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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第26話

救急病院に搬送されて治療を受けた鈴は、今とても居たたまれない気分だった。




テレビの中だけかと思っていたが、本当に病院にはVIP室ってあるんだと感心していた。無駄に広い部屋に高そうなリクライニングベッド。高そうなソファ。簡易ホテルみたいな感じだった。




 そしてベッドの傍らに無表情で座っている桜葉。言わずとこの部屋を手配したのは桜葉だった。




「あの」


「はい。何を買ってきましょうか?」


「そうじゃなくて、何で普通の大部屋じゃないのよ」


「普通ですね」




 ダメだ。やっぱり価値観が違いする。怪我自体は急所ではなかったし、傷も深くはなかったけど手術で縫った。




麻酔が切れ初めて今、地味に痛かった。数日入院する事にはなったけどここじゃない感が凄かった。




 何より病院の広い部屋というのは何故か空白が多すぎて怖く感じるはずが、将門が風船みたいにフヨフヨと浮いているから鈴はそうとは感じなかった。




 桜葉のハンドさんは何となくしょんぼりしている気がする。




「あの」


「はい」


「加地さんに何て言ったの?」


「ああ。僕が支援している施設があの近くにあるんですが、そこから噂で聞いていた、と言っておきました。駄目でしたか?」


「いえ。ありがとうございます」




 自分の不可解な行動について聞かれるかもしれないと思っていた鈴は、落ち着かない気分でベッドに横になった。寝たふりをした方が最善かもしれない。




雰囲気を読んでくれたのか桜葉が「今日は疲れたでしょう。しっかり治してください。またお見舞いに来ます」と病室を出て行った。




 そう言えば言葉遣いが戻っていたなと鈴は気付いたが、タメ口で喋る桜葉は、慣れていなさそうだったからしょうがないのかもしれない。




 扉が閉まって気配が無くなったのを確認した鈴は、浮いていた将門に声を掛けた。




「将門さ~~ん。来るのが遅いんですけど」


「すまんかった。鈴の気配に気が付いて慌てて飛んできたら刺されてしもうてたっぺ。でも大したことがなくてよかったっぺ」




 めちゃくちゃディズニーランドを満喫していたのか。でも気持ちは分からなくもないから、鈴も特に怒る気持ちもない。




「それより、桜葉さんの肩の乗ってる手って誰の手か分かる?」


「そうじゃなあ。身近な人間じゃが悪いものはないから放っておいても平気だっぺ」


「そんなもんなの?」


「そんなもんじゃ」




 刺されたから入院して安静にしておくべきだが、反対に言えば暇で時間がある。




折角本庁にいるんだから、このさい所轄では調べられなかった事を調べてみよう。鈴の数十年来の疑問を解消するにはいいタイミングだった。




「将門さん。近い内にもう一度、首塚に行ってみるよ」


「あい分かった。よろしく頼む。それで鈴、聞きたい事があるんじゃが」


「何?」


「その翡翠の首飾りを、昔に親戚の神社でもらったと言っておったじゃろ? どこの神社が覚えておるか?」


「長野県の大きな神社だってのは覚えてるけど名前まで覚えてないなあ。でも有名だったはず」




 将門は神妙な顔をして「そうかそうか。納得じゃ」と満足そうな顔をしていた。




 夕方、係長や機捜のメンバーが見舞いに訪れ、最後に加地が見舞いにやってきた。




「遅くなったな。怪我はどうだ?」


「痛いですよ。軽く手術をしたんですから」


「まあ大事にならなくて良かった」


「それでどうなりました?」




 加地は長く大きく息を吐いて項垂れた。




「お前、分かってただろ」




 ジロりと睨まれた鈴は、そうか全て明るみに出たんだと悟った。




「まあ、そうですね。下半身に集中した傷に隠れていた虐待された兄弟。何となくそうかなとは。弟のほうですよね? 殺したのは」


「――そうだ」


「服は? お兄ちゃんが証拠隠滅でも図った感じですか?」


「ご名答。あのあと色々と調べて判明して、兄の方は取り乱して暴れるわ、弟のほうは父親を殺した事を悪いと思ってるのか無いのかポカンってしてるわ。とにかく子供が犯したから児相いきだ」


「あの子達、バラバラになっちゃいますか?」


「そうだな~~落ち着くまではそうなるだろう」




 社会のゴミと言われてもいいような父親だとしても、人を殺した事実は変わらない。




望めるなら成長していく過程で夢だと、現実じゃなかったと忘れてくれたらいいのにと、鈴は神様パワーの使えない足元で寝ている将門の首に心の中で願っておいた。




「あの加地さん、お願いがあるんです」


「なんだ?」


「本庁で過去の全国の犯罪履歴をみたいんですけど、見れますか?」


「資料室で見られるぞ。何だ? 気になる事件でもあるのか?」


「う~~ん……現実なのか夢なのかを確かめたい?」


「何だその疑問形。一応申請を出せばいい」


「分かりました」




 それから少しだけ世間話をして加地は帰って行った。




 翌日、無茶をしないから夕方には戻ってくるからと頼み込んで、鈴は本庁に出向いて、資料室使用の申請を出した。自分が見たあの首を切られた女性と山姥女について知る為だった。




 本署では限られていたけど、本庁なら全国区で調べられる。時期は長めにとって三〇年前からにして、遺体損壊、性別女性で検索することにした。




範囲はだいぶ絞っているために、検索結果も刺殺などに比べたら断然少ない。一日あれば見られる量だったが、鈴が知りたい情報はなかった。

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