第六話
婚約破棄したギルバードと婚約破棄されたアネットが校長室で並ぶ。
「よくご無事で……」
「すまない……すべて私の未熟さが招いた罪だ」
「いいのです」
「貴方の過去は無かったことになんて到底できません。が、罪は償うためにあるものです。それに……」
「それに……?」
「未来は作れます。約束してください。立派な獣人になると」
「アネット、約束するよ」
「ここで学んだことを吸収して帰ってほしいのです。これは聖女というよりも校長というよりも同期の学生としてのお願い」
「分かった」
「国境線も出来た。我々はこの大陸で絶滅を防いだ」
「やることはいっぱいあるわ。もうこの人口では限られた土地では住居を増やせない」
「それなら心配ない」
「またなにか思いついたの?」
「忘れたのか、アネット。元々ゴーレムって重機用だぞ。高層建築物を作る」
「いうのは簡単だけど、街ごと全部だよ? それと鉄骨がまったく足りないわ。……もうあなた、副校長になったら?」
「僕はまだ未熟者だよ」
この学校は副校長が空席のままという異常事態であった。
「それと、ギルバード。おれは君を親友だと思っているからこの事実を言う。ちゃんと聞いてくれ」
「分かった」
「エリオット家から籍を外された。君は貴族籍でもなくなった。外国籍の平民になった」
「そう……か」
空を見上げるようなギルバード。泣いていた。
「当然だよな。この姿じゃ」
「学費は心配しないでくれ。生活費もだ。全面的に学校が支援する。もちろん全額免除だ。給付奨学金でも出る」
貴族の概念も大きく変わった。土地と農地の所有者から建築物の所有者、つまり大家へと変貌することになったのだ。もう一つ問題があった。賃貸にせよ販売にせよ不動産の売買が重要になったのだ。そのためフォーサイト公国は法務局を作り土地登記簿を作ることとなったのだ。また都市国家になる前は割と珍しい不動産仲介を行う不動産業がこの国の重要な産業にもなった。火災が起きたら大変なので火災保険と言った損害保険も進歩することとなった。これはゴーレムなどを運転する側にも付けられていくことになる。
条約締結後「学徒動員」が解除されフォーサイト魔法学院は通常の光景に……戻らない。魔導学院も高層ビル化する必要があったからだ。
さて、都市国家として生き延びる事となったフォーサイト。そのころ交換留学生となったアッシュはどうしているのであろうか。
第五章 終
婚約破棄の後にざまぁにすることを今回あえてしませんでした。異色の婚約破棄ものが書きたい。その願いがようやくかなったと筆者は考えています。




