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全然面白くない物語  作者: 垂れ耳猫タビー
第1章 誕生編
1/9

プロローグ、今度の転生がラストチャンス?

どうしたら面白くない小説になるかを追及する思索小説。

取り合えず、主人公の過去とか設定とか全く考えずに神様と対談させてみた。


元世界でどういう生活をしていた人物かといったことも全く考えてない。

プロットだけを決めてどこまで小説として通用するか? というテスト。

まず、主人公の容姿とか性格は設定してません。神様も同様です。


全然面白くない物語



――プロローグ――

 気が付くと、真っ暗な世界に俺はいた。

 目の前にはわけのわからない、仄かに発光する球体のもやもやだけが存在していた。

 周囲は真っ暗でただ、延々と続く闇しかない空間だ。にも関わらず、仄かに床や天井のようなものがあるような気がする。

 周囲を見回すとピンクとか原色っぽい光の粒子のようなものが仄かに輝いて、重力を無視して空間のあちこちを漂ってる。


「……ようこそ、あらゆる子供たちの魂が集まる魂のゆりかご、ガフの部屋へ。君の帰りを歓迎するよ。」


 仄かに光る”球体のもやもや”がおもむろに声を発する。それでようやく、その発光体が意思のある存在であることに気が付く。何者かはわからないが、この場合はありがたい。少なくとも敵意はないようだとわかり、ひとまず安心する。


「いきなりなんだけどさ……。君は死んでしまったんだよ。ひとまず、ご愁傷様とだけ言っておくね。」


「死んだ? 俺が? じゃぁ、ここで話が普通にできるのはどういうことなんだ? 死んだら意識なんてなくなるはずじゃないのか?」


「君は一度も死んだことのないやつが、死について偉そうに言ったことを、本気で信じていたのかい?」


 何者かもわからない”光のもやもや”は、一呼吸おいて言葉を続ける。なんとなく、雰囲気が悪戯っぽいボーイッシュな女の子のような雰囲気がある。すこし、からかわれているような感じもする。なおも警戒する。緊張でじっとりと汗が伝わってくる。


 ――もちろん気持ち的にだが……。


「――意識はね永遠に続くんだ。 肉体の生死に関わりなくね。」


 なんだか、頭が混乱してくる。そういえば自分が何者なのか? とか、今までの記憶といったものが全く思い出せない。記憶喪失というやつだろうか? 自分の名前すらわからない。どんな人生を送っていたのかも思い出せない。頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされている。ちょっと怖い。


「そういえば、自分の名前すらわからない……。」とそのまま、思ったことを言葉に出してみる。

 しまったとは思ったが、いまさら引き返すことはできない。


「そりゃぁそうさ、死んだ時点でそれまでの人生の記憶は失われるんだ。そうじゃなきゃ次の人生で困るでしょ?」


「でも、言葉の意味は分かるし…… 死人シニが8…… 死後シゴ20…… ふむ九九は覚えてる。簡単な算数程度の計算も問題はない。……化学式の使い方とか元素記号も少しは思い出せる。物理学の公式もなんとなく覚えてる……ような気もするが?」 


 これって記憶じゃないのか? ちょっと失った記憶というやつの基準がいまいちわからないぞ?


「消えるのはエピソード記憶と言われるものだけさ。 "人生そのもの"とか"思い出"と言い換えてもよい。 知識とか知恵といったものは残るんだ。 それが人生という"投資"に対する魂たちが得るささやかな収益さ。まぁ、何が残るか? ってのは、凄く曖昧なんで知識の全てが残るわけでもないんだけどね。」


 そのなんとも心地の悪い、根源的な自分という存在に実感がわかない感覚も人生の記憶がないからか……、と冷静に分析していく。今にも世界に埋没して消えてしまいそうだ。


「で? ここが死後の世界だとして、お前は何者なんだ? 死神か? 閻魔大王か?」


 そこはかとなく、奴がこほんと咳払いをするような気配が伝わってくる。


「そうね、自己紹介がまだだったね。遅ればせながら、僕は”神様”だよ。全ての生命の創造主にして、魂の指導者さ。」


 そういうと自分を神だという、”光るもやもや”は黙りこむ。表情はもやもやなのでうかがえない。

せめて、人間の姿になって出てきてほしいと思う。

 ロボットとか、動物でも構わないけどさ……。かわいい女の子の姿なら言うことなしだ。


「はぁ? 神様ねぇ……。それがただの"光のもやもや"なのかよ? ……せめて人の姿になれないのか?」


「んーーそういう姿になれないことはないんだけど、それはそれで、結構疲れるんだよ。どうせ、君はこれからまた新しい人生に旅立つわけだし、ここでの会話もろくに覚えちゃいないだろう。

