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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第3話

 普通ならこういう場合、スッと部屋の中に入っていくことが多いのにと鈴は不思議に思った。でもお婆さんは実体ではないので、鈴は無視して部屋へと入った。


 中は六帖ほどの和室でタンスと鏡台があり、タンスに凭れ掛かったままお婆さんは死んでいた。




 遺体の前にしゃがみ込んだ鈴が見たのは、絞められた跡がある首だった。立ったまま鈴を見てくるお婆さんは、ただ首を横に振って悲しそうにしているだけ。




 この家の住人は離婚した娘とその息子だと言っていた。もし外部なら経験上、死者は外を指さすなり手掛かりになりそうな物があればそこに誘導することが多い。でも身内に殺された場合は、何も示さない事がほとんど。




「お婆さん、娘さんか孫に殺されたの?」




 お婆さんは涙を流しながら首を横に振って消えてしまった。




「おい、守矢」


「三吉さん。この家の住人だと思いますが、亡くなっています」




 三吉が本署に連絡を入れている間、鈴は部屋を出て二階の他の部屋を見る事にした。


 一部屋は和室で、化粧道具やら女性の持ち物があり、同居している娘の部屋だと推測できた。もう一部屋を覗くと、他の部屋よりは小さ目の和室で、物置になっていた。




 二階の部屋で特に異常を感じなかった鈴は、一階の様子を見ることにした。一階の開けたままにされたドアの向こうに進むと、何かを探していたのか引出という引き出しが投げ出され荒らされていた。


 リビングを出て廊下の反対側に一部屋あり、扉を開けて中に入った。




 カーテンが開いていて明るいのに、あの靄が部屋の中に残穢のように漂っていた。


学習机、教科書やベッドが置かれている状況から、お婆さんを殺した孫の部屋だろう。


 直ぐに刑事課、鑑識、救急が到着し、鈴たちは慣れた手つきで立ち入り禁止のテープを貼り、一般人が入れないように警備についていた。




 お婆さんを殺したのは孫みたいだけど、何で殺したんだろう? それに身内に殺された霊でも、大体は怒っているのにおのお婆さんは怒っていなかったし、どちらかと言えば庇ってる感じだった。




 それに最近よく見るあの靄。加害者と被害者によく纏わりついているんだよね。初めて見た時はもっと薄かったのに、今は凄く濃くなっている。昔はあんなの付いてなかったのに。




「お、守矢。お疲れさん」


「玉井さん。お疲れ様です」




 声を掛けてきたのは、到着した刑事課の玉井だった。




「婆さんが死んでたらしいな」


「はい。二階の部屋で遺体を発見しました」


「そうか。で、お前はいつ刑事課にくるんだ?」




 一七〇センチ前後で小柄な玉井は、四〇代だが鈴が知っている四〇代よりも凄みがある。そして顔を見ると、鈴を刑事課に誘うので面倒くさかった。




「私は地域の人の安全を守る制服警官が合ってますし、好きなので」


「結構、刑事に憧れる奴が多いのに相変わらず変わってるな。お前と組んでる三吉? だったか? あいつは刑事になりたくてうちの主任やら課長、俺にまで媚を売り込んできてるぞ」


「あはは。そうなんですね」




愛想笑いで返したら、玉井は面白くなそうな顔をしていた。




「お母さん! お母さん!」




小奇麗な三〇代の女が血相を変えて、同じく警備をしている三吉にタックルする勢いで突っ込んで行くのが見えた。




「遺族ぽいな」


「そうですね。娘さんでしょうね」


「よし! 行ってくるわ」




玉井は白い手袋して泣いている女性に声をかけている。鈴は規制解除の指示が出るまで警戒に当たらなければならない。

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