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第1章 第8話 生活改善

毎日投稿を始めてから一週間がたちました。例のあれで自粛が続く中、少しでも皆さんの気分転換になれれば幸いです。

 ヴィレッジ村の襲撃が終わった時、立っていたのは一人しかいなかった。

「ふん、占いの結果を見て来てみれば。」謎の襲撃者は老婆の声で独りごとを言い始めた。「食料をこんなにため込む村があったぞい。お主らは搾取されればいいんじゃ。しっかし、これだけため込む気概があるんなら暗殺部隊に入れてやってもよいのじゃ。なんじゃ、まだ意識を保っておるもんがもう一人いるのう。こいつら三人は見込みありじゃ、転送なのじゃ。」襲撃者はそう言うと右手を高く掲げ、指パッチンをした。ツヨシ、風太郎、依里の意識はそこで途絶えたのだった。


 翌朝ツヨシが目覚めると、荒れ果てた地のど真ん中にいた。何故か傷が完治している。周りでは依里と風太郎も無傷の状態で眠っている。他の村人たちは見当たらない。

「おい、新入りがやってきたぞ。」

「うへっ、おい、お前、女と食料をよこせ。」

 返り討ちにしたツヨシはここがクレーター盆地であること、クレーター盆地にはそこそこの人数がいるのだが、全員がツヨシと同じように襲撃に遭い気づいたらここにいたということを教えられる。その後ツヨシは持ち前の力とカリスマ性を使いクレーター盆地のリーダーになった。


─────────────────────


「そんなことがあったんですね。せっかく一生懸命に食料を蓄えたのに、そんな目に合うなんて……。」声のした方を向くと優姫ちゃんが涙ぐんでいる。

「なぁ、俺は湿っぽい雰囲気は嫌いなんだ。宴を楽しもうや。俺にとっちゃあ半年間お預けをくらった宴なんだ。楽しもうって、飲みもんや食いもんはお前らのもんだから俺が提案するのもおかしい話だが。」

 ツヨシの言うとおりだ。明日からはたくさん働かなければならない。今日は思いっきり楽しんで英気を養っていこう。一機はそう思いながら胸元のペンダントを撫でるのであった。


 宴は一機たちからしたら普段食べている食事と何ら変わりがなかったが、ツヨシたちは感動して涙を流すほどだった。料理もだが特にツヨシたちが涙を流したのは造田家秘伝のお酒であった。



 翌朝、異次元カバンから取り出した道具の使い方を説明する一機。食糧が足りないということらしいから全自動耕作機でも作るか。とはいえ機械を作るための資源が足りない。そこで、ツヨシたちに鉱物を掘らせることにした。地下室で使っていた機械はカバンとリンクした空間に入れていなかったのだ。農作物や武器はカバンに入れておいたが、鉱物資源は倉庫の中にあった。異次元カバンの中には使えそうな道具はドリル程度しか入っていない。


「この長いパイプを地面に突き刺せば良いんだな? 」ツヨシとの決闘で負けたことと一機が希望を見せたことで心を入れ替えた風太郎が聞いてきた。

「ああ、ただその前に地質の調査をしなければならない。」どの深さにどのような鉱石があるのかといったことや地層の柔らかさ。そういった情報を探るためにボーリング調査をしなければならない。欲しい鉱石は地中深くにあるため、早く掘り当てるために、最も深いクレーター盆地の中央部にやってきた一機と風太郎その他数名の仲間たちはボーリングの準備に取り掛かっていた。


「なにっ? 」ボーリング調査の結果を分析した一機の口から思わず出た言葉。クレーター盆地の中央部の地下十メートルほどの深さまでの間にある砂粒の層に必要な鉱石──鉄や金銀銅だけでなくレアメタルまでもが──常識では考えられないほど高い割合で存在していたのであった。


 予定を変更した一機は異次元カバンを用いて輸送した大量の砂から、異次元カバンの検索機能を用いて純度百パーセントの酸化鉄や酸化銅など金属となる原料、そして大量の燃料などの生成に必要な道具を取り出して製錬し、全自動耕作機を造った。この耕作機はかなり特殊な品種改良を行った小麦の種と造田家秘伝の肥料を投入すると自動的に耕してくれて、一週間ほどで小麦が成長し自動で収穫してくれるという仕組みになっている。これだけ優れた小麦なら手作業で耕してもよいのではないか、そう思う人もいるだろう。しかし、成長を早くするように品種改良した結果、気温や病原菌に対して極めて弱くなってしまったので人力での耕作は不可能である。

「これで食料問題は解決するな。こんな荒れ果てた大地で採れるのはサボテンだけだったのが、久しぶりに小麦が食べられるのか。ありがてー。」ツヨシの仲間たちは安定して小麦が食べられるようになったことにたいして感動し号泣している。

「残念ながらまだだ。」ツヨシの言葉を否定する一機。

「うわー! 」トンネルの少し奥の方で叫び声をあげる風太郎。振り向くとびしょ濡れになった風太郎と吹き出す水。人々が生きていくのに、また、作物を育てるのに必要不可欠な水を風太郎は一機の道具を使って掘り当てたのであった。

「しっかしなんだよこのドリル、すごい速さで掘り進んでいくな。どんくらい掘ったんだ? 」

「うーん、地下二千メートルくらいまで伸びてるな。」

「二千メートル!? たった二時間で? 嘘だろ。」

 異次元カバンから簡易浄水器と大量の替えのフィルターを取り出した一機はツヨシの仲間たちに浄水器の操作方法やフィルターの交換方法を教えるのであった。浄水器の排出口から流れるきれいな水を労働の疲れを癒すために飲む風太郎。今までに味わったことのないほど美味しかった。一機は排出口と分配器をホースで繋ぎ、分配器の蛇口の一つと全自動耕作機をつないだ。

「これで食料問題を解決できるぞ。」そう言った一機は分配器の残りの蛇口にホースをつなぎ、料理場やトイレなど水が必要なところに新たに蛇口を設置していった。


 それからも様々な道具を用いてトンネル内のインフラ整備をした。全自動耕作機を完成させてから幾日が経ったある日、トンネル内に焦げ臭いにおいが充満し始めた。こんなところで火事になると大変だ。

本日もお読みくださいましてありがとうございます。


トンネル内に充満した焦げ臭いにおいの正体とは?

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