 ……もっとも、ごく稀に覚えたままで次の人生を生きる人もいるみたいだけどね。それに、君だって人のことはいえた義理じゃないよ。――ん、はぁ!これをみなよ。」


 神様だと名乗る光の球のもやもやが何やら気合いを込めるようなそぶりを見せる。

 俺の目の前に銀色に光る20Cm四方の板――鏡――が出現する。


 まるで手品師だな……。


 そう思いながら、ふよふよと浮いてる鏡を覗き込むとそこには、奴と同じ光る球体のもやもやが映し出される。光源らしい光源もない暗闇なのに周囲の視界はクリアに見える。とても不思議な感覚だ。


「これが、俺?」


「肉体を持たない、魂だけの存在だからね。」


「"父と子と聖霊の御名において"ってやつか?」


「――解釈はキミに任せるよ。」


 なんか微妙に呆れられているらしい。どうやら、俺はすでに死んでしまって、俺自身はその人生の記憶を失ってしまってるらしい。おまけに肉体もなく、”光るもやもやの球体”というわけだ。じゃぁ、これから俺はどうすればいいのだろう? といった漠然とした不安が心をギュッと締め付けてくる。


「まぁ、これからの君について話すと、ぶっちゃけ、新しい人生を送ってもらうことになる。」


「新しい人生か……、楽しいのがいいなぁ……勇者になって、王様になってハーレム三昧とか!」


「クスクス、それは君次第だよ。てか、そういうのが趣味だったのか……まぁ前の人生だとレバレッジがあるといっても、そこまではできなかったかもね。前世で得た知識や知恵が導いてくれるかもしれないし、前の人生の記憶が役に立つこともあるかもしれない。」


「まて!前の人生の記憶はなくなったんじゃないのか?」


「知識とか知恵ってのは記憶と密接に関係している。完全に切り離すことはできない。魂に焼付いた記憶が次の人生でも残ることが絶対に皆無だとは言いきれない。原則論としては記憶は根こそぎ消える、と考えてほしいな。」


 なんだか、よくわからない。だんだんイライラしてきた……。ここは”宇宙最強のセリフ”を使うしかないな!


「今北産業!」


 今来たばかりだから、どういうことなのか3行で教えてという意味のネットスラングで問いただす。


「……その言葉の意味はよくわからないけど、例えば習ったこともない楽器を、いきなり信じられないレベルで弾ける人がいたり、まるで人生の全てを悟ってるような顔してる小学校の同級生とか、1度も経験がないことなのに、最初からうまくできちゃう時があるとか、まぁそういうことだと思えばよい。まぁ、それは記憶や知識ばかりの話でもないんだけど、後で説明するよ。」


 しっかりと、意味がわかってるじゃねぇか、と心の中でひっそりと突っ込む。

 ――つまり、前の人生の記憶というよりは別枠で技能(スキルを次の人生で持ち越せる場合もあるってことか……。


「強い感情や思い出とともに魂に焼付いた記憶や知識、技能は残りやすい。そういうのが"魂の資産(カルマ)"と呼ばれるものの一つさ。」


 そっか、天才とかって言われていた奴はそういう理屈だったんだな……。と得心するが、今の俺に役に立つ話だとは思えない。


「つまり、俺は死んでしまった、ってことは次の人生に向かわなきゃならないってことだな?」


「その通りさ。まぁある程度人生の目標とか、どういう世界に生まれたいのか?とか希望があれば、本来なら、ある程度設定することはできるんだけど、キミの場合は、ちょっと特殊なんだ。」となんだか、神様は苦笑しながらまくし立てる。すごくバカにされている気分だし、ちょっと癪に障る言われようだな。


「なんか、俺に含むところがあるみたいな言い方だな?」


「そりゃぁそうさ、僕は言ってみれば、他の神様(読者)に人の人生を見せて楽しませるためのエンターテイナーなんだからね。しかも、”お金に困らない人生”なんて特典レバレッジを掛けちゃうんだもん。」


その後は「あんなつまらない人生を見せちゃった日にゃ商売あがったりさ。」とか「まさか、あんな人生になるとはレバレッジの無駄使いだ」とか、「想定外もいいところだよ。」とか罵詈雑言を並び立てる自称神様。


