講義終わりの僕と1匹の猫
大学内を歩いていると見知らぬ猫を
たむろしているのをよく見かける。
今日の講義を終えてそのコンビニの前を通ってみると、数匹そこにいた。
おそらくいつも学生たちから何か貰っているのだろう。
その中に見知った顔の猫がいた。
僕の友達だ。
袋を抱えた2人組の学生から何かもらってるようだった。
2時間ほど前まで一緒にいたのに、
まったく浮気者め。
まあ可愛いから当然か。
僕よりも上手くやってるようで何よりだ。
2人組が去った後、満足してそうな君に近づく。
僕に気づいたのかしっぽを立てて歩み寄ってきた。
そして僕の足に身体をすり寄せ見上げてくる。
「今日もあの場所に行く?」
僕の言葉を理解しているかのように、池がある方向に歩き始めた。
僕はその隣に並ぶようにして付いていく。
「珍しくあの場所にいたんだね?」
そうだと言わんばかりに尻尾を揺らし歩いている。
横に並んで歩くことも初めてで嬉しいし、
普段通っている道も君と歩けば
新鮮な気持ちになる。
そうこうしているうちにいつものベンチにたどり着いた。
君はひょいといつもの場所に腰をおろし
僕もその横に腰掛ける。
そして、さっき食べていたから水だけ用意して君の前に置いてあげる。
少ししてから水を飲む君を見て、
癒やされる。
空は茜色に染まっていて、
池に反射する光も落ち着き、
木々も影を伸ばしていて、
薄暗くなってきている。
「君はこれを見て綺麗だって思う?」
香箱座りをしたまま前方を見ている君に問う。
「僕1人だと多分見ることがなかったから、
今こうしているとなんだか嬉しいんだ。」
君が居たからなんだよと伝わるように
君の背を撫でてみる。
耳が少し動くもその場から動くそぶりを見せなかった。
受け入れてくれて頬が緩む。
「冬になれば星も一緒にみたいな。」
まだ夏にも届いてないけど、
そんなことを思う。
「それよりももうすぐ梅雨だ。
どこに行けば君に会えるんだい?」
さすがに雨が降れば
ここには来れないだろうし。
近くに野外だけど屋根がついてる階段があるからそこに来るかな。
まあその時行ってみよう。
「大学生活もまだ始まったばかりだし、
色々なことを君と共有したいな。
一年後にはもっと仲良くなれているかな。
楽しみだね。」
そう言いながら頭を撫でる。
君は時折尻尾を揺らしながら気持ちよさそうに目を瞑っている。
2人だけの静かな空間をただ噛み締める。