出会い
季節は春。
桜は散り終えたが、青々とした木々がまだまだ新入生たちを歓迎してくれている。
僕は京都の大学に通う大学一回生だ。
入学式から1ヶ月以上経った。
少し慣れてきたとはいえ、広すぎる構内は今でも迷う。
何号館の何号室とか言われても地図を見なければ辿りつかない。
これが大学か、すごいなと驚くばかりだ。
そして1ヶ月経った今でも僕はほとんど1人で過ごしていた。
話すとしたら高校からの友人ぐらいか。
その友人は大学デビューが上手くいって、友達が沢山出来たらしい。
人懐っこい性格だし、だからこそ僕とも仲良くしてくれている。
この前講義が一緒だった時に最近忙しいと愚痴をこぼしていた。
それでも楽しそうだったし、上手くいってるみたいで良かった。
そう思うと同時に、少し寂しさも感じる。
人付き合いが得意ではないのは自覚している。
少人数の講義で2人でワークすることもあるが、今のところそれ以上の仲にはなっていない。
だからぼっちなのだけれども。
『もっと自分の思ってることをきちんと話せたら誰かと仲良くなれるのかな』
『面白味のある人間になれば人に愛されるのかな』
そんなことを考えるけど、殻を破る勇気が僕にはない。
ただそんな僕にも最近1人ーーいや、1匹の友達ができた。
大学の構内に池があり、そこで出会った1匹の猫。
その近くのベンチでお昼ごはんでも食べようかと思って来てみればそこにだらっと寝転がっていた。
最初は僕を見るたびにぴーんと耳を立てどこかへ走り去っていたが、毎日のように通うと流石に慣れてきたのか近くには居てくれるようになった。
仲良くなりたかったし、
折角近くに居てくれているのだからと
職員さんに確認をとって、今ではごはんを持っていっている。
「君は自由そうでいいな」
ささみに夢中になっている君を見ながらそう言葉に出す。
僕の理想なのかもしれない。
自由気ままに生きて、誰かに愛される。
それでも猫には猫の苦労があるんだろうなとは思うけど、羨ましかった。
目線を正面に戻す。
人がおらず、静かな空間。
目の前には太陽の光が反射してキラキラ光っている水面、その周りを木々が囲んでおり見ているだけで癒される。
何も考えずただ目の前の美しい景色を眺めていた。
僕がのんびりしている間に食べ終えた君は僕の足に身体をすり寄せた後ゆったりとした足取りで去っていく。
「またね、僕も帰るよ」
その背に声をかけ僕もその場を後にする。
初めてストーリー書いていくので、
至らない所も多々あると思いますが、
暖かく見守っていただけると幸いです!