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第6話 女王陛下の大陸紹介




 現在時刻は午前10時。


 陛下への謁見の準備が整ったということで、俺はリーナさんにつれられてゲーム内でも見覚えのある一室へとつれられてきた。



 俺が案内された部屋は所謂会議室のような場所であり、ゲームでも転生者が変に委縮しないよう、気軽に陛下と応対ができる場としてこの場が選ばれたというような裏設定があったはず。


 実際こちらの世界においても、公式の謁見の場でするような作法などは特に求められないというような旨を、それとなくリーナさんに伝えられた。


 まあ、そのうえで傅いたり上品に振舞ったところで別に問題はないのだろうが、ここはゲーム同様、あまり気負わずにベル様とお話をさせていただこうと思っている。



 さて、そうして待つこと10数分。


 俺は再び、現実のベル様と相対していた。



「すまない、少し遅くなった」


「いえ、俺の方も今朝は少し遅くに起きてしまいましたので」


「そうか、召喚による気疲れなどもあったのだろう。それとも、昨晩はあまり眠れなかっただろうか?」


「いえ、おかげさまでよく眠れましたし、疲れもほとんど残っておりませんよ」


「そうか、それならいいんだ。今後、もし寝具などに不足があった場合は遠慮なく申してほしい。かくいう私も、寝具が変わると寝つきが悪くなる体質でな。王宮の方で手配した寝具の内、貴殿には気に入ったものを融通させよう」


「ありがとうございます。その時は是非、ベル様のご厚意に甘えさせていただければと」


「うむ」


 陛下は俺の返事に一つ頷き、いよいよ本題だとばかりにその身に纏う雰囲気をより一層真剣なものへと変える。



「さて、アイスブレイクはこの辺りにしておこうか。早速本題に入っても?」


「はい」


「そうか、では改めてになるが、貴殿は我々の手によってこの世界に召喚されたことについて、特に遺恨はないということでいいのだろうか?」


「はい、勿論です」


 ここは俺も改めて、しっかりと自らの意思を表明するように力強く頷く。


 ベル様もこれで俺から確認すべき真意はしっかりと再確認できたと、少しばかりその表情を和らげた。



「そうか、では我々も、貴殿が今後この世界で暮らすことを前提として話を進めさせてもらいたい」


「はい、俺からもそのようにお願いします」


「うむ、そういうことであれば、まずは貴殿が召喚されたこの世界について、大まかに話しておいた方が良いであろうな」


 そう言って、ベル様が傍に控えていた一人の女性に世界地図のようなものを取りだしてもらっていた。


「では、早速だがこの地図を見てほしい」


 ベル様が受け取った世界地図をこちらに見えるように机の上に広げてくださる。


 一応、ぱっと見た限りでは、この世界地図もゲーム内で目にしたそれとほとんど変わりはないように思えた。


 だが、ここはリアル。


 ゲームとの差異がこれからの話に出てくる可能性は十分にあり得るのだ。


 既に知っていることが多いとはいえ、ここは真剣に耳を傾けておこうと思う。


 実際、衣装スキンの事がいい例だったからな。そういう意味ではあれはいい勉強になった。


 同じ轍を二度は踏みたくない。


 これからは、ゲームとの差異なんかも一つ一つしっかりと確認していくようにしたいと思う。



 俺がそう決意を新たにしていると、既にベル様の人差し指は地図上の南側、【フェルナンド】と記載されてある大陸の上へとすらりと伸びていた。



「さて、まずはこの地図上にある4つの大陸についてだが、とりあえず今回は、我が国が存在する【フェルナンド大陸】についてを中心に話を進めていく」


 そこに表記されていた大陸の構造や位置は、今のところ俺の知識にあるそれと相違なかった。


 ちなみに、陛下の言う他3つの大陸はゲーム内でも存在自体は示唆されていたものだ。


 その具体的な内容はゲームでも触れられていなかった為、こちらは後で自分で調べてみるつもりである。


 まあ、案外それらも纏めてベル様に聞いてもいいのかもしれないが、流石に多忙な女王陛下の時間をいつまでも使わせてしまう訳にはいかないだろう。


 ここは遠慮して、今回ベル様には必要最低限の事だけを確認させてもらうことにした。


 ベル様も、自国がある【フェルナンド大陸】については詳しく説明してくれるみたいだしな。



「……ここ【フェルナンド大陸】は、3つの大国と5つの中規模国家、12の小国から成る大陸で、現状この世界で最も広いと言われている大陸だ。我が国【ステファニア女王国】は、その内【フェルナンド大陸】に存在する三大大国の一つで、大陸北側の海に面したここら一帯が全てその領土になっている」


 そう言って、今度は【ステファニア】と地図上に表記されている地点の右斜め上程の場所へと人差し指を這わせるベル様。


 そこには大きな街のような絵が簡単に描かれており、その上に小さく【♦ベルステラ】と記載されていた。


「そして、ここが我が国の首都【王都ベルステラ】であり、今貴殿が滞在している王宮があるのもこの都市だ。町並みや全体の雰囲気などは、また後日ゆっくりと見て回る機会を設けさせよう」


