7 お膳立(ぜんだ)て
そんなこんなで土曜日の授業が全て終了し、終礼が終わった。
その途端チイ子はオレを机の上に置いたまま一目散に高梨さんの元に駆け寄り、周囲に丸聞こえのでかい声でこう言った。
「高梨さん!今からちょっとだけ時間ある⁉何かお兄ちゃんが体育館裏で高梨さんに話したい事があるらしいから、ちょっとだけ付き合ってくれへん⁉」
うぉおおおおいっ!
それやと完全に、今からオレが高梨さんに体育館裏で告白しますって言うてるようなモンやないか!
しかしそういう事には本気でウトいらしい高梨さんは、本当に何の話か分からない様子で首をかしげながらも、
「う、うん、いいよ」
と言ってくれた。
ぬぁあああっ!
こういう場合は嘘でもいいから、何か理由を作って断ってくれた方がよかったのに!
高梨さんの人の良さが、今に限っては恨めしい!
一方のクラスメイトどもは、チイ子の言葉で今からオレが高梨さんに告白しようとしている事を完全に察した様子で、ジロジロとオレを眺めている。
その視線が何を思っているのか、オレは手に取るように分かった。
『おいおい、まさかプリンの姿で高梨さんに告白するんか?ウケ狙いか?フラれる事が分かってるからウケ狙いに走るんか?』
『まあ、丸野君は人間の姿じゃあとても高梨さんに告白する度胸はないだろうから、プリンの姿ならヤケクソで告白できるかもしれないわね』
『どっちの姿で告白しても、フラれるのは確実だしな。いっそこっぴどくフラれてしまえ!』
大体こんな事を考えてるんやろう。
このクラスにはオレと同じように高梨さんに片思いをしている男子も多いけど、オレの事はハナからライバルとも思ってないやろうし、おまけにこの姿で告白しても絶対にフラれると思ってるやろうから、特に告白自体を邪魔しようとするヤツは居らんみたいや。
オレ的には邪魔してもらった方がええんやけどな。
心の準備も体の準備もできてないっちゅうのに、高梨さんに告白せなあかんなんて、ギロチンにかけられるよりも残酷な事やぞ!