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第五話

「皆様、聖女様がお待ちです」


狼人が謁見室の扉を開ける。


そう、聖女。人間が言う魔界に聖女が居るには訳がある。


先代聖女の次女は不義の子だったのだ。そのまま追放された。そこで獣族が保護し、獣族の躰を与えて長寿となったのだ。聖女の力は強大であった。崩れかけた獣族軍を立て直し人間を獣族化させることにも成功した。さらに結界内に侵入することまで可能にしたのだ。聖女は結界を作れるということはその逆もまた可能なのであった。正式に族長会議であるクリルタイで獣王となった。


ゆえに聖女は「聖女」と「獣王」の2つを同時に称号をもらう事態となった。「聖女」・「獣王」に同時になった者の称号を「エレシュキガル」という。聖女はかつての名を捨てエレシュキガルと名乗った。「エレシュキガル」と呼ばれる指導者は有史初である。


「エレシュキガル様」


エレシュキガルとは「西の女王」という意味である。その治める大地を本来はクル・ヌ・ギアと呼ぶ。クル・ヌ・ギアとは乾いた不毛の大地・死の大地という忌み名である。獣族はそのような地に追いやられたのだ。エレシュキガルは玉座に座っている。質素な巫女の服を着た姿だ。角以外人間と見分けがつかない。


「義の戦士、四天王の一人マルコシアスよ。よく頑張りました」


マルコシアスはグリフォンの翼と蛇の尾をもつ狼人だ。


「このたび、一部の村を取り返されました」


「よいのです。代わりに、ほら……こんなに友となる方がこんなに……」


「ベレト、彼らを含めて教育制度の普及は順調ですよね」


「四天王の一人ベレトこちらに。問題ありません」


顔は豹の獣人だ。


「この国に貴族も平民もありません。みな平等なのです。教育の機会も」


教育力は国力の源であった。ゆえにクル・ヌ・ギアは工業生産も行えるようになったのだ。


「グレモリー。軍事の面では問題ありませんか?」


「四天王の一人グレモリーこちらに。問題ありません」


角と大蛇の尾を持つ獣人だ。元々はエレシュキガルと同じ人間だ。そのため風貌も人間に近い。女戦士である。角と大蛇の尾がなければ人間そのものだ。


「財政の面では問題ありませんか?プルソン」


「四天王の一人プルソンこちらに。問題ありません」


鴉の頭を抱く鳥人だ。


「開拓地の拡大も魔導石鉱山も問題ありません」


そう、何も獣人は人間だけを食うのではない。たまのごちそうである。普段はパンや牛肉や豚肉を食う。そういう意味では人間と何も変わらない。


「人は滑稽です。なんで自分の使ってる魔導石のかなりがこちら側から取れたものだと分からないのでしょう。しかもかなり価格操縦して儲けたのですし」


失笑の声が出た。


「真の聖女とはこの私。一刻も早く国土の回復を行うのです」


「「御意」」


「敵将を捉えれば四天王と私だけいつものご褒美を授けましょう。私は心臓を歴代の神々にささげた後に頂きますが他の部位は四天王が聖拝していいことにします」


エレシュキガルが指をさした地は巨大な階段があるラルサ神殿であった。ここで敵将は生贄となって聖女や魔王そして四天王の餌食となるのだ。心臓をえぐり取られたあと、生贄は階段から落ちるように転がりそのあとに聖拝を授かり血肉はもちろん骨の髄までしゃぶる事になっている。ただし骨だけは敵軍であっても生贄となった聖なる存在として丁重に葬るため残さないといけない義務があるのだ。このため墓も地下に多数用意されている。


クル・ヌ・ギアは瘴空のため月が照らす事が出来ないため夜は真っ暗、昼間も薄暗い。さすがに東の方に行けばそれは薄まるが。ゆえにこの地は暗夜の国とも言われる。


「皆もごちそうを食べたい頃でしょう」


その声に四天王は全員頭を下げた。


「国境沿いに軍を集めるのです。もちろん潜入している貴族にも伝えるのです」


「開戦でございますか!?」


「この国の伸び行く工業生産額を見たことでしょう。いよいよ我は真の聖地に帰る時が来たのです」

※クリルタイ=モンゴル諸民族に実際にある族長会議の事



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