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第五話

勇者パーティーの解散式は新王都であるカラン魔導学院内の食堂で行われた。もちろん4人だけの貸し切りだ。


「もはやこの食堂は歴史的建築物だな。我らが歴史の1ページをここで刻んだのだ」


かつての生徒、今の生徒が集まる場として解散式に最もふさわしい。講和条約の締結の場にもなった場なのだ。


「アネットは……聖女辞めるんですよね」


「ええ」


そう、いよいよ肉親との決闘になるのだ。一連の人生の発端となった元凶。エレシキガルに純粋な笑顔を振りまく。エレシキガルはその笑顔が痛く感じられた。


「しっかしやっぱ学食だよなー。まずくて安い」


フェルナンデスは故郷の食のようにスプーンでスープを掬う。


「ふう。そうか。次回はもっと腕のいいコックをここに呼ぶことにしよう」


マルコシアスはその声に獣族も人間族もまったく食うものが同じということに改めて気が付いた。調理人は全員獣族なのに……。しかも味もほとんど変わってないということに驚いた。確かにメニューは変えてないが。


(この会食がいつまでも続けばいいのに)


「得られる領土は改めて締結式をここで行おう。いざという時のために水源とその周辺の川を人間族に割譲する」


(そうだよね。そのために私たち人類はこの戦いに参加したんだよね)


「魔導縄は全部ご返却いただきたい」


フェルナンデスは釘を刺した。そのために魔導縄には番号が振ってあるのだ。


「もちろんだ」


マルコシアスは少し笑顔が消えた。


アネットたちは食事会を終えると魔導縄の梱包を始める。破損したものを含めて全部そろっている。大丈夫だ。破損した縄は別の箱に入れた。


そして国境を超える。


「あー、人間界に戻れた」


アネットはちょっとだけ安堵する。


真の戦いが始まろうとしてた。


第九章 終

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