【プロローグのみ】ログアウト地点を検索します
プロローグ・書き出しのみでございます。
一応でその後の設定は少し存在していて、あとがきに載せておきますので、良ければどうぞ。
VR空間へ意識を飛ばして生活する事も日常となる程の未来。
医療技術も発展し、患部を切り取るだけより交換した方が安全かつ確実等と言われるレベルにまで、達していた。
そんな世界で、小さいが、とても深い陰謀が進行していた。
被害者はとある“元”男性。
なぜ狙われたのかは分からないが、被害を受ける前後で生活が大きく変わってしまったのは、動かし様のない事実である。
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「畜生……VRの時間延長技術め、現実より時間に余裕が出来るからって、俺達に無茶を押し付けやがる」
ここはVRのオフィス。
現実の1時間を5時間に……つまり時間を実質5倍へ引き延ばす技術が完成してから、人類は現実でなければ出来ない仕事以外をVR空間でするようになった。
この技術があれば、現実では8時間の労働時間を40時間にまで延ばせる。
つまりそれだけ仕事効率が変わるのだ。 経営者から見れば、こんなに嬉しいことはない。
今までとあまり変わらない給料で、5倍も仕事量が獲得できるのだ。 現実で「時間がない」が口癖だった労働者もにっこりする事だろう。
そう。 このくたびれた様に見える、目に生気が宿っていない感じの、お疲れ愚痴吐きサラリーマンにも恩恵がある。
経営者は労働力確保、従業員は残業無き労働環境の確保。 両得なのだ。
「現実じゃあ15ヶ月……1年以上かかる巨大ソフトウェアを、VR空間なら早く組めるだろ? ってVR空間で缶詰にするとか、狂ってやがる」
………………両得?
多少疑問が湧いたかもしれないが、5倍になった時間をフル活用されている事はなにより良い話だ。
「自宅へ生命維持装置付きのカプセル型端末を、会社が支給して来たときに嫌な予感はしてたが、本当に最悪だよ」
普段は定時で仕事を終わらせられて、プライベート時間も確保出来ているのだから、最悪ではないと否定したい。
生命維持装置付きのカプセル型端末。
読んで字のごとしだが、これに裸か専用のスーツで入って寝そべり、VR空間へログインする。
最長1年はログインしたままでいられる、とても機能的な端末だ。
もしログイン状態のまま現実で地震等の災害に襲われても、端末がそのまま救命カプセルとなる優れもの。
「3ヶ月は端末に入りっぱなしだし、現実の部屋は埃まみれだろうなぁ」
そんなにログインし続けて、家賃とか電気代とかの支払いは大丈夫か? と思うかもしれないが、その辺の受け付けもVR空間で出来る。 至れり尽くせりな世界である。
それと、この男性は部屋の状況を気にしている様だが、心配は無用だ。
「久し振りの我が家だ。 帰宅!」
VR空間からのログアウト操作を、少し大袈裟に呟いて行っているが、そこで操作画面にエラーが表示された。
「ん、なんだこりゃ?」
男性が表示されたエラーに目を通すと、とうてい信じられない文字が。
【ログアウト先が、ありません】
「ログアウト先が? いや、俺はここにいて、ログアウト先は俺の体だろ? 無いわけが無いって」
多少動揺しているが、それは事実だ。
ログインするには体……脳が要る。
つまり体に何かが起きれば、最重要事項としてメッセージが表示される。 メッセージを送るより緊急度が高ければ、強制ログアウトされる。
その緊急メッセージや強制ログアウトが無かったのだ。 体に異常は起きていないはず。
しかしエラー表示は、無慈悲に続きの文章を吐き出してくる。
【代替可能なログアウト先を検索…………】
【検索…………】
【見つかりませんでした】
「見つからない!? なんだよそれ!!」等と言う、男性の悲鳴は無視され、処理は続く。
【再試行します】
【検索中…………】
【該当ログアウト先を見つけました】
「良かった。 代替ってのは気になるが、あるじゃん」
【実行します……】
【失敗しました】
「なんで!?」
驚愕する男性。 もちろんこちらも失敗したか? とヤキモキしている。
【このままではログアウト先に適合できません】
【代替可能なログアウト先へ適合開始】
【データの適合調整処理を行います】
「調整!!?」
これには男性がびっくり。
普通にログアウトするだけなら、調整処理など不要。 このアナウンスを見ることなぞ一生なかっただろう。
しかし我々にとって、そのアナウンスが出ることは想定通り。
慌てて中止コマンドを連発しているがむしろ、ようやく次の段階へ踏み出せるこの男性こそ、名誉が得られるだろう。
だから中止コマンドはやめましょう。 そもそも中止コマンドを幾ら実行させても、無効化するようにしているのですが。
【調整中………………】
【完了しました。 ログアウトを実行します】
「中止だ中止! 訳の分からないログアウト先なんてダメだr――――」
男性の抵抗むなしく、新たに用意されたログアウト先へご案内します。
どうぞ我々の目的の為に、しばらくお付き合いくださいませ。
