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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第2話

出勤した鈴は、服を脱いで制服のワイシャツを着こんだ。胸元には子供の頃から付けているネックレスをインナーの中に押し込む。付けていた軽めのリストウエイトとアンクルウエイトを仕事用に付け替えて、桜の代紋が付いたジャケットを羽織りロッカーを出た。




「おはよう」


「おはようございます」


「またお前か」


「すいません」




 お前が気に食わないと隠さない先輩の三吉に、鈴は愛想笑いで返した。


 駅前には繁華街もあり、夜になると酔っ払いや喧嘩でそれなりに忙しい。日中、酔っ払いはほとんどいなくても相談や落し物、万引きなどでそれなりに賑やかな交番だ。




まあ交番勤務って退屈しなくて面白いんだよねと鈴は思っているが、先輩の三吉は刑事になりたいらしく、よく刑事課の人に媚を売っていた。


 夜勤組と後退し、自転車に跨り三吉と見回りのため繁華街方面に向かっている途中だった。




「立川市若葉町二六番地。近所の住民より玄関の扉が開いたままで家主の応答なし。急行せよ」


「こちら立川交番の三吉と守矢、向かいます」




 刑事課案件かもしれないと思ったのか、三吉は目をギラギラさせている。人が不幸になっているかもしれないのに、三吉先輩はそれより刑事課異動が優先か。それが悪いとは思わないけど、市民の不幸を待っているみたいで鈴は少し嫌だった。




 現場に着くと、通報した六〇歳くらいの女性が待っていたとばかりに鈴たちに駆けつけてきた。




「お回りさん! やっときてくれた!」


「様子がおかしい家があるんですね?」


「ええ。そこの家なんですけど」




 張り切っている三吉に対応を任せつつ、通報者が指さした築二〇年くらいの家を見た。表札には田中とある。




 視線を移すと、玄関扉から半分体が出ている黒い靄がまとわりついた悲し気な老人が見えた。あ、お婆さんは殺されたのか、と鈴は理解してしまった。




「お婆さん以外に誰か住んでいますか?」


「え? 私、お婆さんが住んでるって言いましたっけ?」


「あ、えーーっと家も古そうだから、お婆さんが住んでそうだと思ったんで」




 アハハと笑いで誤魔化したが、三吉が鈴を思いっきり睨んできた。




「そういう事ですか。この家にはお婆さんと離婚して戻ってきた娘さんと中学生の息子さんの三人暮らしです」


「分かりました。中を確認してみますので、ここ待っていてください」




 三吉が通報者に待機を命じて、鈴に顎で行くぞと伝えてきたのでそれに従う。




「ごめんください。警察の者です。誰かいますか?」




 ゆっくりと玄関に入って三吉が声をかけたが、家の中は静まり返ったままだ。




「中に入るぞ」


「はい」




 入っても死体があるだけだろうけどと、鈴が三吉の後を付いて行こうとしたが、お婆さんが二階を指していた。




「私、二階を見てきます」


「わかった」




 少し急な階段を上がっていくと、三部屋あるうちの一番奥の部屋の前にお婆さんがいた。この部屋で死んでるのかと、ドアノブに手を掛けようとしてもお婆さんが通せんぼをするみたいに退かない。


 鈴は癖で胸元を掴んだ

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