第三話
高等課程の学生のみ所属が許された学生用の冒険者ギルド。２人はここにやって来た。壁には求人票が並んでいる。
「でもここは……」
アネットが戸惑う。ガラの悪い学生ばかりだ。特に貴族に恨みを持つ平民の眼が嫉妬の眼で２人を見る。本当にここで大丈夫なのであろうか。
――あいつ、落ちこぼれの人形姫だぜ！？
――けっ！ 俺はあいつの依頼なんて受けないね！
――Ａ級の私は人形姫の依頼なんて受けなくても大丈夫。どうせ雑用でしょう
「大丈夫……ギルドはそういう奴ばかりじゃない無視しろ。依頼内容によっては命も落とすこともある。ゆえにここは酒で結束を固める場だ。愚痴吐き場でもあるがな」
２人はカウンターまでやって来た。
「ギルドマスター。野暮用の求人を出すんだが」
「はいよ。手数料として報酬の10％を頂くよ」
10％も取られるのか。痛いなあとアネットは思ったがギルドマスターににらまれそうなので口には出さなかった。ギルドマスターはごつい体つきだった。酒場で暴れる者がいてもこの人なら大丈夫そうだ。
「要件は？」
「簿記だ。記帳を代行する」
「へえ。あいよ。冒険要素はないのかい？」
「ある。万が一納税拒否したり隠し財産持ってる人には差し押さえの代行もする」
「よし、これなら冒険者ギルドにも求人出せるぜ」
「ランクは？」
「普段は事務作業だ。冒険者の強さは求めない。Ｅランクで結構だ」
「勤務時間は？」
「週２日で４時間だ」
「勤務場所は？」
「アネット本邸だ」
そう、バイトに屋敷の維持もしてもらうのだ。別邸にあった埋めた地下室の事は内緒にしておこう。
「月額65,000カランだ。ここから10％はギルドの代金としていただくぜ。求人者が来たら伝える」
「これで終わりだ、アネット」
（フェルナンデス様ってなんと素晴らしい方なのかしら）
「ところで、旧アネット別邸の人形は全部ここに戻したのか」
「ええ。今は私の家にいるわ……10体も」
「こんどは録音できる人形に作り替えてみようか」
「えっ？」
「何も役目が無くなった人形はそれはそれで寂しいだろう」
録音！？ それ凄くね？
１カラン＝１円と思ってください
