第七話
クロエ家の控室はユーウェインの死を弔っていた。
「夫は死を覚悟で先陣を切りました。 これは互いにとって敵討ち。こうなることは皆、覚悟の上だったはずです」
兄妹は沈黙したままだ。
「母さんは……クロエ=モルゴースは絶対にアネットを討ち取ります。そして獣族の勇者として名を馳せます!」
「母上!」
ライオネルが駆け寄る。
「今度の人形は強敵です。それとアネットが3番目なのも気になります。もしかして死なない自信があるのではないでしょうか?」
そうだ。その通りだ。なんでアネットは最後ではなく3番目なのだ?
「なにせ先代の聖女ですからね。しかも実質的に影裏族を滅ぼした『勇者』でもあります。しかしそんな獣族の脅威を我ら家族自らの手で摘み取ると決意したのです。私はアネットが落ちこぼれでどうしようもないと勘違いしていました。本当はアネットも大事に育てて獣族にすればよかったのです。世が世ならアネットこそエレシュキガルとなったことでしょう。これは家族の過ちなのです。過ちは正さねばなりません」
「母上!」
ライオネルが母の手を握り締める。
「母は行って来ます」
牛の角を抱き蒼の皮膚と雅な蒼色の鳥の翼を持つモルゴース。ライオネルはその雄姿を兄妹は焼き付けていた。母は槍を手にした。毒々しい蒼色をしている。
◆◇◆◇
「硬い、強い、遅い!! 遅すぎる!!」
鎧があちこちひび割れたアグリちゃんの姿を前にフェルナンデスが苛立った。結界で守ったとはいえ細かい傷はやはりダメージだったようだ。
「しょうがないでしょ? これが能力のMAXなのよ!」
鎧を必死に修復するフェルナンデス。しまった。もっとパーツを持ってくるべきだった。動き……なあ。この人形重いよ。
「パーツが足りない。応急措置をしていくしかない」
まるでモルタルのようなものを鎧に塗っていくフェルナンデス。
「この人形がやられたら次は君の番なんだ。3人も君は獣族の優秀な戦士を倒せるか!?」
「分からない。不利になるわ」
「君へのダメージを極力軽減するためにもっとこの人形には頑張ってもらわないといけない」
が……時間は冷酷だった。
「15分経過した。アネットとアグリちゃんは前へ!」
ベレトの声が聞こえた。
「ここまでか。大丈夫だろうか」
「足が修復されてないわ!」
「仕方がない。胴体や頭部を守る方が先だ」
(脚か。狙って攻撃されなければいいが)
試合会場に出るとそこには鬼を具現化したような獣族がいた。
(そうだよな。毒親を具現化するとあんな怪物になるよな)
「両者、前へ! アネットは白線の内側へ!」
審判員のベレトが緊張した表情で声を発する。
「これより第三戦を開始する! クロエ=モルゴース対アグリちゃん!」
アネットが白線の内側に入った。
「試合開始!」




