コロルとラロク~brother_短編小説
携帯電話が流行る前のこと。
私立探偵兄弟コロルとラロク VS 怪盗Gの指金チケ夫人のお話。
タネも仕掛けも筋通っていませんが、推理探偵風コメディです。
ブラコン入ってます。
BLACK STARを探していたコロルは、今の世の中を騒がせている怪盗Gと関係していることを知った。
デパートを経営している友人にBLACK STARを探してくれと頼まれたのだが怪盗Gが関係しているとすれば、そう簡単に行かないことは目に見えている。
チケ・マニダルに尾行されている事をコロルは気付いた。
チケ・マニダルは尾行が上手なのでまくにもまけない。
(上手なのに何故気付かれるのかって? それはコロルの方が一枚上手ってことさ。)
そこで奥の手を使うことにした。デパートの友人に電話した。
「もしもし、コロルだ」
「ああ、コロル。あれはどうなったの?」
「まだだ。ああ、それからあれを用意しておいて欲しい。今から行くから」
「分かったわ。じゃあ切るわね」
ツーツーツー
尾行には細心の注意を払わなければならない。いつどこで誰が何を聞いて何を見ているか分からない。
抽象的な言葉でないと悟られるからだ。 コロルが用意してくれと言ったのは実はコロルの特技、変装用具のことである。
デパートの友人は首尾よく準備してくれるだろう。
(何故、持ち歩かないのかって? 大きな荷物じゃ逆に目立つし動きにくいだろ。)
デパートの入口に着いた。後ろの方にはチケ・マニダルの気配がする。
友人にチケ・マニダルを放送で呼び出してもらって足止めしてもらうことにした。
チケ・マニダルは怪盗Gに発信機を持たされているはずだから、近くにある電話から連絡が入ることもあって、
電話を無視することはできない。(何故携帯電話を持ってないのかって? 携帯電話があまり普及してなかった頃の事だからさ。)
とりあえず女装したコロルは裏口から出してもらって、5分後に電話がかかってきていると放送してもらうことにした。
ピンポンパンポーン
「チケ・マニダル様、チケ・マニダル様。お電話がかかっております。1階サービスカウンターまでお越し下さい」
チケ・マニダルは慌てて1階サービスカウンターに行って電話を取った。
「私がチケです」
『チケ夫人。あなたの尾行はとっくにばれていますよ』
「そうみたいね。尾行がばれたのはあの青年が初めてよ」
『チケ夫人。尾行は何の為にしているのですか?』答えるわけないと思いながらも尋ねてみる。
「BLACK STARの在処が知りたいの」とあまりにも素直に答えるから本当に尾行が上手なのか疑ってしまうほどだ。
『ああ、それを調べる前に、その青年の事務所に行ったらいいのでは?』
「事務所?」
『そうですよ。それも知らないで尾行していらっしゃったのですか?』
「ウフフフフ、私、あの人にBLACK STARの在処を探しているあの青年を尾行しろとしか言われてませんの。
見つけたら、お金を貰ってすぐにおさらばよ」
『そうですか。あの人はいくら出すと言ったんです?』
「あら、そんな事。それは教えられなくってよ」
『そうですか。それではお気を付けて』
チケ・マニダルはコロルの尾行を再開しようとしたが…。
デパートの友人はこんなときいつも事務所を探せばと言うので、事務所には大切なものを置かないようにしている。
特に電話帳などや現金、カードなどは。
事務所に戻ったら、掃除が大変だなと思いつつコロルは兄ラロクの家に今日は泊まらせてもらうことにした。
兄のラロクは男女を問わず友人たちを毎日のように招いているから女が一人入ったとしても不思議がられない。
チャイムを押して女性用の高い声で「ラロク入れてちょうだい」と言った。
兄ラロクは「ルロコか。よく来たな」と言って迎えてくれた。
兄ラロクはコロルが女装しているときにはルロコと呼ぶ。
防音室に入れてもらうとコロルはいつもこう聞かれる。
「コロル、今度は何があるんだ?」と足がすくんでしまう程に恐い声で言う。
コロルはそこでいつも「ええと、ええとね」と甘えた声を出してしまう。
