~序~
「生贄よ。聖浴は済んだか?」
衛兵が問う。
「はい」
「薬は飲んだか?」
「飲んだわ」
意識はもうろうとしていた。
「では、行くぞ」
テンカロ神殿の外は大歓声だった。
「静まれー」
「静まるのだ~」
衛兵の声に従って……観衆は静かになった。
「これより、生贄の儀を開始する!」
エレシュキガルが号を発した。
「生贄を寝かせろ」
生贄はエレシュキガルの命により横にさせられた。鎖はそのまま台にあるアンカーに繋がれた。
「これより心臓を差し出す。聖なる水で清めた短刀をこちらへ!」
衛兵は短刀を渡した。
エレシュキガルは三日月の笑みを浮かべた。震えが止まらない。夢にまで見た本懐を遂げようとしてるのだ。
そして嬉しそうになんども偽聖女エリナス=メリオールの胸を何度も短刀で刺す。心臓をえぐり取り金の台に心臓を置き呪文を唱えた後ゆっくりと心臓を食した。ゆっくりと……ゆっくりと。
聖女の座を追放され泥水を文字通りすすり、ここ獣族の国の首都イブラヒムに着て保護されるまで。そして己も獣族となり聖女の座を奪還するまでなんと遠い道のりだったか。心の臓の味はほのかに甘く勝利の味がした。まるで長い時間のように感じる。
エレシュキガルはすべて心臓を食した後にアンカーを外し……二の腕で生贄を持ち上げてから階段へ蹴落とした。転がる鈍い音がする。歓声が上がる。
階段から転げ落ちた死体の傍にはグレモリー以外の四天王がいた。もちろん聖拝を授かるためだ。やがて咀嚼と吸血の音が響き渡る。
「次の生贄よ、前へ! 生贄よ。聖浴は済んだか?」
副校長などは四天王やエレシュキガルだけでは食べきれないので特別に戦功をあげた者が心臓や聖拝を授かった。エレシュキガルによるはからいであった。
心臓をささげる儀式は今回だけ特別に近衛兵に任せる事とした。
エレシュキガルは副校長の死を見届けると生贄の神殿を後にした。エレシュキガルが着る巫女の服はまるで白いバラのよう。血だらけの服は勝利の証であった。




