銀閣と僕と1匹の猫
梅雨が終わり、
日差しが強くなってきた。
もう夏だなんて思いながら
いつものベンチで座っている。
ここは日陰になっており、
涼しさを感じる。
風が僕たちを包むと
より涼しさを感じる。
君はだらっと横になりながらリラックスしている。
「この前話してから1日でかけていくつか行ってきたんだ。
その1つが銀閣寺。
凄く綺麗な所だったよ。」
君は耳を一度パタっと動かした。
「銀閣寺、正式には東山慈照寺というみたい。
世界遺産にもなっている凄い所だよ。
雨の日に行ったんだ。
その方が雰囲気ありそうだったから。」
雨と聞いた君はこちらを一度見る。
少し嫌そうな顔をしていた。
長い雨だったもんね。
「ごめんごめん、でも実際に良かったんだ。
雨の日だけど観光客もそれなりにいて。
でも、そこまで騒々しくはなかった。」
金閣寺も行きたいんだけど、
銀閣寺の方が人は少ないかなと思って選んだ。
静かな方が好きなのもある。
「銀閣寺の庭園に池があるんだ。
雨がしとしとと降る中、
池の奥に見える銀閣がとても美しかった。」
人の話す声を掻き消す雨。
木々に当たる雨の音
池の水面に広がる波
雨のカーテンの奥に銀閣
その上に佇む鳳凰
幻想的な空間がそこにはあった。
僕の話を君は尻尾を横にゆらゆらと揺らしながら聞いてくれている。
僕は背から尾にかけてゆっくりと撫でる。
銀閣寺の池の方が整えられていたかな。
でもここの池の方が好きだ。
君との思い出の場所だし。
君と出会った時のことを思い出して、
笑みが溢れる。
「自然豊かで、庭園も結構広くて
上から銀閣見ることができたし、
天気が良かったら京都の街も少しは見ることができそうだったよ。」
君と一緒に行けたらなと思う。
でも僕にとっても冒険だった。
1人でどこか行ったりすることが
なかったから、
こうやって一歩踏み出せたのは良かったと思う。
僕は膝をポンポンと叩く。
それに気づいた君はゆったりと起き上がり、
僕の足の上に乗る。
「僕少し頑張ったからご褒美ちょうだいね。
この話の続きはまた後で。」
君のことを撫でながら
光り輝く池を眺める。