表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明日、僕は君を忘れるらしい  作者: les.
ストーリー
2/12

2話 夢の中でだけ、君は僕を忘れない

2章です、、正直伸びが甘くて辛いです

 夢を見るようになった。


 理由は分からない。

 きっかけも思い出せない。


 ただ――


 同じ夢を、繰り返し見る。



 桜が咲いている。


 風が吹くたびに、花びらが舞って、

 まるで雪みたいに降り積もっていく。


 その下に、誰かが立っている。



 少女だった。


 見覚えがある気がするのに、思い出せない。


 近づこうとすると、なぜか胸がざわつく。


 懐かしいような、怖いような。



「……また来たね」


 少女は、そう言って笑った。



 “また”――?



 その言葉に違和感を覚えながらも、陽斗は足を止める。


「……誰?」


 問いかける。


 少女は、少しだけ目を細めた。



「そっか」


 小さく呟く。


 どこか寂しそうに。



「ううん、なんでもないよ」


 すぐに笑顔を作る。


 その笑顔が、やけに綺麗で。


 なぜか、胸が痛む。



「ね、少しだけ話そ?」


 拒む理由はなかった。


 というより――拒めなかった。



 二人は桜の下に並んで座る。


 不思議と居心地がいい。


 初対面のはずなのに。



「陽斗さ」


 少女が名前を呼ぶ。


 自然に。



「なんで俺の名前……」


「知ってるよ」


 即答だった。


 迷いもなく。



「ずっと前から」



 その言葉に、心臓が跳ねる。


 けれど、思い出せない。



「……どこかで会った?」


 聞くと、少女は少しだけ笑った。



「うん」


 優しく頷く。



「すごく大事なところでね」



 それ以上は、言わなかった。



 代わりに、他愛のない話をする。


 好きなもの。

 大学のこと。

 どうでもいい日常。



 でも、どこかおかしい。



 少女は、陽斗のことをよく知っていた。


 好きな飲み物も。

 よく行く場所も。

 何気ない癖まで。



「なんでそんなに知ってんの」


 思わず聞くと、



「好きだからだよ」



 さらりと、言った。



 冗談には聞こえなかった。


 でも、信じきれない。



 その違和感ごと、夢は終わる。



 目が覚める。


 朝だった。



 ――けれど。



 なぜか、胸が温かい。



 そして同時に。


 少しだけ、痛い。



 それが、一日だけじゃなかった。



 毎晩。


 同じ夢を見る。



 桜の下で、少女と会う。


 話す。


 笑う。



 繰り返すうちに、少しずつ距離が近づいていく。



「今日も来てくれたんだ」


 少女は、嬉しそうに笑う。



「……まぁ、なんか気づいたら」


 そう答えると、



「ふふ、変なの」



 笑う。


 その声が、なぜか安心する。



 けれど。



 ある日、違和感に気づいた。



「……なあ」


「ん?」



「俺さ、なんでここに来てるんだっけ」



 その瞬間。


 少女の表情が、固まる。



「……え?」



「いや、夢なのは分かるんだけど」


「なんで毎回、ここなんだろって」



 言いながら、自分でもおかしいと気づく。



「……ねえ」


 少女が、ゆっくりと聞く。



「私のこと、どう思う?」



 答えに、詰まる。



「……分かんない」


 正直に言った。



「でも」



 少しだけ、言葉を探して。



「一緒にいると、落ち着く」



 少女の目が、揺れる。



 嬉しそうで。


 でも――


 どこか、苦しそうで。



「……そっか」



 静かに笑う。



「それなら、よかった」



 その日から。


 少女は、少しだけ距離を取るようになった。



 前みたいに近くに来ない。


 触れない。


 目も、あまり合わせない。



「どうした?」


 聞いても、



「なんでもないよ」



 そう言って笑うだけ。



 違和感だけが、残る。



 そして。



 ある夜。



 少女は、ぽつりと呟いた。



「……もう、やめよっか」



「え?」



「この夢」



 心臓が、強く鳴る。



「なんで」



 思わず、聞く。



 少女は少しだけ空を見上げて。



「このままだとさ」



 そして、こちらを見て。



「また同じことになるから」



 意味が分からない。



「なにそれ」



 少女は、少しだけ笑う。



「いいの」



「ね、陽斗」



 一歩だけ、近づく。


 でも、触れない距離で止まる。



「最後にさ」



 ほんの少しだけ、震える声で。



「ちゃんと、さよならさせて」



 言葉が出ない。



 なにかが終わる。


 それだけは分かる。



「……また来ればいいじゃん」



 そう言った瞬間。



 少女の目に、涙が浮かんだ。



「来ないよ」



 はっきりと、言う。



「来ちゃダメなの」



 笑う。


 泣きそうなのに。



「だってさ」



 少しだけ俯いて。



「これ以上一緒にいたら」



 顔を上げて。



「……忘れられなくなるでしょ」



 その言葉で。



 胸の奥が、強く痛んだ。



 理由は分からないのに。



「ね」



 少女が、静かに言う。



「最後に一つだけ、いい?」



 答えを待たずに。



 少しだけ近づいて。



 届かない距離のまま。



「……好きだよ」



 風が吹く。


 桜が舞う。



 その中で。



 少女の姿が、少しずつ薄れていく。



「じゃあね、陽斗」



 笑っていた。


 最後まで。



 そして――



 消えた。



 目が覚める。



 朝だった。



 それから。



 夢を、見なくなった。



 理由は分からない。



 でも。



 春になると。



 桜を見ると。



 なぜか、涙が出る。



 理由も分からないまま。



 ただ――



 温もりだけが、残っている。


頑張るんで、応援コメント、とかお願いします〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