痴話喧嘩
宿に帰った私達は満腹と疲れで眠くなっていた。
「私は少し疲れたからお風呂に入って寝ることにするよ」
「わかった、じゃあ待っとくぜ」
ヘンブランも疲れ切って完全にスイッチが切れている。
「くれぐれも覗かないようにね」
「誰が覗くかよ数百歳のババアの裸なんて」
「年を取ってもエルフのお肌はピチピチだからね。そこら辺の美少女と同じだよ?」
「何処がだよ…」
「はぁ…すっきりした。ヘンブラン、風呂交代だよ」
風呂を済まして寝室へ移動すると、そこには爆睡しているヘンブランの姿があった。
「ヘンブラン、せめて風呂に入ってから寝て。明日臭うから」
エルフの嗅覚はかなり良い。実際、ヘンブランの体からカレーの匂いがする。
「うぅ…もう食えねぇよ…」
こいつは夢の中でもカレーを食べているのだろうか。
「しょうがないかな…少し乱暴だけど」
私は魔法の詠唱を始め、狙いをヘンブランの額に定める。
ヘンブランに風呂に入ってもらわないと困る。だからこれは仕方のないことだ。
威力は最低限、体内の魔力をあまり使わないように詠唱を長めにして…
「風の衝撃」
「ぐぇ…!」
ヘンブランが変な声を出しながら飛び起きる。
「何すんだよ!痛ってぇ…」
「やっと起きたか…早く風呂に入るんだね」
「わかったが、まず何をしたか教えてくれ。バカ頭が痛い」
ヘンブランの額には大きな赤い痕ができて、少し腫れていた。
「額に風魔法を撃った」
「はぁ?!」
「大丈夫、初級魔法だし。対した威力な――」
「いや大丈夫じゃねぇよ!魔法の威力ってのは術者の魔法の熟練度によって変わる。あんたは数百年魔法を学んだバケモンだ、初級魔法でも痛いんだよ!わかるだろ!」
私の言葉を遮って、ヘンブランが叫ぶ。
「それはごめん…」
ヘンブランはかなり怒った様子で風呂に入っていった。
「かなり怒らせちゃったな…」
魔法の威力はだいぶ抑えたはずだが…やはり威力の調整は苦手だ。
これは私のミスだ、後でしっかり謝らなければ。




