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第一話

「悲しいな」


「ええ」


誰もアネットのために戦ってくれるものなど居なかった。そして聖女で亡くなったアネットに対する態度は一気に冷たくなった。結局肩書に頭を下げてただけなのか。アネットはがっかりした。中には休学中の奴が学校に来るなという冷たい声も浴びた。


聖女ですら無くなったアネット、聖女の従者ですら無くなったフェルナンデスは寮の使用が禁止されているのだ。休学中だからだ。アネットとフェルナンデスはアパートを借りずに安い宿に泊まっている。決闘さえ終われば休学も解除する予定だからだ。休学を終えて学生に戻るのももうすぐだ。


生きていればの話だが。


アッシュは神学生のため他人の決闘に出ることが禁止されている。というか交換留学生という立場上不可能に等しかった。相手は獣族である。獣族を討ったなんてことになったら命が危ないとのことだった。


「いっそのこと人形で人数揃えるか。2体分。ゴーレムは軍事機密だからクル・ヌ・ギアへは持っていけないしな」


「でも、鎧をまとったとしても……人形兵じゃやられると思う。それに結局は私の精神力を使うのよ。人形兵2体やられたあとに私が戦ったら朦朧とするかも。それ以前に人形兵を1人としてカウントしてくれるかどうか」


「何もしないよりはいいだろ」


「ええ、というか結局どこまでも私は『人形姫』なのね」


「そうだな……」


フェルナンデスは空を仰いだ。


「ねえ、最初に作ったアルファちゃん。あの子の魔導石を埋め込んで戦うことは可能かしら?」


それはプロトタイプの……それも1号となった人形である。


「そういえば魔導石の強化を初期の人形にしてなかったな」


一緒に人形として。いやアネットと共に生きて来た人形を戦いの場に出すということになろうとは。これは2番目のアグリちゃんにも言える事だが。


「あの頃の私たちに戻っちゃったのね」


「本望だろ、アネット」


そっとアネットに触る。そっとアネットをなでる。


「ありがとう……」


「アルファ、アグリ、アネット、俺の順で出撃する」


その並びは婚約者の死を見た場合、二重の意味でかたき討ちに入るという意味だった。


「本当に人形以外の助けを借りずにこの難局に挑むのね」


「そうだ」


「勝てるのかしら」


「勝つために俺は命の危険を晒している。もっとも勝算はある」


「え?」


「鎧だ。鎧を魔導の力で徹底的に強化しよう。もっとも人形兵の参加が認められなかったら徒労に終わるがな。近所の鍛冶屋に協力してもらおう」


「ありがとう、フェルナンデス」


「それと人形から結界を出せるか?」


「出せようになった」


すると人形を操りながらなんと人形に結界を張ることが出来たではないか。魔導鎧や魔導石の補助はあるがアネットも人形遣いとしてさらに進化したのだ。


「人形から魔法は出せるか?」


「出せるわ!」


すると人形は小さい氷魔法を出した。


「これでも威力は10分1くらいよ」


「そうか……やることはここまでだな」


フェルナンデスは改めてアネットを見つめた。


「それと伝えることがある」


(?)


「前にも言ったが、俺は親から勘当された。『ロベルト家の恥』だと。それでも俺は君を選んだ」


そんなことしてまで……なぜ。なぜってそりゃ私への愛のためじゃない。でも学費は?いろんなことがアネットの頭に浮かんだ。


「大丈夫だ。もうこのご時世貴族なんてそう大した身分じゃない」


「大した……って。それでもビルやマンションのオーナーになって不労収得になるのよ?」


「そんなことは平民でも出来る。そしてそんなこともあろうかと思ってな」


「えっ?」


「もう不動産は収得済みだ。借金はしたが。商業ビルを買った。そしてもう相続の手続きまでしたよ」


(そこまでして、私を選んだのね……)


アネットは泣いた。


「泣くな。じゃあいつもの店に行くか」



 人形を捨て石にするのだ。確認せねばならない。本当についていくのか。僕たちを裏切ってもいいと。なんだったら人形を別の人間に譲渡してデータ相続をしていいと。そう、人形は裏切った人間に対して人形操術者を見捨てる権利が発生するのだ。


 人形たちはジェスチャーで答えた。


 「ぼくたちは……アネットに命を……吹き込まれて……感謝だよ。僕たちは……死ぬのは本望だよ」


 ジェスチャーを見て言葉にしたアネットは涙を流す。


 「ごめんね」


 ぎゅっと人形を抱きしめる。


 人形たちはアネットを裏切る権利を放棄した。

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