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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第63話

 仕事に復帰した時はやたらと心配されたが、二週間も過ぎるとそれもなくなって鈴は普段通りに加地とバディを組んで仕事をしている。


 たまに相変わらず黒い靄つけた人を目にすることはあるが、鈴が心の中で払詞を唱えながら触れると消滅する程度だった。でもそれ以降見かけても、特に鈴はわざわざ祓う事はしなかった。


 鬼塚と関わって、結局は人を害する人間は自分の身を滅ぼす羽目になると思ったからだ。それで他人を傷付けてる事になるかもしれないが、そこは法の下で第三者によって平等に裁かれればいい事だ。独りよがりでどうにかするのは間違いだと、怨霊に取り込まれた鈴は考えていた。


「さてそろそろ戻るか」

「――もう、ですか?」

「今日はどっちの差し入れか楽しみだ! いや~~守矢様さまだよな!」


 将門も帰り日常には戻ったものの、変わらないというか悪化した事があった。鈴は本庁に戻らずそのまま帰りたかった。


「戻りました~~」


 加地の後で機捜に入ると、出迎えてくれたのは桜葉透だった。


「鈴ちゃん。今日の差し入れはステーキサンドとデザートにケーキを持ってきたよ」


 何で、こうなった! 紗季が言ったように、あの後両親や兄は病院では好待遇で治療をされ、傷ついた家の中も桜葉家が修理してくれたと聞いた鈴は、気を失いそうになった。


 おまけに機捜に桜葉の父とその息子が交互にくるようになっていた。何で大企業のトップの二人が、わざわざ差し入れに来るのよ! 紗季さん本当、何を吹き込んだのかな?! おまけに警視総監にも呼び出されて、桜葉家に嫁いでもバックアップはするからと、嬉しそうに言われるし。


 どんどん外堀を埋められている気がするというか、埋められてるよねこれ? 目の前で嬉しそうにしている桜葉透を見ながら、警察官を辞めようかなと鈴は本気で考えた。


 唯一くつろげる場所のマンションに戻った鈴は、そのままベッドに倒れ込んだ。

 今日も「いつお嫁に来るの?」と聞かれ笑って誤魔化して逃げるように帰ってきた。


「もうやだ」


 嫌いか好きで聞かれると、別に嫌いではないけど、好きでもない。もうちょっと人の話しを聞く人ならな~~と横向き体勢を変えた鈴は「ぎゃあぁぁぁ!」と絶叫した。


「鈴、うるさいぞ」

「ま、将門さん?」


 そこには神社に帰ったはずの将門が首だけで浮いていた。


「久しぶりだっぺ」

「久しぶりって、神社は? ここで何してんの?」

「ん? 遊びにきたっぺ。ほらまだ、パンケーキを食べておらんしな」


 そう言えば、昔にパンケーキを食べ損ねたなと鈴が思い出した。


「いやいや。あっちでも食べられるでしょ? パンケーキ」

「儂は、あのテレビで映っていたパンケーキが食べたいんじゃ!」


 その様子は、まさに駄々をこねる子供みたいだった。


「そもそも神社は?」

「うむ。しばらく離れておっても問題はなかったのでな。しばらくまた世話になるぞ鈴」

「は?」

「それで儂が目をつけておる店が色々とあってな」


 どこから出したのか、店名が筆で書かれた紙を出してきて鈴は唖然としていた。


「え? またここにいるの?」

「うむ。たまには帰るが、食べたいものがたくさんあるからのう」


 ポンポン首が部屋の中を跳ねている。かなり嬉しいのだと鈴にも分かった。


 なんだろう……桜葉一族といい、将門さんといい、何でこうも我が道を行く人が私の周りに集まってるの? 私、前世の行いでもわるかったのかな? 将門も様子を見る限り、満足するまでここに居座るのは目に見えている。


「もう寝る」と鈴は枕に顔を埋めたが、将門はずっと「鈴! 鈴! このフレンチトーストもじゃ!」と声を上げていた。



 了


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