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第十五話

観客の声が聞こえる。朝だ。


「おい、起きろ。朝食持って来たぞ」


慌てて起きる2人。なんと10時間以上も寝てしまったのだ。


朝食は昨日同様に茶会で開かれるときと同じメニューだった。


「急いで!! 食べたら着替えて!! トイレにも行け! 戦闘の準備しろ! 2日目の審判は俺なんだよ! ベレトはもう声がガラガラだ。ベレトはもう審判が出来る状態じゃない」


審判のマルコシアスがもう時間に猶予が無いことを伝える。というか2日目の審判はマルコシアスになるのか! ちゃんとマルコシアスが着てる服も白衣の神官用の服になっている。


部屋干しの服は乾ききって……いない。


「小雨だが、雨天決行だ。荒天じゃないからな」


(小雨!?)


小雨。ということは相手は太陽の光を利用した攻撃が出来ない!


「君らには関係ないかもしれんがまさか2日連続で試合を開催するとは思ってなかった。このため観客も急遽当日券を買い求めに着てる。券を持てずに外にいるものも居るからな。客もイライラしてる。気をつけろ」


客がイライラしてる……。それはまずい事かも。


「それではアネットよ、出場だ!」


雨がアネットを濡らす。アネットはお守りをぎゅっと握りしめた。アネットの向こう側には羊の角に白竜の尾に純白の翼を持つものが構えていた。すでに結界は張られていた。


(相手は魔族だと思え! 隙を見せてはいけない!)


◆◇◆◇


「食べなくていいのか」


グレモリーは心配していた。ケーキスタンドは手付かずだった。


シャーロットはさすがに親族の死に堪えたようだ。


「私たちは公平に接しなければならない身だ。だが見てられないぞ」


すっと持ち出したのは血液のパックだった。


「人間の血だ。こっそり密輸してる」


シャーロットに手渡す。


――このままだと、死ぬよ?


グレモリーの小声と誘惑に負けたのかシャーロットは飲んでしまった。一気に。なんて久しぶりの人間の血だろう。力がみなぎる。


――ほら、紅茶も……サンドイッチも


シャーロットは元気が戻ったのかサンドイッチを食べ、紅茶を飲み干す。


――別に試合の時間外に食事の提供をするなとまでは言われてないからな。スペシャルメニューだ。この件についてうしろめたさを感じる必要はない。


「ありがとう……」


「礼はあとだ。生きて帰ってこい」


咳をするグレモリー。


「それではシャーロットよ、出場だ!」


(雨!! 何てこと!! まずいわ)


雨という状況に戸惑いを隠せないシャーロット。


シャーロットの向こうには戸惑いを見せる獣人を見て三日月の笑みを浮かべているおぞましき魔女が来た。


「おはよう、いい天気ね」


相手の挑発に載ってはいけない。シャーロットはこの挨拶を聞こえなかったことにした。


「これより、延長戦を開始する!」

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