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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第一章 幼年編
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第2話 人間と亜人

 たどり着いた先は、村の外れにある山小屋だった。

 山小屋と聞けば立派なものを想像しそうだが、村で使われずに余った木の板を組み合わせただけの掘立小屋(ほったてごや)だ。

 だがほとんど森の一部と言ってもいい村外れに建つここなら、見つけ出すのは中々難しいだろう。

 周囲に気を配りながら小屋に入ると、粗末なベッドにリア母さんが横になっていた。



「母さん!」

「アッシュ!無事だったのね…!」



 青い瞳を潤ませながら俺の無事を喜ぶ母さんだが、その顔色は普段の色白を通り越して青かった。



「母さんこそ、大丈夫なの!?ひどい顔色だよ?」



 びっくりして心配を口にする俺に、父さんと母さんは視線を交わし、互いに頷いた。



「………父さん?母さん?」



 父さんが口を開く。 



「…アッシュ、フィオーナ王国とエクリプス帝国については、以前教えたな?」

「う、うん。この村は帝国領で、東の森の反対側が王国だよね。」



 どういう訳か、うちの両親は俺という息子に対して他の家とは比較にならないくらい、異様なまでに知識を詰め込む。

 各種勉強や計算術、世界の歴史や地理、格闘術やサバイバル術、礼儀作法に至るまで。

 ちなみに父さんから習ったのは格闘術とサバイバル術のみ、それ以外は母さんからだ。

 身長も2メートルと1メートル50センチ、年齢も40歳と27歳、本当に凸凹(でこぼこ)夫婦だ。

 普通なら性格が歪んでしまうのでは、というくらいのスパルタだったが、飴と鞭が使い分けが上手いのか、愛情の賜物(たまもの)か、俺は歪むことなく成長中だ。

 ……歪んでないよね?子供らしくないとは言われるけど。

 という訳でこれくらいの質問なら朝飯前だ。



「最近仲が悪くなってるって話だったけど、この騒ぎに関係があるの?帝国領の俺達の村が何で帝国兵に襲われてるの?」

「…二か月程前、皇帝が崩御(ほうぎょ)して、その弟が新皇帝に即位した。…そして、その新皇帝は亜人排斥派の人間、なのだ。」

「亜人排斥?」



 この世界に住む『人』という存在は、大きく五つの種族に別けられる。

 まず、最初に『人間』。

 五種族の中で最も数が多く、他種族に比べると特徴は無いが、その特徴の無さが特徴とも言える。一部の人間が魔法という力を持っているが、寿命は長くても百年程度、能力も五種族の中で飛び抜けたものは無く平均的だ。

 だがやはり数は力というべきなのか、北にある爪牙(そうが)連邦以外の二つの国は人間により治められている。



 二つ目が『獣人』。

 獣の性質が肉体に現れ、身体能力が高いのが特徴である。寿命は人間と同程度、犬や猫、狐、狸等様々な獣の獣人が確認されており、その種類は百を超えると言われ、四種族の中で最も多様性に富んでいる。

 また、性質の現れ方も個人によりバラつきがあり、本当に二足歩行の獣といった者から人間に獣の耳やシッポが着いただけといった者まで様々であり、それも多様性に拍車を掛けている。



 三つ目が『竜人』。

 人間に角が生えた外見で、総じて長寿であり、数百年の時を生きる。

 ただ、その寿命故か数が少なく、世界中を探しても二千程度と言われているが、その身体能力は獣人すらも遥かに凌駕する。

 更に一部の純粋な竜の血脈を持つ者は戦闘時に竜に変身し、圧倒的な力を振るうことができると言われ、変身前の状態でも高い防御力を持っているそうだ。

 変身は、男のロマンだ。


 

 四つ目が『森人』。

 国という形は成していないが、大陸の南にある大森林、その中心にある神樹の周囲で暮らしている。

 長い耳と森の木々のように鮮やかな緑色の髪が特徴で、世界の秩序を守る存在とされており、平均寿命は三桁を超える。

 また、精霊術という自然の力を利用した超常の現象を起こす術を持っており、それにより過去、様々な悪しき者達と戦ってきたと言われ、崇拝の対象になっている。

 あと豆知識として、美男美女が多いらしい。

 伝説や噂話でしか聞いたことはないが、死ぬまでに一度は見てみたい。


 

 最後に『魔人』。

 この種族も竜人と同様、外見上は人間とほぼ同じだが、皆一様に色素が薄く、肌の色は透き通るように白く、頭髪も白や銀がほとんどであったという。

 何故過去形で話すかというと、純粋な魔人はもう存在しないとされており、俺が知っている魔人も一人だけなので、比較対象ができないからだ。

 寿命は人間より少し長い程度、ある特殊な力(・・・・・・)を持つ以外、ほぼ人間と同じであった魔人だが、千年前に他四種族との間で戦争を起こした経緯があり、長きに渡り冷遇されたそうだ。

 そのため正体を隠し、髪を染め、人間として暮らしていた者がほとんどであり、それが原因で混血が進み、純血の魔人は絶滅したと言われていて、本当の意味での魔人というカテゴリーはすでに無いとも言われている。


 そして『亜人』という単語は、人間が他の四種族を指す時に使う蔑称(べっしょう)らしい。


 

 俺達が住んでいた村は、種族に垣根(かきね)が全く無かった。

 比率上人間は多かったが、犬の耳が生えている遊び友達のティムは獣人、鋭い虎の牙や爪を持っていたお菓子作りが大好きなアンナおばさんもそうだ。

 変身はできなかったが、物知りで何でも知ってるグスタブじいちゃんは竜人だった。



 そして……儚げな印象で美しい銀髪を揺らしながら俺を見つめる母さんは、今では滅んだと言われているーーー純血の魔人だ。

  


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