「余計なお世話だよ……だいたい、そういうの覚えてないし……」


……と言葉を遮って話題を終わらせた。とはいえ、"お金には困らない人生"という特典(レバレッジ)は普通にあるらしいから、頼み方次第じゃ、次の人生こそバラ色にできるかもしれない。


 『無詠唱の大魔術師』とか、『ハーレム人生』とか、『楽して俺tueeee 転生無双!!』とか、そういうのも夢じゃないかもしれない。死んでしまったいうことなら、来世にこそ可能性の芽を作るに限る。それをこの自称神様ってやつに握られているってところだけが気に入らないが……。


 それよりも”聞きのがしちゃいけないこと”があったような気もするが、うまく、理解することも言葉にする事もできない。ええい、ままよ!


「んじゃぁさぁ、次の人生を始めるにあたって人生設計とか、あったりするの?」面白くもなさそうに、ちょっと膨れたような声で自称神様が聞いてくる。言葉を無理に遮ったからだろうか?


「そりゃぁ!最強の勇者になって魔王を倒して、伝説に名を残すんだ!ハーレム作って、奥さんは若くてかわいい娘が最低でも3人はほしいな、子供は2人ずつ産ませて6人だな。 暖かい家庭の中、子供たちや孫たちに囲まれて、眠るように死んでいくんだ! ビバ! 転・生・無・双!!!」


 最後の4文字には力を込めて、リズミカルに手を動かすイメージを作ると、イメージした空間の位置に立体のポップな文字が出現しては弾けて消えた。なにコレ?


「却下!却下!却下!」


「即答かよ!しかも却下だし!」


「あのねぇー、キミ、自分の現状が分かってないようだから言うけど、そんなに都合の良い話があるわけないじゃないか。前回は”魂の資産(カルマ)”を大量に消費して、そういう特典レバレッジが掛けられたのに!」


「”魂の資産(カルマ)”? さっきもそんなこと言ってたね。」


「”魂の資産(カルマ)”を貯めて、最終的には僕みたいに神様になるのが君たちが人生を生きる目的なんだ。でも、投資効率を高めるために特典(レバレッジ)を掛けることもある。その証拠金として、”魂の資産(カルマ)”から対価を払うってワケ。」


「なんだか、FXとか先物取引みたいだな……、ってことは俺の持ってる”魂の資産(カルマ)”を証拠金として差し出せば、次の人生も特典(レバレッジ)ってやつで、優遇されるってわけだな?」


「まぁ、その理解で構わない。ただ、キミの場合は……」


 神様が言いよどんだ。何か問題があるのか?なんかあまり良い話じゃない気がする。こういう時の勘はよく当たるんだ。そういえば、わざとわかりづらく言われている気がする。


「なにか問題があるんだな?」


「まぁね。君の場合は残りの残高が少なくて、次の人生で収益が出なかった場合、君という意識は消滅してしまうかもしれないってことさ。」


  本当は深刻な話のはずなのに、あっけらかんと他人事のように話す神様。まぁ、実際、他人事なんだろうな。でも、神様の口調とは対称的に俺の心は妙に焦る気持ちにさいなまれる。


「な、なにーーーーーー?! い、意識は永遠に続くんじゃなかったのか?話がちがうじゃねーかー!」


「うーーん、君みたいに本当に1回分の残り人生しかリスクヘッジせずに”魂の資産(カルマ)”をつぎ込んで集中運用しちゃう人なんて、歴史上、どの時代を見ても、そうそうゴロゴロいるわけじゃないからねぇ。それに”お金に困らない人生”ってさ、特典レバレッジの中じゃぁ、ほとんど失敗できる余地なんかないってほど強力なものなんだよ?どうやったらあんなつまらない人生になるのかなぁ? 一種の異能だよ? それも鬼才というべき領域だね。」


「そ……そうか。具体的にどんな人生だったかはわからないんだが……よほどのモノだったんだな……」


 俺はありもしない頭を気持ち的にガックリと垂れた。俺の光る"もやもや"の体が少しだけくの字に歪んだ気がする。


「あ、思い出した。君だけじゃなかった。1万年ほど前にピテカン何とかって一族が絶滅した原因がそれだったって話があったような……、あ、これはあくまで残りの”魂の資産(カルマ)”の話ね、特典レバレッジは関係ないよ。」


「それって、ピテカントロプスだろ? 類猿人と同じレベルのクライシスなのかよ、今の俺って……」


 ちょっといじけた気分になった俺はそう愚痴をこぼした。


「君は株とか先物取引とかはやらないほうがよいと思うよ? まぁ、でも、気を落とす必要はないよ。要は次の人生で充実した人生を送れば、”魂の資産(カルマ)”を十分に稼ぐことができるし、君の株は大暴騰間違いなし!だからこそ、僕も君に肩入れしてるんだ。」



 なんか妙に興奮しだす神様、まぁ神様の世界もいろいろあるんだろう……。大暴騰とか、意味が分からないけど、慰めてくれてるのかな?


