2話 夢の中でだけ、君は僕を忘れない
2章です、、正直伸びが甘くて辛いです
夢を見るようになった。
理由は分からない。
きっかけも思い出せない。
ただ――
同じ夢を、繰り返し見る。
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桜が咲いている。
風が吹くたびに、花びらが舞って、
まるで雪みたいに降り積もっていく。
その下に、誰かが立っている。
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少女だった。
見覚えがある気がするのに、思い出せない。
近づこうとすると、なぜか胸がざわつく。
懐かしいような、怖いような。
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「……また来たね」
少女は、そう言って笑った。
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“また”――?
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その言葉に違和感を覚えながらも、陽斗は足を止める。
「……誰?」
問いかける。
少女は、少しだけ目を細めた。
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「そっか」
小さく呟く。
どこか寂しそうに。
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「ううん、なんでもないよ」
すぐに笑顔を作る。
その笑顔が、やけに綺麗で。
なぜか、胸が痛む。
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「ね、少しだけ話そ?」
拒む理由はなかった。
というより――拒めなかった。
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二人は桜の下に並んで座る。
不思議と居心地がいい。
初対面のはずなのに。
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「陽斗さ」
少女が名前を呼ぶ。
自然に。
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「なんで俺の名前……」
「知ってるよ」
即答だった。
迷いもなく。
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「ずっと前から」
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その言葉に、心臓が跳ねる。
けれど、思い出せない。
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「……どこかで会った?」
聞くと、少女は少しだけ笑った。
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「うん」
優しく頷く。
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「すごく大事なところでね」
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それ以上は、言わなかった。
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代わりに、他愛のない話をする。
好きなもの。
大学のこと。
どうでもいい日常。
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でも、どこかおかしい。
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少女は、陽斗のことをよく知っていた。
好きな飲み物も。
よく行く場所も。
何気ない癖まで。
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「なんでそんなに知ってんの」
思わず聞くと、
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「好きだからだよ」
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さらりと、言った。
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冗談には聞こえなかった。
でも、信じきれない。
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その違和感ごと、夢は終わる。
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目が覚める。
朝だった。
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――けれど。
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なぜか、胸が温かい。
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そして同時に。
少しだけ、痛い。
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それが、一日だけじゃなかった。
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毎晩。
同じ夢を見る。
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桜の下で、少女と会う。
話す。
笑う。
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繰り返すうちに、少しずつ距離が近づいていく。
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「今日も来てくれたんだ」
少女は、嬉しそうに笑う。
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「……まぁ、なんか気づいたら」
そう答えると、
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「ふふ、変なの」
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笑う。
その声が、なぜか安心する。
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けれど。
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ある日、違和感に気づいた。
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「……なあ」
「ん?」
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「俺さ、なんでここに来てるんだっけ」
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その瞬間。
少女の表情が、固まる。
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「……え?」
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「いや、夢なのは分かるんだけど」
「なんで毎回、ここなんだろって」
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言いながら、自分でもおかしいと気づく。
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「……ねえ」
少女が、ゆっくりと聞く。
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「私のこと、どう思う?」
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答えに、詰まる。
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「……分かんない」
正直に言った。
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「でも」
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少しだけ、言葉を探して。
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「一緒にいると、落ち着く」
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少女の目が、揺れる。
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嬉しそうで。
でも――
どこか、苦しそうで。
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「……そっか」
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静かに笑う。
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「それなら、よかった」
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その日から。
少女は、少しだけ距離を取るようになった。
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前みたいに近くに来ない。
触れない。
目も、あまり合わせない。
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「どうした?」
聞いても、
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「なんでもないよ」
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そう言って笑うだけ。
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違和感だけが、残る。
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そして。
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ある夜。
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少女は、ぽつりと呟いた。
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「……もう、やめよっか」
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「え?」
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「この夢」
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心臓が、強く鳴る。
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「なんで」
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思わず、聞く。
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少女は少しだけ空を見上げて。
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「このままだとさ」
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そして、こちらを見て。
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「また同じことになるから」
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意味が分からない。
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「なにそれ」
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少女は、少しだけ笑う。
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「いいの」
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「ね、陽斗」
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一歩だけ、近づく。
でも、触れない距離で止まる。
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「最後にさ」
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ほんの少しだけ、震える声で。
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「ちゃんと、さよならさせて」
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言葉が出ない。
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なにかが終わる。
それだけは分かる。
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「……また来ればいいじゃん」
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そう言った瞬間。
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少女の目に、涙が浮かんだ。
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「来ないよ」
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はっきりと、言う。
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「来ちゃダメなの」
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笑う。
泣きそうなのに。
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「だってさ」
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少しだけ俯いて。
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「これ以上一緒にいたら」
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顔を上げて。
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「……忘れられなくなるでしょ」
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その言葉で。
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胸の奥が、強く痛んだ。
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理由は分からないのに。
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「ね」
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少女が、静かに言う。
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「最後に一つだけ、いい?」
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答えを待たずに。
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少しだけ近づいて。
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届かない距離のまま。
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「……好きだよ」
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風が吹く。
桜が舞う。
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その中で。
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少女の姿が、少しずつ薄れていく。
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「じゃあね、陽斗」
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笑っていた。
最後まで。
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そして――
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消えた。
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目が覚める。
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朝だった。
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それから。
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夢を、見なくなった。
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理由は分からない。
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でも。
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春になると。
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桜を見ると。
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なぜか、涙が出る。
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理由も分からないまま。
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ただ――
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温もりだけが、残っている。
頑張るんで、応援コメント、とかお願いします〜




