Ep.1 初まり
私は今、処刑台にいる。ギロチンは目前にある。二人の兵士に両腕を切り落とされ、もはや痛みも感じなくなっていた。目の前にいるのは怒り狂った市民、国王夫妻。家族は誰一人としてここへは来なかった。裏切った私を家族とは思っていないのだろう。皆は私に罵詈雑言を浴びせている。しかし、そんな中でもただ一人、静かに佇む男がいた。
(ルイス…)
私の夫であった人。私の最愛だった人。今の哀れな姿を見つめるその瞳はとても冷たい。その美しい顔がさらに映えている。私は何を間違えたのだろうか。どこで間違えたのだろうか。思いを巡らせる中で、一人の人物に思い至った。今も彼の隣で悲しげな表情を浮かべる聖女。私が睨むとすぐに彼の背中へと下がる。すると兵士の一人から頭を押さえつけられた。
「その醜い顔でよくも…」
彼はもはや私を人としてみてはないのだろう。髪を掴まれた。痛い。かつて愛した人に傷つけられるのは慣れているはずなのに、どうしてだろうか。私があなたを愛したことは間違いだったのか。
(本来陰で生きるものにとって、光は体に悪かったようね。ごめんなさい。私を許して…母様、父様、ルイス…)
もっと生きたかった。もっと彼と話がしたかった。もっと、いろんなところへ行きたかった。もっと、誰かに愛されたかった。
「もうよい。執行の時間だ」
ああ、私は死んでしまうようね。曇った空からさす一筋の光が見える。天からの迎えが来たのか、あるいは地獄への門が開いたのか。
刃が落とされる。痛みは感じなかった。すぐに楽になると思ったが、意識がまだある。最期に彼の顔を見ようとした。涙を流していて欲しいと、心から望んでしまった。
「やっと死んでくれたな」
「ええ、やっとですね…」
隣から聞こえてきた声に耳を疑った。幻聴か、それとも———————————