コロルは男ばかりの3人兄弟の末っ子である。ラロクは長男で、次男の名はユラクという。
「BLACK STARをね探しているんだ。それがあの怪盗Gも関わってて」
「コロル。この前はダイヤ窃盗犯だったよな。今度はあの大怪盗、怪盗Gか」
ラロクは難しい顔をした。しばらく考え込んだ。ふう-っと息をはいてこう言った。
「俺にできることだったら何でも手伝ってやるから、絶対に父さんと母さんだけには心配をかけるなよ。それからけがもするな」
「ありがとう。ラロク兄さん」
コロルは落ち着いたのか、とても疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
「まったく、女装したまま眠ってしまうなんて困った奴だな。しょうがない。俺のベッドに寝かせてやるか。」
コロルをベッドに運ぶとラロク自身はソファーで寝た。
ジリリリリリリリーン ジリリリリリリリーン
「ふわあ、よく寝た。朝食でも作ろうか。ラロク兄さんには目玉焼きを作ったらいいかな。僕はスクランブルエッグにして」
鏡を見たコロルは絶句した。化粧で顔がグチャグチャになっている。
「おはよおう」とねぼけたラロクが言った。「お早う。ベッド貸してくれてありがとう」
「ああ」
食卓に食パンと牛乳と目玉焼きとスクランブルエッグとハムを並べて朝食を二人で食べ始めた。
ラロクは頭がすっきりしてきたのか
「昨日、デパート経営しているコロルの友達から電話がかかってきたよ。
怪盗Gの目的はBLACK STARっていうことみたいでけど。
何でもあのブラックリストの中でもケチで有名なチケ夫人の情報らしいから、確かなことは分からないみたいだけど」
「ふうん。えっ? 何でラロク兄さんがブラックリストの中身を知っているの?」
「お前が探偵業始めた頃に手に入れた」と八百屋で大根でも買ったというように答える。
コロルは驚きを隠せないが、ラロクの情報網は裏の世界まで通じていてもおかしくはないとも思えた。
「どうやって手にいれたの?」
そう尋ねられるとラロクは愛用のパソコンを指差した。
「もしかして…」続きをいう前に口の前に人指し指を立ててその後の言葉を遮った。
「BLACK STARの在処、もしかして分かる?」
「調べてみようか」こともなげに言う。
ラロクはパソコンの前に座りインターネットを開く。
<BLACK STAR-黒い秘石と呼ばれ、妃の首の石とも呼ばれる。
18・・年シズル号にて競りにかけられ、ゴート氏にX万ドルで競り落とされる。
しかしゴート氏邸宅が19・・年に焼失。その時に紛失される。>
「こんな情報だけじゃな」ラロクの目が輝いて来た。ラロクは何かしら計算を始めた。
『ハッカー』そんな単語がコロルの脳裏を渦巻く。
ラロクはゴート氏邸宅の設計図を眺めていた。
「何か分かった?」意外と他力本願なコロルである。
「うん、まあな。これを見て。何か分かるだろう」
「何も」
「それじゃあ」と言いつつラロクはディスクにゴート氏邸宅付近の地図も表示した。
「あっ」
ラロクは楽しそうである。
「それで、焼けたところを赤で染色すると…、こうなる。
それではコロル君、焼けてないところはココとココとこのへんだが…」
「ココがおかしい」
「そうだろう。そうだろう。それじゃ、次にすることは?」
「ゴート氏の素姓は?」
<ミジュラク・ゴート-18・・年生まれ。……○◎の**長官を務める。19・・年に を発見し…>
「こんな情報じゃ、ちょっとね…」
「○◎の**長官って言ったらかなりの名誉職だぞ。それに、ちょっと待とけば…、ほらっ、この時代のこの国には珍しく俺たちの国にちょくちょく入国形跡がある」
「本当だ」コロルが感心していると、ラロクはまた何かしら計算を始めた。
「やった。はじきだされたよ。パスワードが…。
ふうん、やっぱりゴート氏は裏社会にも幅が利く奴だったんだ」
この会話を聞いていたらコロルよりもラロクの方が探偵業は向いているようである。
本当にコロルは探偵事務所を経営しているのであろうか?
