ギャラクシー・シェリフ・ファイブふたたび
「……さあ、銀河保安官5V4のリーダー、シェリフ・レッドの得意技、必殺のヘルアンカーブロウラリアットが悪の秘密結社ダメダメ団(改)の頭目の首に見事に決まるのでしょうか!? 人質のハルトくんの運命はよい子のみんなの応援にかかっています。みんなで叫ぼう! 『シェリフ・レッド、頑張れー!』って」
キャラクター権利者との打ち合わせ日がどうしても動かせなかった淡咲さんのお父さんに代わって、今日はオレがブルーのヒーローマスクを被っている。
本当にこういう戦隊アクションショーの基本ストーリーはオレが観客だったころから変わらないものだ、などとつまらないことを考えて一瞬注意散漫になったとたん、ゆうなさん演じるピンクの悲鳴が聞こえた。
「あー、だめっ!!」
あとはなんだかわけが分からないまま、オレが子供だったときと同じ流れになった。ダメダメ団(改)の頭目から逃れた男の子は頭目に立ち向かっていき、ピンクは男の子を確保しそこね、考えるより前に身体が動いたオレは、男の子を掴んでピンクに渡し、かわりに倒れてくる頭目の下敷きになった。
ねじった足首が痛かったけれど、我慢して、蛙が潰れたような「ぅうぐぇっ!」という声はあげなかった。
何事もなかったかのように続く、というほどスムーズには行かなかったけれど、他のキャストのアドリブのおかげでショーは続いて、悪の秘密結社ダメダメ団(改)は無事に討伐された。
# P8 537/7425 そして
ショーが終わっても舞台の袖で人質の男の子を抱きしめて確保していたピンクに近寄り、
「終わったよ、もう放してやってもいいんじゃない?」
と声をかけてやる。オレがしくじった昔の事故のときと同じで、ゆうなさんのピンクもきっとヒーローマスクの中で青ざめていたのだろう。
それから、男の子に向かって
「ハルトくん、悪の秘密結社ダメダメ団(改)に一人で立ち向かおうとして、偉かったな! 男の子は勇気が大切だ」
と褒めてやる。
男の子はおずおずと
「シェリフ・ブルーは怪我しなかったの? 大丈夫?」
と訊いてくれたが、まさか正直に「お前のせいで足引きずってるよ」なんて答えられるわけがない。
「もちろんだ。シェリフ・ブルーは銀河保安官5V4のエースだぞ。ダメダメ団(改)の頭目に体当たりされたくらいじゃびくともしないから、安心しな」
それを聞いた男の子の顔が、ぱぁっと明るくなる。
「だけどさ、ハルトくん、最初に司会のお姉さんと約束した通りにできなかったのはいけないな。次からはちゃんと約束をまもるんだぞ」
そう、オレが子供のときしくじったあとに、オレはきっとこんな風にブルーに言ってほしかったんだ。
「うん、約束する。シェリフ・ブルー、ありがとう」
男の子は客席最前列で待っている両親のもとへ元気よく駆け出して行った。