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第八話 能力者(チーター)との邂逅

人類側の『全魔法使用可能オール・エレメンツ』の能力者――仮に『魔導王ソーサラー・エンペラー』と呼ぼう――の存在を知った俺は、怒りよりもむしろ、湧き上がる高揚感を抑えきれなかった。

「遼、あの魔導王とやらの居場所は?」

「新宿中央公園から移動し、現在は都庁の最上階に陣取っています。生存者たちを保護し、リーダー格として振る舞っているようです」

遼はモニターを見つめながら冷静に報告する。都庁、か。人類側の新たな拠点というわけか。

「分かった。行くぞ、お前ら」

俺は立ち上がり、ゼロとイヴ、遼に告げた。

「行くって、どうやってですか、レン様!?」ゼロが焦る。

「テレポートだ。都庁の最上階まで一気に行く」

「ちょ、ちょっと待ってください! 相手はバルログを一瞬で倒したんですよ!? 作戦は!?」イヴが慌てて俺の服の裾を掴む。

「作戦なんていらねーよ。俺たちが『神』だってことを見せつければ十分だ」

俺は『神の権能』で三人を包み込み、都庁の最上階へと意識を集中させた。

しゅん。

一瞬の視界の歪みと共に、俺たちは都庁の知事室らしき場所に転移した。そこには、数人の政府関係者と思しきスーツ姿の人間たちと、中央に立つ一人の青年がいた。彼こそが、人類側の希望、『魔導王』だ。

