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5 チイ子に説教のつもりが・・・・・・

 一時間目の授業が終わり、オレはチイ子を人気(ひとけ)のない階段の踊り場に呼び出した(正確に言うと、チイ子にそこまで運んでもらったのやけど)。

今朝、オレが釘を刺したにも関わらず、いきなり高梨さんにオレがプリンになってしもうた事をバラした事を説教するためや。

なのでオレはチイ子の方に体を向け、怒りに満ちた顔と声でこう言った。

 「このアホタレが!何で今朝、オレの事を高梨さんにいきなりバラしたんや⁉高梨さんだけには知られたくなかったのに!教室に入る前にもちゃんと言うたし、うん分かったってお前も返事したやないか!」

 それに対してチイ子は、何ら悪びれる様子もなくこう返す。

 「でもそのおかげでお兄ちゃんは、憧れの高梨さんと一杯おしゃべりできたやんか。こんな事がないと、全くインパクトのない顔でヘタレ根性のお兄ちゃんは、いつまで経っても高梨さんに声をかけられへんかったやろ?むしろウチに感謝せなあかんくらいやで?」

 「誰が全くインパクトのない顔のヘタレ根性や!否定できんけど!そして高梨さんとちょっとおしゃべりできたのは嬉しいです!ありがとう!」

 くそぅ、チイ子に説教するつもりが、何かグダグダな感じになってしもうたやないか。

こいつはアホな子やけど、説教されてる時にうまく話をすりかえて、それ以上怒られないようにするのが非常にうまい。

これは今まで数多くの説教を(主にオレに)されてきた中で身に付けた、チイ子の得意技なのやろう。

全くほめられた特技ではないけどな。

しかしオレの言葉に気を良くした様子のチイ子は、フフンと鼻を高くして言った。

 「そうやろそうやろ?もっとウチに感謝してくれてええんやで?よっしゃ!もうこの際やから、今日のうちに高梨さんへの告白もしてしまおうか!」

 「え?どぇええええっ⁉な、ななな何でやねん⁉『今日のうちに夏休みの宿題終わらせてしまおうか』みたいなノリで言うなや!そんな事できる訳ないやろ!」

 「いやいや、こういうのはノリと勢いが大事なんやって。お兄ちゃんみたいなヘタレは特にな!今日は土曜日で午前中で授業が終わるから、終礼が終わったらさっそく告白するで!」

 「待て待て待て!勝手に話を進めんなや!オレ、心の準備が全くできてへんわ!おまけにこんな体で告白なんかしても、絶対にフラれるだけやないか!」

 「大丈夫!人間の体で告白しても、結果は大して変わらんから!」

 「うるさいわ!それは全然大丈夫な話やないねん!とにかくそれだけは無理やって!告白は卒業式まで待ってくれや!」

 「そんなノンビリしてたら、高梨さんは他の男子にとられてしまうで⁉ええのんか⁉お兄ちゃんはそれでええのんか⁉」

 「え、ええ事は無いけど、でもなぁ・・・・・・」

 「でもなぁとかはいらんねん!お兄ちゃんは高梨さんの事が好きなんやろ⁉」

 「おいやめろや!こんな所でそんな事言うなや!他の誰かに聞かれたらどないすんねん⁉」

 「え、でもウチのクラスの子らは、高梨さん本人以外は、お兄ちゃんが高梨さんに片思いしてるってみんな知ってるで?お兄ちゃんメッチャわかりやすいから」

 「ぬぉええええっ⁉そうなん⁉バレバレやった⁉じゃあ高梨さんにもバレてしもうてる⁉」

 「いや、それはないと思う。高梨さんてしっかり者やけど、恋の話にはウトイ感じやし、お兄ちゃんの気持ちには気づいてないんと違うかなぁ?っていうか、今までお兄ちゃんの存在自体に気付いてなかったかもしれへん」

 「う、まあ、その可能性は大いにあるわな・・・・・・」

 「だからこれは大きなチャンスなんやで!プリンの体になってしもうた事を逆に利用して、思い切って高梨さんに告白するんや!大丈夫!玉砕したお兄ちゃんの骨は、ウチがちゃんと拾ってあげるから!」

 「だから、それは全然大丈夫やないっちゅうに・・・・・・」

 そんな事を言い合っているうちに、次の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴り響いた。

 き~んこ~んか~んこ~ん。



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