火と雨の日
時は中世。ミギラリウス二世が治める国。
官僚らによって、厳格に独裁体制が敷かれていた。
貧しい農村では、飢えた国民が大量に死んでゆき、あちらこちらで国の兵が睨みを効かせている時代。
異種同士の出会いが、国を大きく変えていく。
□天気は雨。気の晴れるような、雨。
私は、そこにいた。
いや、本当はいないのかも知れない。
上を見上げ、木の葉の間から見える雨粒を避ける。
そのまましばらく上を見つめ続けていると、見知った顔が落ちてきた。
「やっ、雨女さん」ふわりと彼女から距離をとって言う。
「あら遊火ちゃん、いたの?」
相変わらず意地の悪そうな口元が動く。
「いたよ。 全く、君の雨じゃ消えないとはいえ、急に降らせるのはどうかと思うんだけどねぇ」ちょっと忌々しげな口調。
「消えないならいいじゃないの。 あたしの気晴らしに降らせてるだけだもの」
「気晴らしって、何の?」
「何のって、この現状のよ!」
今度は彼女が忌々しげに言い捨てる。
「お寺さんに来たって、遊火ちゃんくらいしかいないなんて! 天下の妖怪様が廃るわよ!」
ぷりぷりしながらそこらを飛び回る雨女。
確かに、その通りだ。
この頃、何故か私たちの仲間が減っていっている。
最近では、私のような鬼火型の妖怪しか見ないことも多い。
昔は、寺に行けばたくさん仲間がいたのに。
寂しげに飛ぶ私を気遣ってか、雨女は優しく声をかけた。
「ま、まあそんなに落ち込まないでよ、みんなちょっと出かけてんじゃない?」
「そうならいいんだけど……ねぇ」
二人の溜息は、降り続く雨に溶ける。
ここまで読んでくださった方、本当に有難うございます!
八咫烏るたと申します、ちまちまオリジナルを書いていこうと思っています〜
次章にて、もう一人主要人物がやってきます!
かなり扱いづらいめんどくさいキャラです……
もしよければ、次も読んでくださると本当に嬉しいです!
最後に、このシリーズを終えることを楽しみにしています。
応援してくださると本当にありがたいです!