4話 この春は本当に夢の春?
4章です、3章の後書き見てから戻ってきた方がいいと思います
春だった。
桜が、また咲いている。
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神崎陽斗は、あの日と同じ場所に立っていた。
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隣には、少女がいる。
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白いワンピース。
柔らかく揺れる髪。
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あの日、出会った彼女。
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「ね、陽斗」
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名前を呼ばれる。
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自然に。
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「今日、どこ行く?」
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笑っている。
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明るくて、優しい声。
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――違う。
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なぜか、そう思った。
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理由は分からない。
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でも。
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ほんの少しだけ。
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何かが、違う。
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「……どうしたの?」
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少女が、不思議そうに覗き込む。
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「いや、なんでもない」
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そう答える。
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違和感はある。
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でも、それは確かに“小さなもの”だった。
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それよりも。
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この時間は、確かに心地よかった。
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笑って。
話して。
一緒に歩く。
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どこにでもある、普通の時間。
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でも、だからこそ。
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ふとした瞬間に、思う。
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(……こんな風だった気がする)
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何かを思い出しかけて。
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でも、掴めない。
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その日の帰り道。
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夕暮れの中。
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少女が、ぽつりと聞く。
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「ね、陽斗」
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「ん?」
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「私たちってさ」
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少しだけ、言葉を選ぶように。
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「……運命だと思う?」
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心臓が、わずかに跳ねる。
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少しだけ、考える。
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「……分からない」
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正直に言った。
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「でも」
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一度、言葉を切って。
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「一緒にいたいとは思う」
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少女の目が、少しだけ見開かれる。
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そして。
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嬉しそうに、笑う。
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「そっか」
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でも、その奥で。
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ほんの少しだけ。
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揺れていた。
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その日の夜。
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陽斗は、夢を見た。
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久しぶりだった。
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桜の下。
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でも。
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そこにいたのは――
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今、隣にいる少女じゃない。
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別の誰かだった。
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同じように笑って。
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同じように近くて。
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でも。
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確かに“違う”。
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「……陽斗」
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その少女は、静かに言う。
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「間違えないでね」
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胸が、強く痛む。
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「それでも、いいなら」
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風が吹く。
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桜が舞う。
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「ちゃんと選んで」
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その言葉を最後に。
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夢は、途切れた。
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朝。
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目が覚める。
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胸の奥に、重たいものが残っている。
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その日の帰り道。
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少女が、隣を歩いている。
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同じ笑顔。
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同じ声。
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同じ距離。
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でも。
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違う。
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もう、分かってしまった。
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「……なあ」
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足を止める。
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少女も止まる。
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「どうしたの?」
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少しだけ、不安そうに。
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陽斗は、まっすぐ見る。
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「……ごめん」
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その一言で。
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少女の表情が、固まる。
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「俺、多分」
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言葉を、選びながら。
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「誰かと、重ねてた」
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静寂。
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風の音だけが、流れる。
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少女は、少しだけ俯く。
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そして。
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小さく、笑う。
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「……そっか」
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優しい声だった。
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責めるでもなく。
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怒るでもなく。
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「気づいてくれて、よかった」
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顔を上げる。
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その笑顔は。
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少しだけ、寂しそうで。
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でも。
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どこか、強かった。
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「ね、陽斗」
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一歩、近づく。
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「それでもさ」
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少しだけ、震える声で。
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「……今の私を、見てくれる?」
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胸が、強く鳴る。
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今度は。
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逃げられない。
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選ばないといけない。
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過去じゃなく。
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目の前を。
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陽斗は、ゆっくりと頷いた。
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「……うん」
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その瞬間。
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少女の目に、涙が浮かぶ。
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でも、笑っていた。
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「ありがとう」
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風が吹く。
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桜が舞う。
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それは、もう。
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誰かの代わりじゃない。
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新しい春だった。
衝撃展開用意してます




