表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明日、僕は君を忘れるらしい  作者: les.
ストーリー
4/12

4話 この春は本当に夢の春?

4章です、3章の後書き見てから戻ってきた方がいいと思います

 春だった。


 桜が、また咲いている。



 神崎陽斗は、あの日と同じ場所に立っていた。



 隣には、少女がいる。



 白いワンピース。

 柔らかく揺れる髪。



 あの日、出会った彼女。



「ね、陽斗」



 名前を呼ばれる。



 自然に。



「今日、どこ行く?」



 笑っている。



 明るくて、優しい声。



 ――違う。



 なぜか、そう思った。



 理由は分からない。



 でも。



 ほんの少しだけ。



 何かが、違う。



「……どうしたの?」



 少女が、不思議そうに覗き込む。



「いや、なんでもない」



 そう答える。



 違和感はある。



 でも、それは確かに“小さなもの”だった。



 それよりも。



 この時間は、確かに心地よかった。



 笑って。

 話して。

 一緒に歩く。



 どこにでもある、普通の時間。



 でも、だからこそ。



 ふとした瞬間に、思う。



(……こんな風だった気がする)



 何かを思い出しかけて。



 でも、掴めない。



 その日の帰り道。



 夕暮れの中。



 少女が、ぽつりと聞く。



「ね、陽斗」



「ん?」



「私たちってさ」



 少しだけ、言葉を選ぶように。



「……運命だと思う?」



 心臓が、わずかに跳ねる。



 少しだけ、考える。



「……分からない」



 正直に言った。



「でも」



 一度、言葉を切って。



「一緒にいたいとは思う」



 少女の目が、少しだけ見開かれる。



 そして。



 嬉しそうに、笑う。



「そっか」



 でも、その奥で。



 ほんの少しだけ。



 揺れていた。



 その日の夜。



 陽斗は、夢を見た。



 久しぶりだった。



 桜の下。



 でも。



 そこにいたのは――



 今、隣にいる少女じゃない。



 別の誰かだった。



 同じように笑って。



 同じように近くて。



 でも。



 確かに“違う”。



「……陽斗」



 その少女は、静かに言う。



「間違えないでね」



 胸が、強く痛む。



「それでも、いいなら」



 風が吹く。



 桜が舞う。



「ちゃんと選んで」



 その言葉を最後に。



 夢は、途切れた。



 朝。



 目が覚める。



 胸の奥に、重たいものが残っている。



 その日の帰り道。



 少女が、隣を歩いている。



 同じ笑顔。



 同じ声。



 同じ距離。



 でも。



 違う。



 もう、分かってしまった。



「……なあ」



 足を止める。



 少女も止まる。



「どうしたの?」



 少しだけ、不安そうに。



 陽斗は、まっすぐ見る。



「……ごめん」



 その一言で。



 少女の表情が、固まる。



「俺、多分」



 言葉を、選びながら。



「誰かと、重ねてた」



 静寂。



 風の音だけが、流れる。



 少女は、少しだけ俯く。



 そして。



 小さく、笑う。



「……そっか」



 優しい声だった。



 責めるでもなく。



 怒るでもなく。



「気づいてくれて、よかった」



 顔を上げる。



 その笑顔は。



 少しだけ、寂しそうで。



 でも。



 どこか、強かった。



「ね、陽斗」



 一歩、近づく。



「それでもさ」



 少しだけ、震える声で。



「……今の私を、見てくれる?」



 胸が、強く鳴る。



 今度は。



 逃げられない。



 選ばないといけない。



 過去じゃなく。



 目の前を。



 陽斗は、ゆっくりと頷いた。



「……うん」



 その瞬間。



 少女の目に、涙が浮かぶ。



 でも、笑っていた。



「ありがとう」



 風が吹く。



 桜が舞う。



 それは、もう。



 誰かの代わりじゃない。



 新しい春だった。


衝撃展開用意してます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