最終話 悪役令嬢として生きる
アネットは数日後に復学届を出した。それからというものの普通の学園生活を送ることになる。本来ならばフェルナンデスと結婚することになるが結婚・出産ともなると2留年することとなり貴族籍剥奪となるのでそれは出来なかった。
アネットは獣族と化した者とはいえ決闘で家族全員を殺したためシャーロットの遺言通り「家族殺しのアネット」と忌み嫌われることとなった。育ての親と言えども親は親である。もっともアネットの事を「勇者」とたたえる者も多かったが。
卒業式の日の次の日にアネットは無事フェルナンデスと結婚することになる。クロエ=アネットは正式にロベルト=アネットとなりロベルト家の者となった。もっとも両家とも誰も来ない前代未聞の結婚式となったが。まあ……役所に届けた籍は卒業式当日に入れたのだが。
さすがに救国の勇者にその仕打ちはかわいそうとのことで現・聖女のリシテアが結婚式に参列することとなった。もちろん学園内の教会の結婚式で挙式した。式場となった教会に来るものはほとんどいない。いかにアネットが「悪役令嬢」として恐れられているかの証左となった。
フェルナンデスもアネットもその後は静かな余生を過ごすことになる。もっとも「領地」は高層商業ビル1棟のみとなってしまったが。それが辛うじて都市国家として生きるフォーサイトの現実である。2人が住む邸宅も「高層マンションの一室」となってしまったのだ。随分と狭い住まいになったもんだ。確かにアパートよりは広いが邸宅と比べたら誤差の範囲だろう。雇い人も管理人や不動産業務や総務など数名となってしまった。メイドなんて者はもういない。清掃業務や警備業務は委託である。2人は40階建てのマンションの最上階の一室に住んでいる。アネットは自分ですべて家事をこなしスーパーで買い物の日々であった。フェルナンデスはロベルト不動産株式会社の社長として勤務する日々となった。失った者もあったが手に入れたものもある。それは近代的な生活だ。フェルナンデスもアネットも成人してからではあるが「近代社会」をこの目で見ることになったのだ。
交換留学を終えたノインに改めてエレシュキガルの秘術を叩き込んで半年後にエレシュキガルの地位を返上した。エリナス=プラティナは追われるように王宮を後にした。エレシュキガルの地位を返上したエリナス=プラティナはその後国境沿いの小さな邸宅に住むこととなった。そう、「エレシュキガル」ではなく元の名で呼ばれる人生に戻ったのである。彼女の邸宅からはソフィアが居たカラン魔導学院と国境のゲートが良く見える丘の上にあった。ノインこと現エレシュキガルは平和第一主義を貫くことになる。
グレモリーは予告通りギルバードに四天王の地位を譲渡し引退した。気が付けば40代。独身のままだったグレモリーは学園で教鞭をとりながらどうにか結婚にこぎつけた。
マルコシアスも従者のマニバドラに四天王の座を譲った。マルコシアスはまだ若かった。グレモリーの勧めで大学院に進学し無事大学教員となった。相手も院生時代に見つけることが出来た。
ソロモン=ベレトは四天王と校長の座を降りた。その時近所のエリナス=プラティナの邸宅に通う。孤独となったエリナス=プラティナが心配だったのだ。四天王として決闘は止めるべきだったとの反省すべき点もあった。やがて2人は結ばれ結婚となった。ソロモン=プラティナとなった。
プルゾンは四天王引退の時カール=テルトスに四天王の座を譲った。カール=テルトスはプルゾンの弟子であり国立大の教授であった。プルゾンはその後高齢のため2年後に死去する。最後はクル・ヌ・ギアの果てに住んでいたという。
アッシュはその後大学院に行き無事神学者としての道を歩んだ。
コルネルは自分で事業を立ち上げた。事業は人形の整備工場である。アネットから教わったことは決して無駄ではなかった。アフターサービス事業は好調であった。
皆……それぞれの道を歩みだした。
それから数年後……