~~~~~~
【ログアウトが完了しました】
「ん……んんん…………」
薄ぼんやりした意識の中、カプセル端末のガラスモニターに表示された、メッセージ。
ガラスモニターには以前飛び起きようとして頭を打ち、その時ついた傷が見える。
まだはっきりしない意識のまま寝転がっていると、滑らかな動きでフタが開き、端末からの退出を促してくる。
「う、ああぁっ!」
どうにも動かしにくい体にムチを打って、頑張って体を起こす。
長期間カプセル端末へ入っていると、よくある現象だ。
ずっと体は寝ている訳で、端末が生命維持をしていると言っても、使わない筋肉は緩やかに衰える。
しかもなぜか俺の体の重心がおかしくなっていて、余計に大変だった。
この動かしにくい体は3ヶ月もVR空間に入っていた上に、変なエラーを出されて上手く認識を切り替えられていない影響だと思っていた。
…………思い込んでいた。
ログアウト先が無くなったなんて信じられなかったから。
そして、こうして動く体があったから。
辺りを見渡すと、病院の一室らしき無人の部屋だった。
俺がログインした自室から変わっていて、動揺がないと言い切れないが、まずは現状把握につとめる。
俺以外に誰かが居た形跡……無し。
窓……閉まってる。
監視カメラ……分からない。
今すべき事……室内の安全確認。
カプセル端末から出ねば。
「んぐ……っ!!」
なんとかカプセル端末の縁に手をかけた時、俺の異変を感じた。
「なんだよ、生命維持機能が低下したのか?」
その縁にかけた手が、異常に細いのだ。
まるでVRゲームで使っているアバターの女子キャラみたいに。
この不可思議な事態から考えると、このカプセル端末を動かしている間にどこかへぶつけて、機械がすこしおかしくなったのかもしれない。
「いつも出る時の俺は不健康そうな青白い腕だったのに、今回は妙にほっそりした腕だな。 ……んん?」
手を眼前に寄せ、少し鈍い動きで手と腕を観察していると、視界の端に奇妙な物が見えた。
「いま、白くて丸いものが2つ見えたよな?」
男の俺にとって、身近であってはいけないものが。
異性の象徴として、語る必要もないほどに明確なブツ。
「おっ○い?」
俺は専用スーツを着てカプセル端末を利用していたはずだが、現在は裸。
30代だった俺の体は、なぜか10代の女性にしか見えない。 視界の高さも違和感を訴えてきている。
しかもストレートロングになった髪の色は、漫画かアニメかと言いたくなる様な、目の覚める空色。
鏡が無いから全身を見ていないので、見える範囲からの推測だが、これは……。
「俺の体に、一体何が起きたんだ?」
録音して聞いた声じゃないので分からないが、多分可愛い音が部屋に響いた。
最初はナレーション、次は監視している謎の組織の人間視点、最後は(元)男性視点でお送りしました。
なんかTSネタを書きたいな~。
ついでに「ログアウト先がありません」ネタも入れたいな~。
で、出来たのがコレ(苦笑)
本当はもう少しお気楽なパロディネタ満載のアホなのを書きたかったんですけどね。
なんでかシリアス調になってました。
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設定垂れ流し
医療技術
ナントカ細胞じゃないけど、そんな感じの細胞を培養して、パーツを取り替えるみたいにする医療が一般的。
ガンの切除をするんなら、新しいものと取り替えたほうが、色々都合が良くね? とか、そんなレベル。
男性
世界初の非脳移植型“記憶や意識のみ”移植の被検体に選ばれた。
ついでに男性が女性の体へはいったらどうなるか? を確かめる被検体でもある。
選出方法は無作為の抽選。
3ヶ月の長期間拘束労働中に特殊な施設へ移送され、ログアウトを待ち構えられ、移植させられた。 合掌。
実験の組織
非合法でマッドな組織……を想定していたんだけど、別に合法組織でも構わん。
とにかく、部分的な取り替えじゃなくて、意識や記憶を残して全部(脳も含めて)取り替える実験を成功させたい組織。
これが成功すれば、永遠の命だの完全な性転換だの変身願望だの理想の肉体を手に入れるだのを、完璧に叶えられる夢の技術。
人道だのなんだのと、これを公にするにはまだまだハードルが沢山。
それでも突き進む気概でいるのが、このヤベー組織。
永遠の命とか、正直どうでも良い。研究したい事をやるんだ。 の精神で突っ走る、技術バカ組織。
男性の会社
時間加速関係の法整備にはまだまだ時間が必要なのを良いことに、VR空間オフィスで超長時間労働を従業員へ押し付けるスタイル。
組織の実験へ男性を差し出すのに承知していたらしい。
今後の展開
書く気無し。
妄想するなら、このまま組織へ転職して各分野の手伝いをしたり、支援するソフトウェアを開発したり。
アバターは男性のままで変わらない訳だから、今までの生活を意地でも維持しようとしたり。
社会適応実験とか言い訳して、どこかの学校へぶちこまれたり、
政府に保護されて、どこかの公的機関に転職したり。
色々妄想出来なくはないけど、なんか自分では書く気がしない。