永観堂と僕と1匹の猫
哲学の道を歩いた先にある永観堂。
そこが次の目的地だ。
紅葉が綺麗な場所だと調べて知った。
「永観堂。
調べるまでは知らなかったけど、
行ってみると雰囲気良かったよ。」
君は僕の膝から移動して、
今はおやつを食べている。
「思ったより広くて、人も少なかった。
お堂内も色々と見ることができるし、
縁側から眺める庭は
これぞ日本の美しさだと思うほとの景色だったよ。
雨が降っているのも良い雰囲気だったし。」
尻尾をフリフリしながらおやつを堪能している君に言う。
僕も日本の美しさを堪能してきたよ。
正直銀閣寺とこの後行った南禅寺よりも
永観堂がいいなと思った。
どちらも素晴らしいけど、
永観堂は人が少なかったのもあって、
よりゆったりとした空気が流れていて
現世から離れることができる気がした。
縁側から眺める庭はずっと見ていられた。
「禅林寺っていう名前みたいなんだけど、
昔永観律師という人がいて、
熱心に念仏を唱えながら修行していたんだって。
ある日同じように修行していると
突然阿弥陀如来が動き出して、
それにおどろいた永観律師は立ちすくんでいたんだけど、
阿弥陀如来が『永観、遅し』と振り返り声をかけたっていう話があったみたい。
そこから永観堂呼ばれるようになって、
見返り阿弥陀も今は本堂に安置されているよ。」
ふーんという感じで足で体を掻いている君。
ちょっと退屈だったかな。
実際に本堂に安置されている見返り阿弥陀を見た。
本堂に入ると流れている空気感が違った。
背筋が伸びる感覚、
静寂でなければならないと思わされるような空気感がそこにはあった。
「ちなみに永観堂にも池があったよ。
どこのお寺にもあるのかな。
石橋があってそこから紅葉見ることができたら絶対綺麗だろうなと思ったね。」
そこから見る景色は綺麗だった。
まるで池の上にただ一人居てるようだった。
普段生活していると感じることができないもの感じることができる。
感覚が研ぎ澄まされていくような気がした。
それとお寺にはどこも池があるのだろうか。
何となく古き日本を思い浮かべる時には
確かにあるなと思う。
長い時間一方的に話しているけど、
君はまだどこかに行く気配はない。
横で丸まりながら時々耳が動いている。
日向に出ると暑いっていうのもあるだろうけど、
話を聞いてくれているのが嬉しい。
ありがとうともう少しだけ聞いてね
と願いを込めて頭を優しく撫でる。
君はいつもよりも優しさを感じる声で鳴く。