表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/83

第一話

「何よこの城?」


アネットは驚く。イブラヒムの市街地の中心部にそびえたつ城。


「どうだ、すごいだろう。旧王城の名は『ペンタグラム』だ」


マルコシアスが誇らしげに言う。そう、逆五芒星のような形をしてるのだ。魔の根城にふさわしいおどろおどろしさを持っていた。同時に高貴な姿も見せている。


「城の両先端部分から魔導砲を撃てるようにしてある」


エレシュキガルも言う。


「それでは人形兵が全滅してしまう」


人間側の兵士が畏怖を覚えた。


アネットが暮らす王城がフォーサイトつまり4つの尖塔があるのならここは5つの尖塔があるのだ。そんな難攻不落の城を取られたのだ。フェルナンデスが戸惑う。


「そうだ。自分たちが作った城で我々が苦しめられるとは」


エレシュキガルが残念そうに言う。


「あれ、この城、魔法陣に似てない?」


アネットが疑問を投げた。


「その通り、ここから簡単に別の魔法陣に行ける増幅装置にもなる。そしてこの城そのものが聖女が張る結界の増幅装置でもある。魔法陣は尖塔にある」


つまりこの城をもってしても影裏族は突破してきたのだ。爆発魔法で壊された痕がその証拠だ。


「さて、そんな城を兵糧攻めにします」


ここまで結界を張って来たのだ。もう彼らは逃げられないのに。さらに兵糧攻めにするというのだ。エレシュキガルというのはなんと冷酷なのだろう。


「魔導線を切れ! 変電設備もだ!」


首都は一気に暗黒に覆われた。


二重結界を張りながら旧王城へ進撃するぞ!


「「おお~っ!!」」


◆◇◆◇


「暗くなったぞ!!」


この城を任されたゾロギフが玉座でうろたえる。その玉座はエレシュキガルが座ってた場所だ。


「我らはいざとなったら壁からでも逃げられる。案ずるな!」


「ゾロギフ様……それが」


部下が慌てる。


「抜けられません。地中へも抜けられません」


扉を開けて駆け付ける衛兵。


「大変です。部隊丸ごと体が散って行くように……ぐはっ!!」


なぜ指揮官に情報が行ってないのか。簡単だ。占領地の影裏族は殲滅したからなのだ。


蝙蝠の翼をもつ影ゾロギフなるものが座っていた。


「やれやれ。そこはエレシュキガル様の玉座だ」


マルコシアスが呆れる。


魔導の縄がゾロギフを縛る。フェルナンデスがゾロギフの動きを止めた。


「ばかな!! 我らの魔導の力の方が上のはず!」


「聖女って1人じゃないの」


そう言ってぐっとエレシュキガルが縄を握り締める。すると縄から波動が伝わり影が散るようにして消えていく。断末魔が響き渡る。


旧王城を奪還した。強力な魔法も発動させずに王城を奪還できた。残党狩りも順調なようだ。


本来座るべき場所にエレシュキガルが座る。魔導の縄が玉座から出て衛兵を縛り上げた。影裏族の衛兵が呻く。


「ここを拠点に影裏族は滅ぼしましょう」


マルコシアスも獣族の兵士もみんなひざまつく。


「聖女アネット」


「はい!」


「あなたが居なければ私たちの故郷を奪還できませんでした」


「ありがとうございます」


「後半戦も気を抜かないで。貴方が消えたら元の劣勢に戻るのよ」


エレシュキガルはまた縄をぐっと握った。接見室に悲鳴が響いた。エレシュキガルは表情一つ変えぬ。


アネットはこれが魔の王なのだと畏怖を覚えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