「後日、ですか?」


「うむ、既に貴殿もなんとなく察しているようだが、この世界には貴殿の他に男という性別の者は実在しない。それらは一般的に、総じて創作上だけの存在ということになっている」


「なるほど、何の知らせも出していない内に俺が勝手に出歩けば、少なくない混乱を招くと」


「ああ、貴殿は本当に話が早くて助かるな。実際我々は今、転生者様の召喚に成功したという旨を大衆に知らせる準備を大急ぎで進めている。これは、この世界の現国際情勢においてもかなり慎重を期するな話でな。準備にはそれなりの根回しも必要なのだ。それで貴殿にも、公表の際は実際に民衆の前に大々的に姿を見せてもらえれば助かるのだが、構わないだろうか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


「そうか、やはり貴殿は頼れるな。まあ、こちらとしても何か難しいことをさせようということはない。そこまで気負わずとも、貴殿が不安に思うようなことは全てこちらで対処できるように取り計らおう」


「ありがとうございます。特にこの世界での転生者の立ち位置次第では、身の危険も覚悟しておりましたので」


「なるほど、当然の懸念だな。しかし安心するといい、万が一の時は、私がこの命に代えてでも貴殿を守り抜くと誓おう。何、これでも私はこの国で一番強い(・・・・・・・・)。貴殿は安心してこの世界での暮らしを謳歌してくれ」


「「「へ、陛下!?」」」


 俺の懸念にベル様が何やらイケメン過ぎることを堂々と言ってのけると、傍に控えていた何人もの女性が、それは流石にとぎょっとしたような目をして驚いた声を上げていた。


 まあ、無理もないだろう。 


 自国のトップがそう簡単に命をかけるなんて言えば動揺するに決まっている。


 しかし、ベル様はこの辺りかなり義理堅い人なので、おそらくそう言ったからには本当に命を懸けてでも俺を守ってくれるのだろう。


 まあ、なんだかんだと国益の為であれば少し強引なところも見せる人ではあるが、その分の義理はきちんと通す人なので、彼女は多くの人に愛されるカリスマ性を有しているのだ。


 そして、その立場が故の道理もきちんと弁えている人でもある。



「ハハっ、貴公らよ、そう慌ててくれるな。そうならなくていいように、我々は今各所への根回しをしているのではなかったか?」


「そ、それはそうですけれど……」


「何、無論私とて上手くやってのけるつもりだが、そのうえで手抜かりがあればそれは我々の責任なのだ。幸いアルトはこちらに協力的な姿勢を取ってくれているが、それはひとえに彼の厚意があってこそ。ならば、我々もそれに応えねばあまりにも不義理であろうよ。少なくとも私は、そんな恥知らずな女になるつもりはないな」


「「「陛下……」」」


 ベル様の人柄がこれでもかとわかる力強い言葉に、傍に控えていた女性たちも若干頬を赤らめつつ、陛下の御心に納得する事にしたらしい。


 その表情には、口に出さずとも自らが仕える女王への絶対的な信頼が滲んでいた。


 やっぱり、リアルのヒロせかでもベル様はベル様だったらしい。


 俺もまた、そんなベル様に思わず熱い視線を向けてしまう。



 陛下もそんな多くの思慕の念に勘づいたのか、少々照れ臭そうに頬を赤らめていた。


 ぐはっ、ギャップ萌えだ……。


 この女王陛下、ナチュラルに魅了のクリティカルヒットを連発してくる。


 ああ、ここがゲームであればまず間違いなくノータイムでスクショを連写していたところなんだが……。


 流石にここでスマホを取り出してパシャッ、はあまりにも不審者の行動が過ぎるので、血涙を飲んで我慢した。



 一方で、なんだか柄にもない反応をしてしまったと苦笑するベル様は、早々に話題を切り変えたいのだろう。


 ベル様は再びその人差し指を地図の上に戻すと、今度はとんとんっとその上を軽く叩いて音を鳴らした。



「こ、こほんっ……さて、少し話が逸れてきたな。ここは一度話を戻し、大陸の他の国々についても軽く紹介しておこう。これは先ほどの根回しの件も含め、今後アルトの立ち位置にも関係のある話だから、一応気に留めておいてもらえると助かる」


 そう言って、今度は【ステファニア女王国】より南側、黒い線で区切られた別の国の方へとベル様が指を這わせる。



「さて、流石に大陸にある全ての国を事細かに紹介しても、覚えるのが大変だろう。今日は主要な国家に絞って各自簡単に紹介していこうと思う。まずは我が国の隣国からだな」


 陛下はそのまま人差し指を這わせていき、今度は【マルティーヌ】という表記の上でその指を止めた。
















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