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再会……そして

カラン魔導学院旧学食堂。


ここは様々な歴史の証言の場となり博物館に改装された。食堂は別の場所に移されたのだ。博物館には条約締結文が飾られている。エリナス=プラティナがエレシュキガルだった頃の武器。アネットが聖女だった頃の武器なども飾られている。シャーロットの遺書も当然飾られている。『ラジエルの王国』初版本も展示されていた。この本が人形姫伝説のきっかけとなる本でもあるからだ。


壁に飾られている肖像画……アネットもフェルナンデスもかつての四天王たちも先代のエレシュキガルも……現・聖女であるリシテアが描いたものだ。


そこにかつての敵同士・味方同士が集う。まあ……いわゆる同窓会という奴だ。


そこにはアネットもフェルナンデスも先代のエレシュキガルもかつての四天王たちも居た。プルゾンは残念ながら来ることはできなかったが。


1日限りで『学食』が復活したのだ。


もちろん人間側・獣族側とに分かれた場面も再現された。


「アネット」


「エレシュキガル」


ソロモン=プラティナではなく本当はもうその名では呼んではいけないはずの称号……「エレシュキガル」の名で彼女を呼んだ。1日限り、この場限りで特別に現・エレシュキガルから許されている。


「ねえ、約束覚えてる?」


アネットはプラティナに問いただした。


「何のことかしら?」


「ほら、一緒に旅をしようよって」


「獣族の国全域を……」


「貴方……本気なの?」


「もちろん!」


「ごめんよ、ウチのツレ……ぶっ飛んでるんだ」


フェルナンデスは呆れていた。なにせ長女カルロス=コルネットが生まれてまだ1歳しか経ってないのだ。事実上の育児放棄である。いや……アネットが育児しない方が長女はまともに育つのであろうか? 本当に旅経つときは乳母に育ててもらうことになるが。


だが……プラティナの答えは意外だった。


「もちろんよ!」


長女ソロモン=メリーもまだ1歳であった。本当に似た者同士。この2人はポジとネガの存在だったのかもしれぬ。


そのころギルバードは旧食堂の展示物をを眺めていた。なにせ自分のせいでアネットの人生を……そして自分の人生を大きく変えてしまったのだ。この自分がこの場で行ったアネットへの婚約破棄の場面から俺たちの物語はスタートした。ギルバードがカラン魔導学院から旅立つ肖像画もあった。このときはまだ人間族のギルバードだった。


「後悔してる?」


聞いてきたのはミクト=アッシュだった。


「どうだろうなあ……親に会えなくなったという点では後悔してるよ。でもこれも自分の人生なんだろうなあ……って」


「会えますよ。ぼくは神学者で聖職者ですし。仲介することも出来ます。ここで会いましょうよ!」


「出来るのか?」


「出来ますよ……四天王ギルバード」


その声は現・エレシュキガルとなったノインである。


「ここに新しい歴史の1ページを刻みましょう」


現・エレシュキガルの言うとおりだ。いつまでも過去にとらわれてはいけない。


「家族の再会もだが結婚も早めの方がいいぞ。でないと私のように40代になって結婚というザマになるやもしれぬ」


グレモリーの意見はギルバードにとって重かった。


ギルバードを獣族にする審判を下したマルコシアスは最終決闘場面の肖像画を眺めていた。そこには審判員として自分もちゃんと描かれて居た。自分は恐らく最後まで歴史の審判員になるのであろう。


マルコシアスは史学者となっていた。


コルネルは展示物の人形を見ていた。もしアネットに声を掛けられなかったら自分は親を乗り越えることはできなかっただろう。なにせ自分はアネットやフェルナンデスが生み出した技術で食っていけてるのだ。コルネルは思った。自分もここに展示出来るような発明品は作れるのだろうかと。