「君はピンチなんじゃない、大逆転のチャンスなんだ。」と神様は取り繕うように言葉を続ける。


 意味わからないし、もうどうでもいいや、という気分になってきたので、俺はその言葉をさえぎって話を進める。


「で? 生まれる世界が選べるとかって言ってたけど? そっちはどうよ?」


「君が選べる世界は3つあるんだ。」


「たったの3つ? はぁ? 選択肢になってるのやら? って感じだな? をい?」


「仕方ないよ、そもそも”魂の資産(カルマ)”の残高が少なすぎるんだ。ちなみに、人生設計を聞くというのは冗談のつもりだったんだけどね。」


 クスクスといった感じで笑いながら、神様が言う俺の次の人生で過ごす世界の候補は次の通りだ。



 1つ、『今と同じ地球。死亡時刻と同時』に生まれる道。ただし、どこの国に生まれるかはわからない。

 1つ、『剣と魔法の中世ファンタジー世界』に生まれる道

 1つ、『未来の銀河規模の宇宙国家』に生まれる道。



「要は極端に言えば”現在””過去””未来”ってことだな。しかも、どれもおおざっぱで説明不足過ぎる。」


「そうそう、呑み込みがいいね。まぁ説明はもともと詳しくはできないんだ。」


「その中で最も、投資効率っていうのか? そういうのが良い行先は? どこなんだ?」


「んーー知識は残るから”現在”が一番なじみ深いんじゃないかな? でも、どこの世界であっても、特典(レバレッジ)は付かないから、それなりに苦労はすると思うよ?」


「そうか……、じゃぁ、おれの最後の人生は『剣と魔法のファンタジー世界』にしよう。わかりにくいし、チュートリアルくらいは何かあるんだろう?」


 少しカマをかけてみる。


「そんなものないよ。」


「そっか残念。」


「ファンタジー世界でいいのね? 覚悟はいい?一度、生まれ変わったら戻れないからね?」


「おう! もう覚悟した! どうせ、一度死んでそれで、終わりだと思ってたし。」


「ファイナルアンサー?」


「ああ、ファイナルアンサーだ。でも、なにか、事前情報とかはないのか?」


「ごめん、そういうのは本当にないんだ。ラストチャンスだし、僕もできることなら教えてあげたいんだけど、本来ならここまで説明することも規定違反すれすれなんだよ。」


 ひっかからなかったというより、ごくふつうに断られてしまった。


「でもなんで、ファンタジ―世界を選んだの? 現代地球という選択肢もあったし、未来世界という選択肢もあるのにさ?」


「なんでかな? わからないけど、未来に行くほど、社会が完成されてて、活動の余地が大きな資本とシステムとに抑えられていそうだからかな?」


「どの世界でも、赤ん坊からのスタートだし、大きな資本が経済を牛耳ってるのは、何処の世界でも事情はそんなに変わらないんだけどなぁ……」


「まぁ、俺の魂がファンタジーの世界を渇望してるんだよ。」


 それを聞くと、あんまり納得できないなぁという様子で、神様は静かに目を閉じた……ような気がした。なにしろ、相手は仄かに光る球状モヤモヤなのだ。うかがう術すらない。

 やがて、俺の足元に、光の線で構成された複雑な図形が輝きを伴って描かれ始める。魔法陣だと理解した。そういう知識を持っていたのだろうか?


「あなたの次なる人生に幸多からんことを……」


 その瞬間、神様の背後にもう一つの光のモヤモヤが出現した。

 それは神様とは違う何か別の青白い光る粒子のモヤモヤだ。

 魔法陣の動作と関係があるのだろうか? 神様は意に介してないようだが……。


 足元の魔法陣が強く緑に輝きだし、なにかのボルテージが上がっていくような強い波動の感覚が伝わってきて、俺を包む。

 なにか、それまでとは全く違う異質な声を聴いた気がした……。

 真黒な闇に溶けて沈み込むように意識が薄れる中、聞こえたその声を俺は完全に聞き取ることはできなかった。


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