第四話
「君、死にたかったの?」
少年の姿をした影が問う。ただし少年の後ろには翼も生えているし、尾もあるようだ。明らかに人間では無い。
「そうだ。もう死んでるようなもんだしな。最後に一花咲かせようと思ってな。武人として」
「迷惑なんだよねえ」
影はやれやれと手を広げる。明かりが灯ってる部屋に黒い塊が蠢く。
「自分の領土を貴族が守って何が悪い。それが騎士道ってもんだ」
「ああ、やっぱここキド村って君の領地?」
「そうだ」
「ここでかつての領民も殺して領主ごっこ? で、地下室に立てこもりながらゲリラ戦? 水も食料も武器も魔導具もたんまりため込んだみたいだね?」
「そうだ」
「なめんな!!」
そう言った後に影がめきめき音をたてながら大きくなる。そして影は姿を現した。声も青年のものに変わった。
「この大地はお前の領土じゃない!! 獣族のものだ!」
マルコシアスが吠えた。
「それにしても22人もの軍に14人の元領民を殺すなんてね。この邸宅に立てこもって」
ギルバートは四肢が鎖と枷につながれていた。壁につながれている。
「さっさと殺したらどうだ? お前らの目的は聖地ソフィアと聖女ソフィア様だろう」
「その目的地に向かう道で邪魔されちゃね」
「関係ない。もう私の命はついえたも同然」
「そう焦るなよ」
ギルバートは轡をつけられた。
「こんなに優秀な命を殺すわけないじゃん。だって君は一騎当千の騎士だよ?」
口になにか肉が入った液体を入れられる。
「少しづつだけど君は私と同じ獣族になってもらう」
「ふざけるな」
「心まで我々と同じになるかどうかは自由だ。でもそんな姿になった存在を人間はどう見るのかね? 今の君と同じように処分するんじゃないのかな?」
「それでも死を選ぶ」
「どうだか? 君は獣族を誤解してないかい?」
「おい、衛兵」
「「はい!」」
「こいつは首都までお連れしろ。丁重に扱えよ」
「「はっ!」」
「首都に行けばたぶん君の考えが変わるよ。なにせそういう生き方を選んだ元人間が多いんだ。それがなぜなのかも知ってもらおうと思ってね」
「遺体はどうされますか?」
「この地の教会の墓地に丁重に葬れ」
「「はっ!」」
「ここを拠点にして聖地ソフィアをいよいよ攻略するのだ。なるべく血は流さぬよう、降伏勧告を出せ。これが降伏勧告書だ」
懐からマルコシアスは降伏勧告書を出す。
「いよいよね」
「グレモリーか」
「ここで少し足止めを食らったけどいよいよ我々の悲願も目前ね。聖女様も来るわ」
「そうか。それで人類は真実を知ることになるだろう」
「ますますこの屋敷は大事ね。聖女様もお使いになるでしょうし」