今コルネルが新規事業に乗り出したのは「れっく君」が残した映像のアーカイブ事業である。単に人形のリサイクルではなくソフト面でも残す事をしたのだ。


「君か? アーカイブ事業に乗り出したというのは?」


聞いてきたのはマルコシアスであった。


「興味深い。映像を見ることは出来るだろうか」


「はい!」


こうして今日の同窓会は新しい事業を開く場にもなった。


カラン魔導学院旧学食堂。ここは人間族と獣族の懸け橋となった場所である。ここで会うにふさわしい場所などない。


カラン魔導学院旧学食堂は物語の始まりの場である。新しい物語が始まったのだ。


◆◇◆◇


その後2人は新しく編み出した魔法で瘴空の空を打ち消す聖属性魔法を編み出すことに成功する。瘴空は浄化出来たのだ! 各地を回って瘴空の空が消え獣族が住める土地を次々増やしていく。1年後には獣族の地に瘴空は無くなっていた。2人はそれぞれの国から「グルニエ聖女」として永久に列せられることとなる。名誉の称号で実際の聖女職ではないが彼女らにとってそれで充分であった。


瘴空の原因は暗黒魔導物質が降り注いでいることが原因だった。なぜこの地域にだけそんな現象が起こるのか分からなかったが傷ついてる空を修復し暗黒魔導物質を消し去ることで空を取り戻した。クル・ヌ・ギアは一気に可住地面積が増えることになる。


海岸の近所にあるこの空を見ることが出来なかったプルゾンの庵を訪れる。庵の傍には墓もあった。無念でプラティナは泣いた。あともう少し長生きすればこの光景が見れたのに。


アネットとプラティナは神殿の地下墓地にも訪れた。アネットの家族が眠る墓にそれぞれ祈りをささげる。もちろん2人はアルファちゃんとアグリちゃんの墓にも祈りをささげた。そして忘れてはならない人物。ソフィアことエリナス=メリオールの墓にも祈りをささげた。


テンカロ神殿は現役の神殿である。条約によってフォーサイトで死刑判決を最高裁で下されたものはここに移送されて死刑が執行されるのだ。死刑囚の墓は共同墓地に葬られる。エレシュキガルや四天王に血肉を捧げることで罪を浄化するのだ。


王城を訪れた。現・エレシュキガルも婚約破棄したギルバートも四天王として様になっていた。やはり人間の血肉は獣族を強くするのであろうか。まあ……めったに死刑判決なんて出るもんではないが。


グルニエ大陸史はこうして新しい1ページが刻まれて行く。グルニエとは「屋根裏部屋」という意味。世界からみたら「屋根裏部屋」のような辺境の地かもしれないけどその地に住む者にとって「屋根裏部屋」は宝物の山なのだ。


そう、宝の山をもっと知りたい。アネットはそう思った。もう一つの約束を守るために……。


「おかあさん……なんでもう一回学校に入ってるの? 私と同じ入学式に参加してる!」


長女のカルロス=コルネットが父に聴く。コルネットはもう小学校1年になっていた。そう、もうコルネットの世代は家庭教師ではなく国民全員が学校に行く時代となった。フォーサイトでも貴族身分はもう形骸化していた。当然貴族身分剥奪制度も廃止となった。


「そうだねえ……君の好きな人形操術をもっと研究するため……かなあ? 君のかあさんは落ちこぼれなのに学習意欲だけは旺盛なんだよね」


アネットは子育てが一段落した時修士課程1年へと進学したのだ。


今度は人形を悪用されないように……監視社会にさせないための研究をアネットは行う。それは自分が作り出した社会に対する責任でもあるのだ。その技術も魔導石によって変えるのだ。


後の歴史家はこう記述する。「アネットの逆転人生への答えは魔導石にあった」と。


=終=

ここまで読んでくれてありがとうございました。男が異世界恋愛ものを2作品(約8~9万字程度)を書き上げるというのはやっぱり難しんだなとということを痛感しました。でもエタるという読者を裏切ることだけは何としても避けようと最後の戦いで苦しみながら勝ち抜くアネット同様『完結』に至ることが出来ました。これも読者の励ましのおかげです。本当に皆さまありがとうございました!

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