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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第40話

車に戻ってメモした手帳を鈴は改めて見直していた。


「あまり情報はなかったっぺ」

「そんな事はないよ。鬼塚未央は施設育ちだった。人間関係は希薄な感じだったみたいだし。施設か」


都内にある施設をしらみ潰しに一人で探すしかない。ただかなり時間が経っているから、もし鬼塚が閉鎖された施設にいたとならかなり難しい。


「警察の捜査とはテレビドラマみたい進まないのだなあ」


将門さん、最近サスペンスドラマに嵌り過ぎている。指紋の取り方とか少し前に凄く聞かれ、現場検証の時に見たらいいじゃんと答えたなと鈴は思い返していたが、スマホの呼び出しで我に返った。


「はい守矢です」

「お前な~~何で庁内にいない訳?」

「ちょっと気になる事があって。それでどうかしましたか?」

「ああ、北橋が自殺した」

「は?」

「トイレに行きたいって言うんで連れて行ったら、小じゃなく大だって言うから個室に入れたらしいんだが、タンクの蓋を割って首を切ったって連絡がきて死亡が確認された」


この後、北橋が拘留されている所轄に行って会うつもりだったが順番を間違えてしまったようだ。ドライブレコーダーの映像を直ぐに渡すのもおかしいから、この後に向かう予定にしていた。


「私の責任だ」

「はあ? 守矢の責任な訳がないだろう。所轄の人間の注意が足らなかったんだ。しかし、最近関わる被疑者が自殺を図る奴が多い。それも首を切ったりな。気持ち悪いな~~」


加地の言葉を聞きながら、自分の犯した失態を悔やんだ。


「所轄に寄ってから帰ります」

「おう。あんま無茶すんなよ」


今、無茶をしないといけない時期なんですよ加地さん。通話が切れたスマホに向かって鈴は呟いた。

車を走らせ所轄に着いた鈴は、被疑者が自殺を図ってピリピリしている中、刑事課の部屋を訪れた。


「すみません。警視庁機捜課の守矢です。自殺を図った北橋の事で聞きたい事があります」


北橋の自殺で慌ただしいみたいで、刑事課には二人しか残っていない。


「今バタついていまして」

「聞いています。現場と調書があれば見たいんですが」

「構いませんが、何故機捜が?」

「東和学園の最初の通報で駆け付けたので」

「そうだったんですね。現場は三階の男子トイレです。首を切ったんで行けばわかります。あと調書はこれです。でもほとんど何も話さなかったみたですよ」

「ありがとうござます」


調書を受けとって内容を確認していく。犯行動機にはだんまりでも世間話には少し応じていたみたいだが、特に気になる点は見当たらない。


「あ、守矢さん、北橋の取り調べをしていた古賀係長が帰って来たんで、直接聞いた方がいいんじゃないですか? 古賀係長! 機捜の人が聞きたい事があるそうです」


調書を渡してくれた刑事が、今しがた入ってきた三〇歳半ばくらいで一八〇以上あるガタイのいい刑事が、疲れた顔で鈴のほうを振り返った。


「東和学園の一報の駆けつけた、機捜の守矢です。北橋が事情聴中、どんな様子だったか聞かせてもらえないでしょうか」


大きな溜息を吐いた古賀の表情から疲れている様子がありありと伝わってくる。


「あ~~犯行動機についてはだんまりだったが、殺された生徒で北橋と同級生だった親の写真を見せたら、凄い顔で睨みつけてたな」

「そうですか。調書では雑談には少し応じたとあったんですが、何か気になる事はありませんでしたか?」


「――特にはなかったな。女の話が出たくらいか」

「それって、どんな話だったんですか?」

「年齢的にも周りは結婚して子供もいるだろうみたいな話しをしたんだが、その時にあの人に会って変われたんだとか言ってたんだが、昔イジメに遭ってたのにその女の人のおかげで教師になったのか? て聞いたら頷いてそれ以上、話さなかったな」


女性のおかげで教師になったという内容が、何故か気になった。話しに出た女性について詳しい話は北橋から出なかったようだ。

鈴は古賀にお礼を言って現場のトイレに向かった。


「うわ~~凄い」


胸ポケットに入っていたピーポー君が顔を出して「懐かしい光景だっぺ」と将門が零した。


そうか、将門さんの時代は刀でバッサバサ斬っていた時代だから、飛沫を見慣れているって事だろうけど、懐かしいか~~と平和な時代に生まれてよかったと鈴は思った。

三室ある一番奥が現場で覗くと黒い靄が少し残っている。


「ん?」

「どうかしたっぺ?」

「いや、あれ?」


キョロキョロ広くないトイレを隅々までチェックして廊下にまで出てあるものを探した。


「鈴?」

「いない」

「怨霊か?」

「違う違う。霊がいないんだよ。そう言えば、女子高生も、池で死んだ子も、首を絞められた子の霊体がいなかったよね? 少しだけ時間が経っていたから、校内にいるんだろうと思ってたんだけど」

「そう言えば、あの者はここにはおらぬな」


何だろうこの変な感じ。東和学園の時は、校内をくまなく見て回ったわけじゃないけど、死後直ぐにその場を離れる霊ってそう言えばいたかな? それに北橋は自殺なのに現場にいないのが、かなり違和感がある。鈴は何だか凄く嫌な感じがしてたまらなかった。


「将門さんは何か感じない?」

「そうじゃなあ、怨霊の残穢があるくらいじゃな。しかし鈴の言う通り、確かに何かおかしいかもしれんが」


将門も何か感じているみたいだけど、原因は分からないのか。北橋の霊がここにいると思って来たけど、アテが外れてしまった。


鈴は所轄で最後に関わったあの田中少年のその後を聞くために、古巣の太立川署の玉井に連絡を入れた。祖母を殺した少年は今児童保護施設にいるらしく、場所を聞いた鈴はそのまま施設に車を走らせることにした。


「そういえば、坊主から連絡はないっぺか?」


将門の質問に思わず鈴は眉間に皺を寄せる。


「メッセージは送られてきてるけど、基本的に無視してる」

「なんと! 返事をせねば他の女の所に行ってしまうではないか」

「全く、他に行って欲しいんだけど」

「鈴は本当に男の影はないのう」

「そんな憐れむような言い方、マジやめて。何か悲しくなるから」


その後も施設に着くまで、何かと将門は桜葉に頼まれたのか? と言うくらいにプレゼンをしてきて鈴は思わずアクセルを強く踏んでしまっていた。


玉井が施設に連絡を入れてくれていたので、田中薫との面談はスムーズにすることができた。場所は施設の面談室で、簡素なテーブルと椅子が置かれているだけの部屋だった。既に部屋には田中が座って待っていた。


「こんにちは。久しぶり」

「――」

「元気、そうじゃないね。喉は大丈夫?」


完全に心を閉ざしている。その原因は多分、誰も言った言葉を信じてくれなかったからだろう。田中は女とか男が、アイツらが俺の中に入ってきたんだって言ってとあの時に玉井さんが教えてくれた。


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