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黄泉へのアナウンス  作者: 徒歩通勤
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第三章 オトハ視点 突然起こった悲劇

「・・・見つけたぞー!!」


突然川の方から声が聞こえ、ガスボンベを背負い川に潜っていた捜査官の一人が、『黒い物体』を抱えて川から上がってきた。

まるで大きなゴミ袋か、アザラシの様にも見えるその『黒い物体』の正体。それは一切動かず、ダランと手足を伸ばしている。

顔が見えなかったのは、幸いだったのかもしれない。もし見ていたら、その日だけじゃない、数日は学校を休むかも。


川へ身投げした人

それは、私の家の近所に住んでいた、沼貝 到次さんだった


トウジさんは奥さんと息子の三人家族。休日になると、いつも三人で何処かへ出かける様子を見ていたし、まだ幼い息子さんをあやしているトウジさんを外でよく見かけていた。

でもその事実が分かったのは、その日の夕方。両親から話を聞いて、私は膝から崩れ落ちた。

あんなに毎日幸せそうに、毎日家族の為に頑張っていた人が、何故あんな場所で『死』を選んでしまったのか。

事件が起きてから数日経った今でも、全く分からない。葬式には奥さんが代表して喪主を務めていたけど、その姿をしっかりと見る事なんて、できるわけもない。

息子さんは親戚の人が預かっていたけど、奥さんは外にも聞こえるほどワンワン泣き、仕事関係者の人も、顔がグチャグチャになるまで涙を流していた。

きっとトウジさんは、会社でも慕われていたんだろう。住宅街の一角に、喪服を着た人が集中している、異様な光景だった。

聞きたくないわけではなかった。ただ、外から聞こえる泣き声やざわめきが、私の心を締め付けていた。

あまりにも私が苦しそうにしていたから、両親やクラスメイト、担任の先生もだいぶ心配してくれた。

幸い、薬のお世話にはならず、カウンセリングで元に戻った。ただ、戻ったのは私だけ。

今日、沼貝さんの家を除いたら、『売家』の張り紙が、玄関の扉に貼られていた。どうゆう事なのか近所の人から話を聞いたけど、奥さんはとうとう疲弊してしまい入院したそう。

息子さんは奥さんの祖父母が預かっているけど、いつ奥さんが復帰するか、全く見当がつかないんだとか。

奥さんがそうなってしまったのも頷ける。逝ってしまった沼貝さんは、理由も別れも告げず、突然亡くなってしまったんだから。

私自身、今も信じられない感情が残ったまま。結局沼貝さんの自殺した原因は、警察にも、私達にも分からないまま、闇に葬られる事となるだろう。

パワーハラスメントとか、収入面でも、特に困っている素振りは見せていなかったとか。こうなってしまうと、警察も両手を上げてしまうのも頷ける。ただ本心、まだ諦めきれない。

せめて沼貝さんを追い詰めた存在・原因が分かればいいんだけど、その気にはとてもなれそうになかった。

今は自分の気持ちをしっかり保つだけでも精一杯。



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