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第三話

ノックの音がする。


「ギルバード、ちょっといいか」


マルコシアスが入って来た。


春休みは特に何もすることが無い。初めて獣族になってからなんか心が安らぐ気がした。そんな時に衝撃の事実を聞いた。


「もう一人、クル・ヌ・ギアに交換留学生が来る……だと?それも相手は御曹司コルネルじゃねえか」


「どういう風の吹き回しか知らねえが好奇心旺盛な子だと思うぜ?」


「でだ、こちらからは2部に通ってるノインを交換留学生にしようと思う」


「は?」


「悪いか? ノインは君の世話をしていくうちに人間の世界に興味持ったそうだ。入っていいぞ」


ノインが入って来た。


「失礼します。いつもメイドの仕事して、いつかは王宮図書館の司書になるのが夢で働きながら2部に通ってます」


「彼女はもう4月から大学4年で司書資格の単位も修得済みだ。最後の1年は卒業旅行も兼ねてだそうだ」


「いいのか? 差別されるのかもしれないんだぞ」


「大丈夫ですよ。それに向こうの図書館がどうなってるのか知りたいですし」


「「おっ! 地震!!」」


地震はすぐに収まった。


「すまねえな。この大陸で地震なんてめったにないんだが。何かよかならぬ前兆でなければいいんだが」


めったに起きない地震にみんな慌てふためいている。落ち着きを取り戻しギルバードは咳をしながら話をつづけた。


「向こうの大学に2部はない。そもそも平民が貴族になるための場か貴族の籍を剥奪するかどうかの選別の場で労働者が行くことを想定していない。ところでマルコシアス。ここには震度計ってものはあるのか?」


「震度計?なんだそれは」


「無いのか。ということはP派もS波も知らないということか?」


「P派? S波?」


マルコシアスは真顔で聞いた。


「そうか。ならば地震計は作った方がいい」


「話を聞くとやっぱり交換留学の意味はあると思います。決して向こうは文明水準が落ちるというわけではないと思います」


猫耳をピンと立てるノイン。


「本当にいいんだね。迫害されるかもだよ?」


ギルバードは念を押した。


「大丈夫です。一緒に授業受けましょ! ギルバード様!」


「おい、ちょっと」


「こりゃいいや!お似合いのカップルだな!」


「と、止めてくださいよ!」


「だめだ。だって人形操術のメンバーが増えるって国益になるしな」


「そんなぁ」


「よろしくお願いします! ギルバード様!」


「様はやめろ、様は」


「ギルバードさん!」


「……」


マルコシアスはにやにや笑ってるだけだ。

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