第一話
首都攻防戦が始まろうとしていた。
フェルナンデスもアッシュも居た。エリーザは無事フォーサイトに着いた。
ここは港町でもあり移民が始まった地でもある。
そして総指揮は、アネットだった。
ソフィアが倒れた今、正式にアネットが23代目聖女となったのである。なおアネットはソフィア名を襲名することを正式に拒んだ。「ソフィア」とは英知という意味である。高等教育課程にエスカレーター進学すらも出来なかったアネットが「ソフィア3世」なんて名乗ると冷笑の渦になりそうだった。そう、聖女であってもソフィア名を名乗らなくてもいいのだ。
というか、聖女になってうれしいなんて言ってる場合ではなかった。
この大地……グルニエ大陸から人類は滅びようとしていた。
フォーサイトは4つの尖塔があるからそう名付けられた。今やただの飾りだと思われていた施設が再び役に立つときが来るとは。
逆移民で逃れる船は行がカラのままではもったいないので食料や魔導石を積んでこちらに来る。もちろんゴーレムとなる石や人形のもととなる綿や布も輸入品として入ってる。
カラン魔導学院戦と違いこちらは善戦に次ぐ善戦であった。それどころか旧大陸に逃れる者も少なくなった。それだけじゃない。ゴーレム技術を身に着けたいとなんと旧大陸から来るものまで現れたのだ。
ゴーレムに乗るのは適性がいる。このおかげで魔導学院の生徒の序列もガラッと変わった。魔導学院の名前もフォーサイト魔導学院となった。
フォーサイトは島と大陸部の一部からなる都市国家である。アネットはフォーサイトに結界を作った。いや、正確にいうと周りの生徒に教えられて簡易的な結界呪文を教わったのだが。簡易的と言っても結界石の間隔は前の魔導学院の5倍増なのでより強固な結界になってるのだ。しかも前の呪文とは別系統の結界呪文にしてるのでエレシキガルの結界破りも効かない。
獣族軍は膨大な犠牲者を出した。大陸の全制覇の夢は消えようとしていた。噂を聞きつけた隠れていた人間がフォーサイトに集まって来る。フォーサイトは大都市になろうとしていた。結界を一時解除するゲートを使ってフォーサイトに入国する。
アネットは聖女にして学生という異色の存在となった。もっとも前例がないわけじゃなく、先代聖女も実はそうなのだが……。
カリキュラムも大きく変わった。ゴーレムや人形に関する授業が大きく増え、模擬戦・実践が最重要となった。
フォーサイトの財政を支えるためにゴーレム重工という会社まで作られた。
獣族は聖女アネットをこう呼んだ。
「人形使いの魔女」と……。
◆◇◆◇
「なんて物騒なこと考えるんだ。君はそれでも聖女か?」
フェルナンデスがちょっと怒っていた。
「しょうがないでしょ、非常時なんだし」
なんと魔導学院でもめ事起こしたものは1対1の模擬戦で決着をつけることにしたのだ。ゴーレム同士で。
「しょうがないでしょ……データも大幅に不足してるのよ。模擬戦でそういう人が適性あって、どういうふうにすればよりゴーレムを動かせるかデータを取るしかないのよ。命にかかわることはしない。旗を折るだけだし」
ゴーレム重工と魔導学院の経営は一体化した。というよりも学院から派生したベンチャー企業と言っていいだろう。ゴーレム重工の利益の一部は学院に寄付金として出すおかげで極めて低廉、もしくは無料で学校を維持できそうだ。それどころか小学部から義務教育が行えそうだ。
「アッシュ君が模擬戦で負けて落ち込んでるぞ」
「ええ?」
「アッシュ君、何もめ事起こしたの!?」
「いじめられたんだ。みんな心が荒んでるよ。それに切れたアッシュ君は模擬戦を申し入れて、負けた」
「見てくる」
「おいおい、君は聖女なんだぞ?」
「私は生徒でもあるから」
アネットはいじめの元凶を見つけた。




