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明日、僕は君を忘れるらしい  作者: les.
ストーリー
7/12

7話 逆さ

空白ありすぎかな?

病室は、静かだった。



 機械の音だけが、一定のリズムで響いている。



 白い天井。


 白い壁。



 その中で。



 白雪澪は、ベッドの上にいた。



 目は開いている。



 でも。



 どこか、遠くを見ているようだった。




「……今日も来た」



 神崎陽斗は、そう言って椅子に座る。



 返事はない。



 それでもいい。




「今日さ、天気よかったんだよ」



 何でもない話をする。



「桜、まだ少し残っててさ」



 少しだけ、笑う。



「なんか……見せたくなった」




 反応はない。




 でも。



 気にしない。




「あとさ」



 一度、言葉を止める。




「コーヒー、苦いのに飲むやついるじゃん」



 ふっと笑う。



「俺、無理なんだよな」




 くだらない話。




 でも。



 それでいい。




 毎日、来る。



 話す。



 返事はなくても。



 続ける。




 それが、陽斗の選んだことだった。




 ある日。




「……なんで」



 小さな声が、聞こえた。




 陽斗は、言葉を止める。




「なんで、毎日来るの」




 澪が、こちらを見ていた。




 初めて、目が合う。




 少しだけ、驚いた顔。




 でも。



 すぐに、いつもの調子に戻す。




「暇だから」




 軽く言う。




「……嘘」




 即答だった。




 少しだけ、沈黙。




 陽斗は、視線を逸らさずに言う。




「会いたいから」




 それだけだった。




 澪は、少しだけ目を見開く。




 そのまま、黙る。




 でも。



 拒まなかった。




 それだけで、十分だった。




 また、日が過ぎる。




 少しずつ。



 少しずつ。




「……神崎」




 名前を呼ばれる。




 陽斗は、少しだけ驚く。




「覚えた?」




「……うん」




 小さく頷く。




「よかった」




 それだけで、嬉しかった。




 ある日。




「ね」




 澪が、ぽつりと聞く。




「私たちって、どういう関係なの?」




 少しだけ、考える。




 正解は、分からない。




 でも。




「これから決める関係」




 そう答えた。




 澪は、少しだけ笑う。




「変なの」




 でも。




 その笑顔は。




 少しずつ。




 あの頃に、近づいていた。




 そして――




 ある日。




「……桜」




 澪が、窓の外を見て呟く。




「私……桜、好きだった気がする」




 心臓が、強く鳴る。




「……なんでだろ」




 記憶じゃない。




 でも。




 “感情”が、残っている。




 陽斗は、少しだけ笑う。




「じゃあ、今度一緒に見に行くか」




 澪が、こちらを見る。




 少しだけ。




 ほんの少しだけ。




 懐かしそうに。




「……うん」




 頷いた。




 その瞬間。




 何かが、繋がる。




 記憶じゃなくて。




 今。




 ここにあるものとして。




 春の風が、静かに吹く。




 桜は、まだ咲いている。




 終わらなかった春。




 それは。




 やり直すための季節だった。


今から言えることは1章から見直せです

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