~序~
カラン魔導学院から転移する。
「移転魔法は大丈夫か? 怖かったら目閉じろよ? 一応お前の手を握る。まれに転移事故あるからなおの事お前の手を握ってから転移魔法を発動する」
「大丈夫です」
アッシュは一応移転魔法は覚えている。
「じゃ行くぞ」
すると2人は魔法陣のなかに徐々に沈んでいく。一瞬だけ闇の世界に入った。次に視界が開けると何かの部屋のようだ。魔法陣から己の体が抜けるようにして転移完了となった。魔法陣の光が消えた。
「ここがクル・ヌ・ギアの首都イブラヒムの王城『ペンタグラム』だ」
「ここが」
扉を開けると外の光景は魔導石であらゆるものが光輝いていた。ここは王宮の尖塔の最上階だった。4階にあたる。
「ようこそ。まずは接見に行こうか。エレシュキガル様と俺を含む四天王を挨拶する。君はここ王宮に住んでもらうよ。王宮から通学する。ちなみに俺たちも王宮に住んでるから安心しろ」
2人は接見準備室に入った。接見準備室は2階にある。
「エレシュキガル様が到着しました」
「では行こうか」
これが僕たちが魔王と恐れた存在。魔王にして聖女エレシュキガル。山羊の角を頂く獣族であった。
「アッシュ様……ようこそ、クル・ヌ・ギアの首都イブラヒムに。ご存じかと思いますが私がエレシュキガル。まず率直に聞きたいのですが私は先代聖女の心臓を食った者です。ここにいる四天王は先代聖女の心臓以外の部位を食いました。貴方は私達が怖くはないのですか?」
「……怖いです」
「正直に回答してくれてありがとう。少しは信頼できそうね」
「私は四天王の一人ベレト。教育関連と福祉・保健の行政を担当する」
「私は四天王の一人グレモリー。主に軍事担当だ。よろしくね」
「財政と農業、工業を担当するプルソンです。四天王という重責の職についております」
「そして主に雑務を扱うのが俺マルコシアスだ。これでも四天王なんだ。よろしくな」
「まあ、マルコシアス……そんな謙遜なさなくてもいいのに。外交担当でしょう?」
アッシュは驚いた。外交。つまり外務大臣ってこと?
「こちらが条約の締結文です。ご返却いたします」
そうだよね、そんな重要なものただの獣族が任されるはずないよね。
「貴族身分はこの5名のみです。貴方の国と違って実質貴族制度というものを廃止しております」
(えっ!?)
「一応だけど君は神学部3年生というが条約文に書かれているようにクル・ヌ・ギアに居る間は宣教行為は禁止だぞ?」
グレモリーが釘を刺す。
「はい」
そう答えるしかなかった。
「アッシュ君……国立イブラヒム大学に行くことになるが、明日から早速だ。イブラヒム大は君が通う学校と違って全寮制じゃないから」
ベレトが確認を取る。
「きっと文化も法律も常識もまるで違うから戸惑うとは思いますが全力でサポートします」
エレシュキガルが丁寧に頭を下げる。魔王が、この僕に頭を下げた……。
「じゃ、次は君の部屋を案内する。エレシュキガル様……お時間くださいましてありがとうございます」
案内された部屋は絢爛豪華であった。
「食事はここで取るかい?それとも城の衛兵と一緒に取るかい?」
「え、衛兵と一緒に」
「そうだろうと思った。君はぼっちに耐えられそうにないもんな。明日から君は衛兵に守られて通学となる。まあいねえとは思うが君を襲って食う奴も出ないとは限らないしな」
物騒な言葉が出た。
「君をガードする衛兵は3名いる。交代制だ。明日から早速よろしくな。あ、風呂はこの部屋の後ろな。洗濯物はここにおいておくれ。掃除もメイドがすべてこなすから心配するなよ」
アッシュの生活はこうして新生活を切った。
「ここ2階は接見室のほかに四天王と聖女が公邸として使う部屋だ。なにかあったら次ぐ駆け付けられる。なにかあったら呼べよ?」
「はい」
「あ、君の弓はここに格納しておいた。さすがに武器はな。クル・ヌ・ギア国内では武器などで威嚇しないでくれ。じゃないと君の身が逆に危ない。帰国する時に返却する。それまではこの宝箱に鍵を掛けさせてくれ。すまんな」
宝箱も用意されていた。鍵をかけるマルコシアス。
「ここは四天王候補が使う部屋で普段は使わない。ゲストルームとして使うこともあるが。なので約1年半君がここを使うことになる」
【四天王一覧】
・マルコシアス グリフォンの翼と蛇の尾をもつ狼人 外務担当
・ベレト 豹の獣人 教育・福祉・保健担当
・グレモリー 角と大蛇の尾を持つ獣人。女性の元人間。人間に近い。軍事担当
・プルソン 鴉の頭を抱く鳥人 財務・農業・工業担当




