第3話 続・シャワー
水が降り注ぐ。濡れる。濡れる。濡れる。
そうしてたちまち濡れ鼠になってしまった。衣服が張り付いて気持ち悪い。それも、さっきの雨の時より更にだ。ジャージが水を吸ってやけに重たい。
ようやく気が戻った私は、とりあえずシャワーの水を止めておく。それから重くなった右腕を持ち上げ、私をよくも風呂場に引きずり込んでくれた張本人の胸ぐらを掴んだ。
「なにするんだ!」
それに少女は両手を挙げ、アニメ声をきんきんに張り上げて抗議した。
「それはこっちが言うことだ! いきなり何するんだよ!」
「なゆたが一緒に入ってくれないからだろ!」
「そんなの逆ギレじゃないか!」
「そうだ逆ギレだ!」
いやだから堂々と逆ギレするなって! ただ認めて堂々としてればいいってわけじゃないから! 別にそのために指摘したわけじゃないしさ!
「私はたったひとりだけど……いや、だからこそ他人の温もりが欲しいのだ。そういう星のもとに生まれてきたはかない命なのだ……」
そして急に声をしぼめてそう訴える少女。そうか、それは悪かった……
「いや思わず納得しかけたけどないだろ!」
全然はかなくないし! まずこれを温もりとは言わない! 冷水だぞ冷水!
「しかしこれはしょうがないな……よし、一緒に入るぞ」
「……ああ」
やむを得ず私は首肯した。だが、しょうがないなどとこいつが言える立場じゃないような気がするんだがどうだろう。
「とりあえず私は着替えを持ってくる……」
「むーっ!」
「……わかったよ」
ついさっきの事もあるし、こいつは一体何をしでかすかわからない。下手に刺激させないほうがよかった。着替えなんて後でいいや。どうせ他に誰もいない。
「待て、どこに行くんだ!」
風呂の扉を開けて脱衣所に向けて歩き出すと、後ろからそんな問いが聞こえてきた。「ああ?」と振り返って私は答える。
「脱ぐだけだよ。服着たままシャワーなんて浴びれるか」
そうして扉を閉じ、ジャージを脱いで洗濯機に放り込んでいく。少女は(多分)頬を膨らませていたが「いい加減にしないと放り出すぞ」と脅して黙らせた。
ちなみに私はそんなに人に裸は見せたくない。相手が女ならいいかと言ったらそういうわけじゃないわけで。あと確かに水泳部でいつも水着姿だったりはするけど、それも全く別次元の話だ。
今回はまあ仕方ない。あいつを冷たくあしらってやる理由もないだろう──頭がおかしくなってるだろうってのもあるし。
「うわ、張り付いてるし……気持ち悪い……」
背中に手を回しブラジャーのホックを外しながら、私は呻いた。




