12.告白未遂
翔汰は布団を頭までかぶり、耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かった。
眠ろうと必死に目を閉じても、まぶたの裏ではレンの笑顔ばかりがちらつく。
あんなふうに笑ってくれるのは、きっと自分の前だけだ。
そのとき、枕元のスマホが、かすかな震えを響かせた。
画面には新しい通知。送り主はもちろんレンだ。
「まだ起きてる? 眠れなくて……なんとなく送っちゃった」
柔らかな文面と一緒に、眠たそうに目をこするスタンプが添えられていた。
それだけのはずなのに、翔汰の鼓動はさらに速まっていく。
「起きてるよ。俺も眠れなくて」
そう返すだけで、締め付けられるように苦しい。
すぐに既読がつき、レンからまた返事が届く。
「やっぱり?私もなんかドキドキしてて。今日が楽しすぎたからかな」
「カケルくんと一緒にいると落ち着くのに、逆に胸が高鳴るんだよね。不思議」
――もう、だめだ。
レンの言葉が心臓に突き刺さる。
翔汰はスマホを握る手に力を込め、震える指で文字を打ち込み始めた。
「実は……俺、あの時の新堂なんだ」
そこまで入力したところで、指が止まった。
画面の送信ボタンが真っ赤に光り、あとひと押しで全てが彼女に伝わってしまう。
息が荒くなり、鼓動が暴れる。
頭の中で何度も警鐘が鳴る。
――今、言ったら。
――もし拒絶されたら。
――彼女の笑顔が見られなくなったら。
「だめだ。」
震える手で慌てて文字を削除する。
だが、削除するその一瞬の間に、Limeの画面には「入力中…」の表示がレンに伝わってしまっていた。
すぐに通知が返ってくる。
「ねえ、いま何か言おうとしたでしょ?文字、途中で消えたよ?」
「大事なこと?もしそうなら、聞きたいな」
翔汰の全身に冷たい汗がにじむ。
ごまかさなければならない。
けれど、何をどう繕えばいいのか分からない。
喉が乾ききっているのに、唾を飲み込む音だけがやけに大きく響いた。
「いや……たいしたことじゃない。ただ、眠れなくて」
ようやく打ち込んだのは、弱々しい言い訳だけだった。
しばらくして、レンからの返信が画面に届く。
「そっか、ならよかった。私も同じだから。こうして話してたら、少し安心できるかも」
かわいらしい笑顔のスタンプが並ぶ。
翔汰はスマホを胸に押し当て、目をぎゅっと閉じた。
あと一歩で、全部を告げてしまうところだった。
あまりに危うい未遂。
「俺、何やってんだよ。」
布団の中で小さくつぶやく声は、誰に届くこともなく夜に溶けていった。
それでも鼓動は止まらず、乱れた息と一緒に翔汰を追い詰め続ける。
このままじゃ、いつか抑えきれなくなる。
スマホの光に照らされる中、翔汰はただひとり、告げられなかった言葉を心の中で繰り返し続けていた。