俺たちの突然の出現に、知事室は騒然となった。

「貴様ら、『神の使徒』か!?」魔導王が俺たちを見て、冷徹な目を向ける。その瞳の奥には、確かに強力な魔力の光が宿っている。

「俺はレン。こいつらのリーダーだ。あんたがバルログを倒した『魔王』さんか?」

「魔王ではない。俺は天宮駆あまみや かける。人類の反抗者だ」

天宮駆は、バルログと戦っていた青年と同じ、普通の服装だった。その存在感だけが異常だ。

「駆さん、こいつらが『神の使徒』です!」政府関係者が叫ぶ。

「黙れ、人間ども」ゼロが黒炎を右手に灯し、威圧する。「レン様の前だぞ!」

「ふん、その程度の火遊び、俺の前では無意味だ」

天宮駆は鼻で笑い、掌をゼロに向ける。すると、小さな水の塊が現れ、ゼロの黒炎を一瞬で消し去った。

「なっ!?」

「悪いが、俺の『全魔法使用可能』の力は、お前らの能力の上位互換でな。属性魔法使いなんて、赤子同然だ」

天宮駆は自信満々に言い放つ。彼の力は、確かに人間レベルでは最強だ。

「面白い」俺は笑う。「だが、それはあくまで『魔法』の範疇だ。俺の『神の権能』は、世界の理そのものに干渉する」

「世界の理だと? 戯言を」

天宮駆は、今度は強力な雷の魔法を放ってきた。まるで雷雲を呼び寄せたような大規模な魔法だ。

だが、俺はそれを避けない。ただ、『認識』する。

「消えろ」

次の瞬間、天宮駆が放った雷は、まるで最初から存在しなかったかのように消滅した。

「なっ!?」天宮駆の顔から自信が消え失せる。

「俺の敵は、最初からお前じゃない。お前という『最強の駒』をフィールドに投入した、あの神様(仮)だ」

俺は天宮駆に歩み寄る。

「だが、せっかくの最強能力者だ。退屈しない程度に、足掻いてみせろよ、天宮駆」

俺と天宮駆の、能力者同士の最初の戦いが、今、都庁の最上階で始まろうとしていた。

天宮駆の顔から自信が消え失せ、警戒の色に変わる。俺が雷撃を無効化したのは、彼にとって完全に想定外だったようだ。

「……貴様、何をした?」

「言っただろ。『世界の理に干渉した』って。物理法則とか、魔法の属性とか、そんなチャチなもんじゃない。存在そのものを否定したんだ」

俺はニヤリと笑う。天宮駆は明らかに動揺していた。スーツ姿の人間たち(政府関係者)は、すでに恐怖で腰を抜かしている。

「くっ……ならば、これはどうだ!」

天宮駆は全属性魔法使いだ。次は物理的な攻撃を選んだ。巨大な岩石を創造し、俺にぶつけてくる。俺はそれを『風』の魔法で相殺する、なんて野暮なことはしない。

「消えろ」

岩石は音もなく消滅する。

「消えろ」

次々と放たれる火炎弾、氷の槍、真空の刃。それら全てが、俺の『認識』一つで存在を否定されて消えていく。

「無駄だ。お前の魔法は、世界の法則の中でしか機能しない。だが、俺は世界の法則の外側にいる神だ」

俺の言葉が、天宮駆の心を抉る。彼の最強の能力が、俺の前では全く通用しない。その事実に、彼は絶望しかけている。

その時、ゼロが前に出る。

「レン様! この小物、我が相手を!」

「ゼロ、馬鹿なことはよせ!」遼が止めるが、ゼロは聞かない。

「黙ってろ遼! 俺の黒炎は、貴様のような半端な属性魔法とは格が違う!」

ゼロは両手に黒炎を灯し、天宮駆に突進する。天宮駆はすぐに反応し、水の結界を張る。

ゴオオッという音と共に、黒炎と水の結界が衝突する。ゼロの黒炎は威力が高いが、天宮駆は『全魔法使用可能』だ。水の結界はゼロの黒炎の威力を完全に吸収し、打ち消した。

「なっ!?」ゼロが驚く。

「俺の前では、属性魔法は無力だと言ったはずだ」天宮駆は冷徹に言い放ち、逆に風の刃を放つ。ゼロは間一髪で避けるが、スーツの肩口が切れ裂ける。

「ゼロ!」イヴが叫ぶ。

「チッ、やるじゃねーか人間が!」

天宮駆は強い。人間の中では間違いなく最強だ。だが、それはあくまで『人間として』の範疇だ。

「そろそろ茶番は終わりだ」

俺は天宮駆に向けて、手のひらを向ける。

「お前は強い。人間としてはな。だが、俺が相手じゃ格が違う。ここに来た目的は、お前と戦うことじゃない。宣戦布告と、人類の足掻きを見ることだ」

俺は『神の権能』を使い、都庁の壁を丸ごと消し去った。都庁の最上階は、一瞬にして見晴らしの良いオープンな空間となる。眼下には、魔獣と化した街が広がっている。

「これが、お前が守ろうとしている世界だ。どうする? この世界を守るために、俺にひれ伏すか?」

天宮駆は黙り込んでいる。プライドの高い彼が、すぐに従うとは思わない。

「まあいい。俺たちはいつでも相手をしてやる。せいぜい足掻いてみせろ」

俺は仲間たちを連れて、都庁を後にした。テレポートで廃校のアジトへと戻る。

都庁の屋上で、天宮駆は消えた壁と眼下の地獄を交互に見つめ、悔しそうに唇を噛み締めていた。

俺と人類との、能力者同士の戦いは、まだ始まったばかりだ。

レンが人類側の能力者である天宮駆と対峙し、次の展開を模索している頃。


◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇


純白の空間、「神々の広場」では、今日も様々な神々が、それぞれの『担当世界』の観測に余念がなかった。

「ふむ……レン君の世界、盛り上がってきたじゃないか」

白いスーツのサラリーマン風の男――この世界の管理者の一人である『神』は、楽しそうにモニターを眺めていた。彼のモニターには、都庁で天宮駆と対峙するレンの姿が映っている。

「おいおい、バランス調整とか言って、結構ガチな能力者送り込んだんだな、お前」

隣から声をかけてきたのは、白いメスシリンダーを持った白衣姿の女性だった。彼女は『科学技術担当』の神で、人類の技術の発展を見守っている。

「実験、実験。人類の適応力を試してるんだよ。このまま一方的に滅ぼされてもつまらないだろう?」神はニヤリと笑う。

「あの『全魔法使用可能』はやりすぎだろ。世界の理をいじってるレン君の能力に匹敵しかねない」

「いや、格が違う。あれはあくまで『魔法』という枠組みの中での最強だ。レン君の『存在否定』の権能の前では無力だ。まあ、だからこそ面白い。どうやってレン君があの駒を『攻略』するか、見ものだ」

神は楽しげに言う。その様子に、さらに別の神が口を挟む。

「相変わらずの悪趣味だな、お前は」

現れたのは、全身が植物の蔓で覆われた、中性的な容姿の神だ。『自然と生命担当』の彼は、レンが放った魔獣によって破壊されゆく地球の自然環境を見て、少し眉をひそめている。

「お前の担当世界、環境破壊が深刻になってるぞ。魔獣のせいで生態系が崩壊寸前だ」

「それも『進化』の過程さ。生き残る種が、新たな世界を築くだけだ」神は気にも留めない。

「まあまあ、みんな落ち着いて」

場を和ませるように現れたのは、優雅なティーカップを持った、ドレス姿の女性だった。『芸術と文化担当』の彼女は、世界各地の美術館が破壊された様子を見て、少し悲しげな表情を浮かべている。

「私としては、人類の築いてきた文化が失われるのは忍びないわ。レン君の歴史改ざんも、少しやりすぎな気がする」

芸術アートも破壊から生まれるものだろ? これから人類がどんな新しい文化を築くか、楽しみじゃないか」神は笑う。

神々の広場には、様々な神々がいた。時間を管理する老人、欲望を司る若者、秩序を愛する厳格な神、混沌を求める奔放な神。彼らは皆、『観測者』として、それぞれの世界を見守り、時に小さなスパイスを加えている。

レンの世界は今、最も注目されている『ゲーム盤』の一つだった。

「さて、次の展開はどうなるかな。レン君も、最強の能力者が出てきて、本気になるだろう」

白いスーツの神は、モニターの中のレンを見て、満足げに笑った。

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