「ラロク兄さん、さっきの設計図と地図を見せて。……ここにBLACK STARを保管していた可能性が高いね。ゴート氏邸宅が焼けたときにゴート氏も亡くなったってあるけれど、その可能性は低いね。
サカジック建設がゴート氏邸宅を建設したのなら、ここは燃えないように・・材を使っているはずだから…。
邸宅が焼失した年にГД紛争が付近で起きている。
焼死体はゴート氏と推測されているけれど違う可能性が出てくる。とすると…」
「ГД紛争を起こした首謀者はシズル号でBLACK STARを購入しようとしていたみたいだがゴート氏に競りで負けたらしい」
びゅん
「なんとまあ古風な。矢文とはね。開けようか?」
コロルはうなずいた。
[コロル殿
BLACK STARはわが財産である。
見つかればコロル殿の御友人ではなく私に返して欲しい。
報酬は必ず相応のものを用意しよう 怪盗G]
「コロル、お前の友達は何でBLACK STARを探して欲しいって依頼して来たんだ?」
「本当は依頼人のプライバシーの為に人には言ったらだめなんだけど
ラロク兄にはあいつも相談してもいいって言ってたから言うけどデパートの友人が催し物で宝石展をするって言うんだよ。
どこで聞いてきたのか分からないけれどBLACK STARは別名妃の首って呼ぶだろう?皇室御用達のデパートでもあるわけだが、
次代の妃になるためにもミリア姫が『宝石展をするなら妃の首を手に入れたい』とおっしゃったらしいんだよ。
ちょっとした姫のわがままだと思うけれどね、僕は。
でも、どうやってBLACK STARのことをミリア姫は知ったんだろう?」
「見つけた怪盗Gに返して上げるべきだと思うね。俺は」
「どうして」
「怪盗Gの本名はシジュランカ・ゴート。ゴート氏の孫か曾孫だと思うよ」
「はあ、友人には悪いけれどBLACK STARを捜すの止めようかな」
「依頼を反故にするとは責任感がないね」
「ГД紛争を起こした首謀者が盗ったっていうのは推理できるけれど、そんな簡単なものかな」
「そんなもんよ」
「それなら怪盗Gはそんな分かり切ったことに手を出さないのはどうして?」
びゅん
「また、矢文。何だか見張られているみたい。場所変えようか。何で怪盗Gにここまで見透かされているんだ。
ここは盗聴機も何も付いてないはずだろ」
ラロクは「あれ」と指差した。木に人影が見えた。
「それから、これ」とラロク兄は近くにいたクモを潰した。
「ああっ、朝グモは殺しちゃいけないんだぞ」
ラロクは「これが盗聴機みたいだな」と言ってから、矢文を開けた。
それには怪盗GがГД紛争を起こした首謀者いわゆるBLACK STARを盗んだ奴に手が出せない訳が書かれていた。
それからBLACK STARの在処も。
「しょうがない、ちょっと行って来てやるか」
「コロル、海外旅行になるなら俺もついて行くぞ」
「とりあえず新聞取って来るよ」
新聞と一緒に封書もポストに入っていた。
「明日の便の飛行機のチケットが3枚入ってるよ。兄弟3人で仲良く行って来いってさ。
変な奴だよね。1枚でも十分だし、僕が行くかどうかも分からないのにね」
「怪盗Gは血の繋がりを重視するからな。まあ、だからBLACK STARも取り戻したいって思っているんだろうけれど。
怪盗Gは心理学も少しばかりかじっているらしいし」
「何でラロク兄さんはそんなに怪盗Gのことを知ってるの?」
「これ(パソコン)のおかげだよ」とラロクは言った。
「そう言えば最近ユラク兄ちゃんに会ってないな」
ピンポーン
「誰だろ?」とコロル。「ユラクだったりして」とラロク。
「コロル-。会いたかったよ-。お兄ちゃんね、コロルに呼ばれた気がしたんだ。
夢でねコロルが海外旅行一緒に行こうって言うからお兄ちゃん、パスポートとか色々詰めて来たよ」
「怪盗Gって暗示もかけれるの?」
「さあな」とラロクは首をすくめた。
END