まってネットを見ながら帰路につく依の姿は歩きスマホの代表例のようで、周りの人間はそんな依を、こいつも歩きスマホか。と言った目線を送る。
そんな目線に嫌気がさしたのか、依はネットサーフィンをやめ、スマホにイヤホンを挿して音楽アプリを開き音楽を聴き始めた。
(あぁ〜〜、やっぱアニソンって良いわ!荒んだ心を潤してくれる。音楽は人間の生み出した文化の極みだよ…なんつって)
いつものようにアニソンを聞いて、十九歳という年齢の割には童顔で可愛げのある依の顔には汚い笑みがこぼれていた。
意味もなく過ごす毎日。特にこれと言った理由もなく大学に行き、アニメやゲームなど趣味をこなしているだけが生きていると思える。
そう思っていて歩いていると、一車線だが交通量が少し多い住宅街にある公園の入り口にふと目に止まった。
小学生だろうか?幼女だった。その子が転がったボールを取りに行こうと車道を飛び出している。
そして幼女からは見えないであろう。後ろからは宅配トラックが走っている。確実にあのままだったら轢かれる位置だ。
依は歯を食いしばりながら無我夢中で走り出し、幼女を押し出し、すぐに我に返る。
(あれっ、俺なにやって───)
幼女は無事に車線から外れ、地面に倒れていた。もしかしたら擦り傷とかできちゃっているかもしれないな。でも生きていたらそれでいいか。と依は無我夢中にやってしまった事に対して後悔せず、現状を理解し始める。
運転手は急に飛び出した幼女に対処しきれず、あたふたしていたところ、幼女は青年に押し出されて今度は青年が前に現れる。
頑張ればまだ避けれるかもしれないが、依は近づいてくるトラックに対して恐怖を抱き、身体が震えていた。移動ができない。
完全に積み。そう直感したときに、依はある事を考えた。(もしかしてこれ、異世界転生出来ちゃうんじゃね?)と。
そう考えると身体の震えは次第に弱まっていく。だが、日浦 依はトラックから逃げようとしたりせずに現状を受け入れ…トラックに轢かれた。
思った以上に吹っ飛んだ依はそのままドシャッと濡れた雑巾を地面に叩きつけるような音をたて、地面を転がる。
(あ…これ、確実に死んだな)
キキーッ!とトラックが急ブレーキをかけた音が聞こえる。
「お、おい!誰か轢かれたぞ!?」
「うわぁああああん!」
「子供は無事だけど、青年が!!おい!救急車!」
どこかすごい遠くでたくさんの声が聞こえ、霞み始めた視界では誰かが動いているような気がして…。
急に凄い眠気に襲われた依は現状などなんだかどうでもよくなり、ゆっくりと意識を手放す。