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旅立ち

「どうしたものかね…」

リィレと別れた私は、残された余命で何をしようかを考えていた。

とはいえ、50年では呪いの解呪方法どころか魔法の一つも発明できずに終わってしまう。

だからといって無下に時間を潰すのもよくない。

「なにか面白いことないかな…」

そういってベッドに倒れ込み、窓の外を見てみる。

なんら変わらないはずの風景が、少しいつもより色づいて見えた。

きっと心が変化したのだろう。

そうして外の景色を見ていると、ふと百何年か前に訪れた町のことを思い出した。

北の方角にあるオルストール大陸の小さな町だった。

昼間は他の町と大差ない、大した特徴もない町だ。

だが、夜になると景色は一変する。

満天の星空に彗星が流れ、オーロラがカーテンのように翻えるのだ。

その景色は、まるでこの世のものではないと思うほどだった。

とても美しかったのを今でも鮮明に覚えている。

「久しぶりに旅でもしてみるかな…」

きっとまだ、この世界には美しい景色があるだろう。

そうだ、そうしよう。

人生の最後に美しいものを見てみよう。

そうと決まれば急がねば、少しの時間も無駄にはしていられない。

私は急いで旅の準備をし始めた。


数日後、荷物をまとめ終えた私は、里のみんなに旅に出ることを伝えた。

もちろん、リィレにも。

「いいじゃん!」

私は拍子抜けした。リィレには猛反対されると思っていたからだ。

「ついて来るとか言わないんだ…意外だな…」

「だってその旅がエルのしたいことなんでしょ?邪魔するわけ無いよ」

「成長したんだね、リィレも。ありがとう」

昔はなにかするときは常について来ていたから、リィレもしっかり成長しているらしい。

「あ、けどお見送りはするからね!」

「やっぱり、あまり成長してなかったかな?」

「ひどい!」


次の日の朝、私はリィレと里の門前に立っていた。

「里の外に出るのは何十年ぶりかな…」

もうおそらく、ここには帰ってこないだろう。

数百年前からほとんど変化していない里は、相変わらず静かだった。

「じゃあ、行ってくるよ。里のみんなによろしく言っといて」

「了解!行ってらっしゃい!」

私は、里の外に向かって歩き出した。

ふと、振り返ってみるとリィレが大きく手を降っている。

私も手を振り返し、一言呟いた。

「じゃあね…私の故郷」

そうして、私の最後の旅は始まった。


死亡まであと 50年

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