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女刑事と将門さん  作者: 安土朝顔
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第10話

 人事課でもらったカードキーを持ったまま、鈴は白い扉の前で何度目か分からない溜息をこぼしていた。


 


 めちゃくちゃ緊張する。転入生の気分。こんな事ならさっさと署内の刑事課に異動しておけば良かったかな。はあ、とまた溜息を吐く。




 もう一つ、鈴には気がかりなことがあったが、急に扉が開いてそれどころではなくなってしまった。




「うお!」


「うわ!」


「ビックリした」


「すみません」


「もしかして、守矢鈴か?」


「はい。 本日付けでは配属になった守矢鈴です」


「テンション低いな~~なかなか来ないから、迷子になってるのとか思ったぞ」


「すみません。緊張して」


「子供か。まあ中に入れ。まずは上に挨拶してから、チームを紹介する」




 胸元のネームカードには加地竜弥と書かれていた。鈴の視線に気付いたのか「お前の教育係だ」と告げた。




 鈴が所属するのは、警視庁捜査一課機動捜査隊だった。物静かそうな警部の飯塚係長、陽気そうな小室巡査部長、にこにこと穏やかそうな警部補の高野係長。




 加地曰く、怒らしてはいけないのが高野らしかった。あと皆が普通の服を着ていて、スーツの鈴だけが浮いていた。




 一通り自己紹介が終わると「届いている荷物、デスクに置いておいた。俺の隣な」加地が座った隣の席には所轄から送った段ボールは置いてあった。




「ありがとうごいます」




 取りえず段ボールの中のものを引き出しにしまっていく。




「そう言えば、お父さんも警察官だったんだってな。二世とはお父さんも喜んでたじゃないか?」




 警察で二世と言えば、結構噂にはなる。それが三世ともなると何故か、凄い! と憧れのような目で見られる事が多い。例え親子関係が悪くても関係はない。鈴は片付けながら当たり障りなく返事をした。




「――まあ、そですね。ずっと制服警官で、後半は交通課だったみたいですけど」


「それでも二世は二世じゃないか。娘が捜査一課に異動になったって聞いて、驚いてたんじゃないか?」


「まあ、そうですね~~」




 実はまだ、異動になったことは家族には伝えていなかった。




 お父さんは元々、警察官になるのを反対していたし、娘の私にそんなに興味はないというか嫌われているから言う必要もないんだよねと、小さく溜息を吐いた。




 何故か年配者の人間は、子供が自分と同じ警察官になると喜ぶ人が一定数いて、変に夢見てるところがあるのが鈴には理解できなかった。




 黙々と片付けていたら、荷物も少なかったからあっという間に終わってしまってしまった。




「さて守矢。片付けが終わったみたいだな。早速出るぞ」


「え?」


「機捜はほぼ出ずっぱりだ。運転よろしく」


「はい」




 地下駐車場の覆面パトカーに乗り込で、鈴は車を発進させた。




「何処に行けばいいでんすか?」


「まあ、適当に都内を走ってくれればいい。無線で事件の一報が入ればそこに急行だ」


「分かりました」




 早速、警視庁を出て一般道に車を走らせた。




「確か、警視庁運転技能試験で上位だったな」


「上位って言っても七位ですよ」




 ちなみに一位の人の運転技術は神業だった。車幅ギリギリのコーンの間をバックで一つも倒さずに、時間制限内余裕でゴールしていて脱帽したのを鈴は思い出した。




 あれは人が運転していたんじゃなくて、ロボットなんじゃないかと思ったくらいに正確で凄かった。




「それでも大したもんだ。おまけに若いのに警視総監賞を取ってるんだ。期待してる」


「はあ」


「それにお前の武勇伝も聞いたぞ。壁を蹴って上がって犯人の背後を取ったとか、忍者みたいな事をするってな。おまけに剣道と柔道の試合での成績もいいじゃないか。他に何かやってんのか?」


「格闘技と昔はパルクールも齧りました」


「お前、何をめざしての?」


「はあ……世界平和?」


「何で疑問形なんだよ。気が抜けてんなあ」




 鈴が色々と身に付けてきたのは、父親に認められたくてしてきた結果で自慢できる動機ではなかった。




 それに確かに検挙率はずば抜けてはいたかもしれないけど、人には見えない物が見えての検挙率。自力とはいいがたいから自慢できるものではない。




 だから鈴は、検挙率を程よい感じにするために後輩や目標達成できてない先輩に譲っていた。


 車を走らせて世間話をしていた時だった。




「葛飾区堀切五丁目ポートマンション三〇二号室にて殺人事件発生。急行してください」




 加地が赤橙をセットし、鈴はアクセルを踏んだ。現場に着くと丁度、制服警官も到着したところだった。




「加地さん?」




 車から下りた加地が、ぐったりしていた。




「加地さん大丈夫ですか?」


「――ああ、問題ない。俺、ジェットコースター苦手なんだわ。あんなスピードのパトカーは俺、初めてだわ。寿命が縮んだ。さすが七位」




 運転自体は荒くはないと自負はしているけど、スピード勝負だからしょうがない。でも今度はもう少しスピードを落としたほういいのかもしれない。


 直ぐに気を取りなおした加地と鈴は、問題の部屋に向かった。

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