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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第28話

 桜葉に車に乗せられて着いたのは、病院ではなかった。




「もしかして、ここは」


「僕の家です」




 道が違うなあと思いながら乗っていたら、どんどん普段は見ない広さの家がある住宅街に入って行った時点で察してはいた。




 鈴が知っている庭の概念を変えた広さの庭に、映画とかテレビ撮影の建物と言いたくなるような歴史が見える作り。




でも時代に合わせて改築しているのか古さは感じない。どこをどう見ても豪邸と言われる家に鈴は連れて来られていた。




「病院では目が行き届かないから、しばらくここで面倒を見ます」


「お断りします!」




 やはり少しでも力が入ると傷が痛んで、少し前屈みになってします。




「加地さんや機捜の方々にも頼まれているので決定事項です。ほら、傷に障ります」




 無意識に傷を庇ってしまうのと、余計な力を使うと痛むので、鈴は大人しくするしかなかった。




「何で桜葉さんは、そんなに私に構うの?」


「言ったじゃないですか。一目惚れをしたと」




 確かに言ってはいたけど、特に可愛いくはないしまして美人でもない平凡な容姿だと自覚している。というか本気だったのかと鈴は、今更ながら驚いていた。




「マジだったんだ」


「冗談で言いませんよ僕は」


「いや、でも」




 鈴が言葉を続けようとしたら「顕様! それに鈴様ですね! ああ! お久しぶりでございます。あの時は、顕様を守っていただきましてこの小野重次郎、感謝してもしきれません!」




あの時と同じように鈴の両手を握り、上下に激しくシェイクし始めた。




「警察官として、当たり前の事を」


「いえ! 休暇中だったにも関わらず犯罪者を手籠めにする姿。もう感動いたしました!」




 手籠めってちょっと違うと思うけど。指摘したいけど破顔している年配者には言いにくい。鈴はそっと視線で桜葉に助けを求めた。




「小野さん。そこまでに。僕は今からまた会社に行きます。遅くなるので、鈴さんの事はお願いします」


「かしこまりました! 誠心誠意、尽くさせていただきますので顕様は心置きなくお仕事の方に精をお出しくださいませ」


「ありがとう。ではお願いします」




 え、ちょっと待ってと言う間も与えられず桜葉は仕事に向かい、小野の桜葉自慢話を聞きながら部屋に案内された。




 将門は「鈴の部屋が物置部屋みたいだっぺ」と他の人には聞こえないからと好き放題に言っている。そして「ちょっと他も見てくるかのう」と壁を抜けて行ってしまった。




 将門さん、自由すぎるでしょと鈴は改めて部屋を見回す。モダンに統一されていて、これが部屋の広さなのか? と思わざる得ないくらいだった。




冷暖房費がめちゃくちゃかかりそうと心配するくらいの広さで、ベッドもキングサイズが設置されている。




「小野さん、病院に帰ります。そのほうが落ちつくので」


「何をおっしゃいますか。手術した翌日に抜けだされたそうじゃないですか。顕様がそれはそれは心配されて、見ているわたくしは、胸が苦しくなってしまいましたよ」


「大した怪我じゃないんですけど」


「小さくても大きくても怪我は怪我ですよ! それに顕様の未来の花嫁様なんですから無茶は禁物です」


「は? 花嫁?」




 付き合ってもないのに何故、未来の花嫁認定をされるのか、意味がわからない。




「結婚なんてしませんけど」


「またまたご冗談を。日本を支える企業の後継者で容姿端麗に性格良し。たくさんのお嬢様たちからのアプローチに見向きもされなかった顕様が、お心を動かされた初めてのお方です。もうこれはモノになっていただくしかございません!」




 熱血振りを露わにする小野にかなり引いた鈴は、これ以上何を言っても無駄だと感じた。




「あ、そうでした。テレビではオンデマンドなど全て見ることがきる様になっております。後タブレットもお渡ししておきます。ご夕食は、一八時半からですので、またお呼びに伺います。ではごゆっくりと」




 小野は、ホテルマンみたいな説明をして部屋を出ていった。




 残された鈴はどうしてこうなったとベッドに倒れ込んだ。




 疲れていたようで、そのまま鈴は眠ってしまっていた鈴を起こしたのは桜葉だった。気持ちよく寝ていた鈴は、何度もしつこく身体を揺らされて起き上がった。




「もう! うるさい! 寝てるのに」


「すみません」




 何で桜庭さんがいるんだ? と半分まだ寝ておる頭が少し覚醒してきて、ここが病室でも家でもないことを鈴は思い出した。




「ごめん!」


「ふふふ。大丈夫です。気持ちよく寝ていたのに起こしたのは僕ですから」




 桜葉さん、笑えるんだ。表情筋は生きているのかと、覚めきっていない頭で顔を見ていた。




 案内されたダイニングテーブルには、今日はクリスマスパーティーか? と見間違える料理が並んでいた。まさかこれ、二人で食べるために用意されたの? どう考えてもフードロスだ。




 桜葉が咳払いをして、鈴の正面の椅子に座る。ボードが置かれていて家族写真が何枚か飾ってあった。




「量が多いですよね。すみません。小野が張り切って食事を作らせまして」




 やはり小野さんか! 浮かれジジイめ! そう言えばうちの浮かれジジイは何処をふわふわしてるのやら。鈴が辺りを見回してもく将門の首は浮いていない。




「どうかしましたか?」


「いえ。せっかくのなので小野さんも一緒に食べたらいいかなって思って」


「小野は仕事があるからと、自室に」




 もしかして、後はお若いお二人でのつもりか。仕方がないので鈴は、胃袋に詰め込めるだけ詰め込む事にした。




 もう動けない。無理。加地さんがいたら喜んだのに。それにしても桜葉さん、細い体をしている割にめちゃくちゃ食べていた。それなのにケロッとしている。品よく食べ終わった桜葉は涼しい顔をしていた。




「そういえば桜葉さんのお父さんは、まだ帰ってこないの?」


「父は今、海外で仕事をしています」




 桜葉は、一瞬だけ石みたいに固まって眉間に皺が寄っていた。何か根深いものがあるのか。鈴は「流石は大企業」と気づかないふりをした。




「でもお父さんにはお母さんが一緒にいて寂しくはないだろうけど、桜葉さんは寂しいでしょ?」


「母は……わかりません」




 ん? それは、母親は息子と離れていても寂しくは思ってはくれていないって事かな? 桜葉もいい年だけどお母さんが大好きっ子? 





マザコンなのかと言いかけて言葉を飲みこんだ。

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