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剣の朝  作者: 星狼


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奇声の朝

朝陽が騎士団の訓練場を黄金に染めていた。

石畳の広場に、甲冑の金属音が響き渡る。

序列二位の騎士団団長、アイリス・ヴェルハートは、

銀色の長髪を風になびかせ、部下たちを前に立っていた。

青みがかった瞳は鋭く、剣の柄に置かれた手は静かに力を溜めている。

彼女の存在は、騎士団にとって規律そのものだった。


「全員、整列! 今から訓練を始める」


部下たちが一斉に背筋を伸ばす中、一人だけ異様な声が上がった。


「了解でぇぇぇぇぇす!! うおぇぇぇぇぇい!!」


後列の団員たちが、思わず目を丸くした。


アイリスは眉をひそめた。

その掛け声は、訓練場の空気を一瞬で乱した。


「その掛け声……不快だな。規律を乱す者は容赦なく指導するぞ。全員、基本姿勢から始めよ!」


「了解でぇぇぇぇぇす!! 基本姿勢構え!! うおえぇぇぇい!!」


前列の団員たちが息を呑み、互いに顔を見合わせた。


アイリスの表情が一変した。

鞘から剣を抜き放ち、刃先を男に向ける。

朝陽が剣身に反射し、鋭い光を放つ。

周囲の団員たちが固唾を呑んで見守る。


「貴様! これ以上変な掛け声を上げるなら、この場で叩き直してやる。今すぐ正気を取り戻せ!」


「すいませんでしたぁぁぁぁ!」


アイリスは剣を収め、厳しい視線を部下たちに向けた。

汗が額を伝うのも構わず、声を張る。


「ようやく分かったようだな。だが、訓練中はきちんと集中しろ。今日の特別訓練は50周走だ」


後ろの方で、団員たちが肩をすくめ、辺りを見回した。


「質問でぇぇぇぇす!! うおえぇぇぇぇい!!」


アイリスの顔が再び紅潮した。

剣を抜き放ち、今度は本気で構える。

訓練場全体に小さなざわめきが広がった。


「貴様、もう許さん! 今から100周走れ! それと、この訓練後は私との個人戦も行う。覚悟しておけ!」


男は突然、真剣な表情に変わった。


「50周走るのは基本的な体力作りなどの基礎訓練と思うのですが、何故特別訓練なのでしょうか?」


アイリスは腕を組み、冷静に答えた。

声にわずかな苛立ちが残っている。


「最近の任務で、お前達の動きに無駄が多すぎる。それは基礎体力が足りない事から来ている。全く……他の団員の模範となるべき立場なのに……」


団員たちの視線が、交互にアイリスと男の間を行き来しする。


「いえ、ですから。その場合でも『今日は基礎訓練から改めてやり直す』でいいでしょ?」


アイリスは一瞬、目を細めた。

自分の言葉の足りなさを認め、静かに頷く。


「なるほど……その通りだ。私の言葉足らずだった。では、基礎訓練から始めよう。団員たち、整列!」


「了解でぇぇぇぇぇす!! うおえぇぇぇぇい!!」


アイリスの我慢が限界に達した。

剣を突きつけ、声が低く響く。

団員たちは一斉に息を潜め、固く目を凝らした。


「もう我慢の限界だ。今すぐ正気に戻らないと、本気で斬るぞ」


男はようやく真面目な顔になり、頭を下げた。


「申し訳ありません」


アイリスは剣を下げ、深いため息をついた。


「ようやくまともな言葉が聞けたな。では、改めて基礎訓練から始めよう。私の指示に従えるな?」


男は答える。


「ハッ、勿論です」


アイリスは苛立ちを残しつつも、訓練を始める事にする。


「その調子だ。では、まずは基本の型から。私の動きをよく見て真似るんだ」


「胸に注目させて頂きます!!」


だが、再びの男の言葉。

それに、アイリスの顔が一瞬で真っ赤になった。

剣を抜き、怒りが爆発する。

団員たちは慌てて目を逸らし、肩を震わせた。


「貴様! 不埒な発言は許さんぞ。即刻、打ち込みの刑だ!」


「打ち込みの刑とは何でしょうか!? 私、脳ミソの3/4がプリンなのでわかりません!! 詳しく教えて下さい!!」


アイリスの額に青筋が浮かぶ。

剣を構え、冷たく言い放つ。


「貴様、その減らず口、今すぐ黙らせてやる。団員たち、この者を地下牢へ!」


「地下牢に行く前に、打ち込みの刑とはなんぞやを教えて欲しいです!! 私の脳ミソをプリンから、普通の脳ミソに変えて下さい!!」


もう我慢の限界だ。

アイリスは剣を振り上げた。

だがしかしその瞬間、男の声が変わった。


「はい、そろそろ限界ですね〜。はい、皆さんコレが『殺気のコントロール』です〜」


アイリスは剣を落とし、愕然とした表情で男を見つめた。

訓練場の空気が、一瞬で静まり返った。

団員たちは呆然と立ち尽くし、互いに顔を見合わせた。


「……貴様、まさか王国序列1位の!」

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